令和2年・2020|問26|行政法

自動車の運転免許に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 自動車の運転免許の交付事務を担当する都道府県公安委員会は合議制の機関であることから、免許の交付の権限は都道府県公安委員会の委員長ではなく、都道府県公安委員会が有する。
  2. 道路交通法に違反した行為を理由として運転免許停止処分を受けた者が、その取消しを求めて取消訴訟を提起したところ、訴訟係属中に免許停止期間が終了した場合、当該違反行為を理由とする違反点数の効力が残っていたとしても、当該訴訟の訴えの利益は消滅する。
  3. 運転免許証の「〇年〇月〇日まで有効」という記載は、行政行為に付される附款の一種で、行政法学上は「条件」と呼ばれるものである。
  4. 自動車の運転免許は、免許を受けた者に対し、公道上で自動車を運転できるという権利を付与するものであるから、行政法学上の「特許」に当たる。
  5. 都道府県公安委員会は国家公安委員会の地方支分部局に当たるため、内閣総理大臣は、閣議にかけた方針に基づき都道府県公安委員会の運転免許交付事務を指揮監督することができる。

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【答え】:1

【解説】

1.自動車の運転免許の交付事務を担当する都道府県公安委員会は合議制の機関であることから、免許の交付の権限は都道府県公安委員会の委員長ではなく、都道府県公安委員会が有する。

1・・・正しい

自動車等を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許を受けなければなりません(道路交通法84条1項)。

また、都道府県公安委員会は合議制の機関です。

2.道路交通法に違反した行為を理由として運転免許停止処分を受けた者が、その取消しを求めて取消訴訟を提起したところ、訴訟係属中に免許停止期間が終了した場合、当該違反行為を理由とする違反点数の効力が残っていたとしても、当該訴訟の訴えの利益は消滅する。

2・・・誤り

本問は、下記「免許停止処分」の「1」の内容です。そのため、訴えの利益は消滅しません。関連する内容もすべて頭に入れましょう!

■運転免許停止処分
  1. 免許停止期間が終了した際に、当該違反行為を理由とする違反点数の効力が残っているのであれば、運転免許停止処分を争う利益はあるので、免許停止期間が終了したとしても、当該訴訟の訴えの利益は消滅しません【参考】行政処分点数や行政処分歴は、原則3年間残ります。ただし、例外として、1年間無事故無違反で過ごせば、累積点数は0点になります。つまり、免許停止期間が過ぎただけでは、違反点数などは残った状態です。
  2. 運転免許停止処分がなされて、免許停止期間の経過後、無事故無違反で1年経過すると、免許停止処分がなかったことになり、また、免許停止処分を受けたことがあることにより、何らかの不利益を受けるといった法令はありません。そのため、上記1年を経過した後に、運転免許停止処分の取消しを求めたとしても、処分を受けた者に利益はないので、訴えの利益は認められません
■運転免許の取消処分
運転免許取消処分の取消訴訟の係争中に免許の有効期間が満了した場合であっても、取消処分が取り消されれば、免許の更新手続きを行い、免許を維持できる利益(違反者講習を受けなくて済む等の利益)があるため、免許の有効期間が満了したとしても、取消訴訟の訴えの利益は消滅しない
3.運転免許証の「〇年〇月〇日まで有効」という記載は、行政行為に付される附款の一種で、行政法学上は「条件」と呼ばれるものである。

3・・・誤り

「〇年〇月〇日まで有効」という記載は、運転免許の「有効期限」なので、附款のうち「期限」に該当します。

「条件」ではないので誤りです。

4.自動車の運転免許は、免許を受けた者に対し、公道上で自動車を運転できるという権利を付与するものであるから、行政法学上の「特許」に当たる。

4・・・誤り

本肢は「特許」が誤りです。正しくは、「許可」です。

「許可」とは、禁止されている行為を、特定の場合に解除して、適法に特定の行為を行わせる行為です。

自動車の運転は、本来誰でも行うことができるのですが、それをいったん法律で禁止して、学科試験や実務試験に合格した人に限って、禁止を解除して、運転できるようにしています。

5.都道府県公安委員会は国家公安委員会の地方支分部局に当たるため、内閣総理大臣は、閣議にかけた方針に基づき都道府県公安委員会の運転免許交付事務を指揮監督することができる。

5・・・誤り

本肢は「都道府県公安委員会は国家公安委員会の地方支分部局に当たる」が誤りです。

都道府県公安委員会は、都道府県知事の所轄の下に置かれる機関です(警察法38条1項)。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略