令和2年・2020|問14|行政不服審査法

行政不服審査法に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査請求人の地位を承継することができるが、その場合は、審査庁の許可を得ることが必要である。

イ.処分についての審査請求に関する審査請求期間については、処分があったことを知った日から起算するものと、処分があった日から起算するものの2つが定められているが、いずれについても、その初日が算入される。

ウ.法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がなされないときは、当該行政庁の不作為について、当該処分をすることを求める審査請求をすることができる。

エ.一定の利害関係人は、審理員の許可を得て、参加人として当該審査請求に参加することができるが、参加人は、審査請求人と同様に、口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えられ、証拠書類または証拠物を提出することができる。

オ.多数人が共同して行った審査請求においては、法定数以内の総代を共同審査請求人により互選することが認められているが、その場合においても、共同審査請求人各自が、総代を通じることなく単独で当該審査請求に関する一切の行為を行うことができる。

  1. ア・エ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. ウ・エ

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【答え】:1

【解説】

ア.審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査請求人の地位を承継することができるが、その場合は、審査庁の許可を得ることが必要である。

ア・・・正しい
審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができます(行政不服審査法15条6項)。

【具体例】

例えば、甲土地の所有者Aが開発許可の申請をしたが、不許可処分を受けており、その後、Aが開発の不許可処分についての審査請求がなされた。その後、Aが甲土地をBに売却され、開発行為を行う者がAからBに変更となった場合、「審査請求の目的である開発許可に関する権利」をBがAから譲り受けます。

その場合、審査庁の許可を得て、Bが審査請求人の地位を承継します。

【上記以外に、審査請求人の地位を承継することができる場合】

  1. 審査請求人が死亡した場合
  2. 審査請求人が法人で、法人(会社)が合併したり、分割した場合

上記の場合、審査庁の許可は不要で、審査庁に届出をすれば足ります。

イ.処分についての審査請求に関する審査請求期間については、処分があったことを知った日から起算するものと、処分があった日から起算するものの2つが定められているが、いずれについても、その初日が算入される。

イ・・・誤り

審査請求は、「①処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月」、または、「②処分があった日の翌日から起算して1年」を経過したときは、することができません(行政不服審査法18条1項2項)。
これは、いずれも、「翌日」から起算するので、初日不算入です(初日は算入しません)。

よって、この点が誤りです。

【対比】

行政事件訴訟法14条
取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知った日から6か月を経過したときは、提起することができない。

行政事件訴訟法における取消訴訟の出訴期間については「翌日」という文言は入っていません。でも、「翌日から起算」します。

その理由は下記条文をたどっていくとわかります。

行政事件訴訟法7条
行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。

民事訴訟法95条
期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う。

民法140条
初日不算入

よって、行政事件訴訟法14条の条文には「翌日から6ヵ月」とは書いていませんが、「初日不算入の原則」に従います。

ウ.法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がなされないときは、当該行政庁の不作為について、当該処分をすることを求める審査請求をすることができる。

ウ・・・誤り
「不作為」とは、「法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと」です(行政不服審査法3条)。

本問は、そもそも申請をしていないので、不作為にはあたりません。

【是正を求めるもの】
「民衆訴訟」は是正を求めるものです。

(民衆訴訟)
この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。(行政事件訴訟法5条)
エ.一定の利害関係人は、審理員の許可を得て、参加人として当該審査請求に参加することができるが、参加人は、審査請求人と同様に、口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えられ、証拠書類または証拠物を提出することができる。

エ・・・正しい

  • 利害関係人は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができます(行政不服審査法13条)。
  • 「審査請求人」又は「参加人」の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければなりません(行政不服審査法31条1項本文)。
  • 審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができます(行政不服審査法32条1項)

よって、本肢は正しいです。

オ.多数人が共同して行った審査請求においては、法定数以内の総代を共同審査請求人により互選することが認められているが、その場合においても、共同審査請求人各自が、総代を通じることなく単独で当該審査請求に関する一切の行為を行うことができる。

オ・・・誤り
多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選することができます(行政不服審査法11条1項)。
そして、総代が選任されたときは、共同審査請求人は、総代を通じてのみ、審査請求に関する行為をすることができます(行政不服審査法11条4項)。

よって、「共同審査請求人各自が、総代を通じることなく単独で当該審査請求に関する一切の行為を行うことができる」は誤りです。「できない」が正しいです。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略