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令和4年・2022|問17|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の定めに関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。
  2. 不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。
  3. 不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。
  4. 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。
  5. 当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

1.行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。

1・・・妥当ではない

「行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる」という部分が妥当ではありません。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条1項)。
具体的には、①処分の取消しの訴え、②裁決の取消しの訴え、③無効等確認の訴え、④不作為の違法確認の訴え、⑤義務付けの訴え、及び⑥差止めの訴えが行政事件訴訟法に列挙されています(行政事件訴訟法3条2項~7項)。

しかし、上記だけでなく、行政事件訴訟法で規定されていない「無名抗告訴訟」というものもあります。

これは、抗告訴訟ではあるけど、上記①~⑦のように名前がついていないので、「無名」抗告訴訟と言います。

【具体例】 例えば、「予防訴訟(行政庁の一定の処分を事前に防止することを目的とする訴訟)」が「無名抗告訴訟」です。

具体的には、①行政庁が一定の処分を行うべき権限をもっていないことを確認する処分権不存在確認訴訟や、②行政庁が一定の処分を行うことを禁止する処分禁止訴訟などがあります。

2.不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。

2・・・妥当ではない

本肢は、「当該申請により求められた処分をしなければならない」という部分が妥当ではありません。

不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟を言います(行政事件訴訟法3条5項)。

不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、行政庁は、不作為を解消する義務を負うため、何らかの処分を下す必要があります。

その際、申請拒否処分をすることも可能です。

よって、妥当ではないです。

3.不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。

3・・・妥当ではない

本肢は、前半部分は妥当ですが、後半部分の「この申請が法令に基づくものであることは求められていない」という部分が妥当ではありません。

「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟を言います(行政事件訴訟法3条5項)。

よって、本肢は、妥当ではありません。

ちなみに、不作為の違法確認の訴えを提起できる者は、処分又は裁決についての申請をした者に限られます(行政事件訴訟法37条)。

【関連ポイント】 

不作為があった場合、処分又は裁決についての申請をした者に限り、「審査請求」や「不作為の違法確認訴訟」ができます。

つまり、不作為があった場合、行政不服審査法も行政事件訴訟法も同じです。

4.「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。

4・・・妥当

行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができません(行政事件訴訟法44条)。

一方、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、上記ルールは適用されないので、民事保全法に規定する仮処分をする余地があります。

よって、妥当です。

【なぜ、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができないのか?】 

そもそも、「民事保全法に規定する仮処分」とは、「仮の救済制度」です。

「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」については、行政事件訴訟法で特別の「仮の救済制度」を規定しています。

それは、「執行停止」「仮の義務付け」「仮の差止め」です。

そのため、あえて、「民事保全法に規定する仮処分」といった「仮の救済制度」を適用する必要がないので、「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない」としています。

5.当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。

5・・・妥当ではない

「当事者訴訟の出訴期間」は、行政事件訴訟法で具体的に「●●ヶ月以内、●●年以内」と規定されていません。

規定されているのは、下記内容です。

法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる(行政事件訴訟法40条1項)。

よって、「当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められている」が妥当ではありません。

【具体例】 

例えば、土地収用に伴う損失補償金の増額請求訴訟の場合、土地収用法では「収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6ヵ月以内に提起しなければならない」(土地収用法133条2項)と規定されています。

そもそも、「土地収用に伴う損失補償金の増額請求訴訟」は、「(形式的)当事者訴訟」に当たります。

つまり、上記は、「法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟」と言えます。

そして、上記「土地収用法」では、出訴期間について「正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる」という規定はないので、
「行政事件訴訟法40条1項」で、「正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる」と、出訴期間の延長を認めています。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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