氏に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.甲山太郎と乙川花子が婚姻届に署名捺印した場合において、慣れ親しんだ呼称として婚姻後もそれぞれ甲山、乙川の氏を引き続き称したいと考え、婚姻後の氏を定めずに婚姻届を提出したときは、この婚姻届は受理されない。
イ.夫婦である乙川太郎と乙川花子が離婚届を提出し受理されたが、太郎が慣れ親しんだ呼称として、離婚後も婚姻前の氏である甲山でなく乙川の氏を引き続き称したいと考えたとしても、離婚により復氏が確定し、離婚前の氏を称することができない。
ウ.甲山太郎を夫とする妻甲山花子は、夫が死亡した場合において、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって婚姻前の氏である乙川を称することができる。
エ.夫婦である甲山花子と甲山太郎の間に出生した子である一郎は、両親が離婚をして、母花子が復氏により婚姻前の氏である乙川を称するようになった場合には、届け出ることで母と同じ乙川の氏を称することができる。
オ.甲山花子と、婚姻により改氏した甲山太郎の夫婦において、太郎が縁組により丙谷二郎の養子となったときは、太郎および花子は養親の氏である丙谷を称する。
- ア・イ
- ア・ウ
- イ・エ
- ウ・オ
- エ・オ
【答え】:2
【解説】
ア・・・正しい
●夫婦は夫又は妻の氏を使う → 婚姻の届出は、一定の法令を満たす場合に受理される → 法令違反があると受理されない
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称します(民法750条)。
婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第737条まで及び739条第2項の規定「その他の法令」の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができません(740条)。
本肢の場合、「婚姻後の氏を定めずに婚姻届を提出」しています。
これは、740条のその他の法令の規定に違反しています。
よって、本肢の婚姻届は受理されません。
イ・・・誤り
●離婚 → 原則:婚姻前の氏に戻す / 例外:離婚の日から3か月以内に届出をすれば、離婚の際に称していた氏を使うことができる
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復します(戻します)(民法767条1項)。
そして、上記により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます(同条2項)。
つまり、離婚した場合、原則、婚姻前の名字に戻りますが、
3ヵ月以内に届出をすれば、離婚前の名字を引き続き使えます。
よって、「離婚により復氏が確定し、離婚前の氏を称することができない」は誤りです。
【具体例】
甲山太郎Aは、乙川花子Bと結婚し、Aは乙川太郎になった(男性が女性側の姓を名乗る)。
その後、離婚した場合、原則、Aは婚姻前の名字である「甲山」に戻ります(甲山太郎に戻る)。
ただし、例外として、3ヵ月以内に届出をすれば、Aは「乙川」の名字を引き続き使えます。
ウ・・・正しい
●夫婦の一方が死亡 → 届出をして婚姻前の氏に戻すことができる
夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができます(民法751条)。
つまり、夫が死亡した場合、妻は、届出をすることで婚姻前の氏(名字)に戻す(称する)ことができます。
よって、正しいです。
エ・・・誤り
●離婚して「父又は母」の氏が別々となった場合、子は、家庭裁判所の許可を得て「父又は母」の氏に変更できる
子が「父又は母」と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その「父又は母」の氏を称することができます(民法791条1項)。
つまり、子どもが、現在の氏(名字)を変更して、父や母と同じ氏を使うには、「家庭裁判所の許可」が必要です。
本肢は「届出」で母と同じ氏を称することができるとなっているので誤りです。
上記解説だと、条文そのままで、分かりにくいと思います!
【具体例】
(乙川花子→甲山花子)
↓
2人に子「甲山一郎」君が誕生
↓
甲山花子と甲山太郎が離婚
↓
花子が旧姓「乙川」に復氏し、乙川花子となる
(甲山花子→乙川花子)
↓
一郎君の氏を「甲山」から母と同じ「乙川」に変更するには家庭裁判所の許可が必要(民法719条1項)
オ・・・誤り
●養子の氏 → 原則:養親の氏を使う / 例外:既婚者が養子となる場合、婚姻の時に定めた氏を使う
養子は、養親の氏を称します。(原則:単身者が養子となる場合)
ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、養親の氏を称しません(例外:既婚者が養子となる場合)(民法810条)。
つまり、養親の氏を称することなく、婚姻の際に定めた氏を称します。
よって、本肢は誤りです。
【ただし書の具体例:既婚者が養子となる場合】
(乙川太郎→甲山太郎)
↓
その後、甲山太郎が縁組により丙谷二郎の養子となった。
この場合、丙谷の養子となっても、太郎はすでに婚姻しているので、引き続き「甲山」の名字を使います。
| 問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:物権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 憲法・議員 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 選挙権・選挙制度 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 教科書検定制度 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法・その他 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 一般知識・政治 |
| 問20 | 問題非掲載のため省略 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 一般知識・経済 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・政治 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・経済 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・情報通信 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
