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令和2年・2020|問31|民法

Aは、Bに対して金銭債務(以下、「甲債務」という。)を負っていたが、甲債務をCが引き受ける場合(以下、「本件債務引受」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 本件債務引受について、BとCとの契約によって併存的債務引受とすることができる。
  2. 本件債務引受について、AとCとの契約によって併存的債務引受とすることができ、この場合においては、BがCに対して承諾をした時に、その効力が生ずる。
  3. 本件債務引受について、BとCとの契約によって免責的債務引受とすることができ、この場合においては、BがAに対してその契約をした旨を通知した時に、その効力が生ずる。
  4. 本件債務引受について、AとCが契約をし、BがCに対して承諾することによって、免責的債務引受とすることができる。
  5. 本件債務引受については、それが免責的債務引受である場合には、Cは、Aに対して当然に求償権を取得する。

>解答と解説はこちら


【答え】:5【解説】債務引受はこちら>>

1.本件債務引受について、BとCとの契約によって併存的債務引受とすることができる。

1・・・正しい

併存的債務引受は、下記3パターンの契約の仕方で行えます(民法470条)。

  1. 債権者Bと債務者Aと引受人Cよる三者契約
  2. 債権者Bと引受人Cによる場合
  3. 債務者Aと引受人Cによる場合

したがって、本肢は、2(債権者Bと引受人Cによる契約)に当たるので正しいです。

2.本件債務引受について、AとCとの契約によって併存的債務引受とすることができ、この場合においては、BがCに対して承諾をした時に、その効力が生ずる。

2・・・正しい

選択肢1の「3(債務者と引受人となる者で契約)」をするときは、債権者Bが引受人Cとなる者に対して承諾をすることが必要です(民法470条3項)。

したがって、本肢の内容の通り、

債務者Aと引受人Cとの契約によって併存的債務引受とすることができ、この場合においては、債権者Bが引受人Cに対して承諾をした時に、その効力が生じます。

3.本件債務引受について、BとCとの契約によって免責的債務引受とすることができ、この場合においては、BがAに対してその契約をした旨を通知した時に、その効力が生ずる。

3・・・正しい

免責的債務引受は、下記3パターンの契約の仕方で行えます(民法472条)。

  1. 債権者Bと債務者Aと引受人Cよる三者契約
  2. 債権者Bと引受人Cによる場合
  3. 債務者Aと引受人Cによる場合

そして、免責的債務引受は、債権者Bと引受人となる者Cとの契約によって行うときには、債権者Bが債務者Aに対してその契約をした旨を通知した時に、債務引受の効力を生じます(民法472条2項)。

本肢は「パターン2」の内容です。

よって、正しいです。

4.本件債務引受について、AとCが契約をし、BがCに対して承諾することによって、免責的債務引受とすることができる。

4・・・正しい

免責的債務引受は、債務者Aと引受人となる者Cが契約をし、債権者Bが引受人Cとなる者に対して承諾をすることによってもすることができます(民法472条3項)。

これは、選択肢3の「パターン3」の内容です。

AC間の契約+債権者Bが引受人Cによって、債務引受の効力を生じます。

債務者と引受人となる者が契約をした場合には、債権者が、引受人となる者に対して承諾をすることを要件としている。 したがって、③債務者Aと引受人となる者Cとの契約であるので、債権者Bが引受人となる者Cに対して承諾をしたときに、その効力が生ずるため、正しい。

5.本件債務引受については、それが免責的債務引受である場合には、Cは、Aに対して当然に求償権を取得する。

5・・・誤り

免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しません(民法472条の3)。

【理由】免責的債務引受の場合、債務が、債務者から引受人に完全に移転し、債務者はこの契約関係から、独立した存在になるから(完全離脱するから)です。

よって、本肢は誤りです。

債務引受とは?

債務引受(さいむひきうけ)とは、債務をその同一性を失わせないで債務引受人に移転することをいいます。

債務引受には、「免責的債務引受」と「併存的債務引受(重畳的債務引受)」の2種類があります。

併存的債務引受

「併存的債務引受」は「重畳的債務引受(ちょうじょうてき さいむひきうけ)」とも言います。

併存的債務引受の効果

併存的債務引受の場合、引受人が債務者と同一の債務を連帯して負担することとなります(民法470条1項)。また、債務者も従前どおり債務を履行する責任があります。

例えば、債権者A、債務者Bがおり、債務者の債務について、第三者C(引受人という)が併存的債務引受をすると、引受人CもBと同一の債務を負い、BとCが連帯債務を負うことになります。

併存的債務引受の要件

併存的債務引受の要件として、下記パターンがあり、いずれかに該当すれば成立します。

  1. 「債権者Aと引受人C」との間で契約 (もちろん、ABCの三者間で契約することもOK) ※債務者Bの意思は関係ない(=債務者Bの意思に反してもAC間で有効に契約できる=債務者Bの同意は不要) (民法470条2項・大判大15.3.25)
  2. ② 「債務者Bと引受人C」との間で契約 (債権者Aが引受人Cに対して承諾をしたときに効力が発生する)

免責的債務引受

免責的債務引受の効果

免責的債務引受とは、債権者に負っている債務を第三者が債務者の代わりに引き受けることです。免責的債務引受がなされると、債務は旧債務者(債務者)から新債務者(引受人)に完全に移転するため、旧債務者の債務は免責されます(民法472条1項)。

免責的債務引受の要件

免責的債務引受の要件として、下記パターンがあり、いずれかに該当すれば成立し、効力が生じます。

  1. 債権者Aと引受人Cとの間で契約  (もちろん、ABCの三者間で契約することもOK)(民法472条2項) ※ 債権者Aが債務者Bに対して、免責的債務引受契約をした旨の通知をしたときに効力が発生する(民法472条3項)
  2. 債務者Bと引受人Cとの間で契約 + 債権者Aが引受人Cに対して承諾(472条3項前段) (債権者Aが引受人Cに対して承諾をしたときに効力が発生する)

参考条文

(併存的債務引受の要件及び効果)

第470条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。

2 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。

3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。

4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

(併存的債務引受における引受人の抗弁等)

第471条 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受の要件及び効果)

第472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。

2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。

3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

(免責的債務引受における引受人の抗弁等)

第472条の2 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受における引受人の求償権)

第472条の3 免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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