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令和4年・2022|問33|民法

法定利率に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。
  2. 利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。
  3. 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。
  4. 不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。
  5. 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

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【答え】:2

【解説】

1.利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。

1・・・妥当

利息について定めをして、利率について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点(金銭を受け取った日)における「法定利率」になります(民法404条1項)。

ただし、この法定利率は、3年ごとに見直しがされ(民法404条3項)、見直し時期は「令和5年4月1日、令和8年4月1日、令和11年4月1日・・・」となります。

令和5年1月1日時点では、法定利率は「3%」です(民法404条2項)。

2.利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。

2・・・妥当ではない

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によります(民法404条1項)。

したがって、利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動があったとしても、当該債権に適用される利率は変動しません。

例えば、法定利率が3%の時点でお金を貸して、その後、法定利率が5%になったとしても、当該貸金債権の利率は3%のままということです。

3.利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。

3・・・妥当

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率となります。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率となります(民法419条1項)。

つまり、利息の約定利率が法定利率を超えないとき(低かったとき)は、損害賠償の額(遅延損害の額)は「法定利率」となります。

よって、妥当です。

4.不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。

4・・・妥当

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率となります(民法419条1項本文)。

そして、不法行為に基づく損害賠償請求権について、履行遅滞(債務不履行)となる時期(起算点)は、「不法行為があった時」です(最判昭37.9.4)。

つまり、不法行為があった瞬間から、加害者は損害賠償金を支払う義務を負い、その瞬間から遅延損害金が発生していることになります。
(実際は、損害額や治療費等をそのまま払えば済む場合が多いです。)

上記をまとめると、

不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定めることになるので、本肢は、妥当です。

5.将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

5・・・妥当

将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする(民法417条の2第1項)。

【「中間利息の控除」とは?】 

本来は将来受け取るべきお金(損害賠償金)を前払いしてもらう場合、前払いしてもらっていることにより、それに利息が付きます。
そのため、その利息分は、過剰に賠償してもらっていることになるので、その分は差し引くことを言います。

【具体例】 

交通事故で後遺症を負い、労働能力が喪失したことによって将来得られたはずの収入の全部を得られなくなることがあります。

この得られなくなった収入分を「逸失利益」といい、労働者の平均収入や平均就労年数等から金額を計算して、損害賠償請求することができます。

この時、計算した金額をそのまま受け取ると、もらい過ぎになります。

なぜなら、逸失利益は「将来の収入」であり、本来、将来受け取るべきお金です。

それを、前払いしてもらうことにより、そのお金は、毎月利息がついて増え続けます。

結果として、損害額以上に利益を生じることになります。

そこで、公平のため「中間利息控除」によって将来にわたって発生するはずの利息分を差し引いて、逸失利益の減額をします。


令和4年(2022年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識
問20 国家賠償法 問50 一般知識
問21 国家賠償法 問51 一般知識
問22 地方自治法 問52 一般知識
問23 地方自治法 問53 一般知識
問24 地方自治法 問54 一般知識
問25 行政法 問55 一般知識
問26 行政法 問56 一般知識
問27 民法 問57 一般知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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