行政不服審査法が定める審査請求の裁決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 審査庁が不利益処分を取り消す裁決をした場合、処分庁は、当該裁決の趣旨に従い当該不利益処分を取り消さなければならない。
- 不利益処分につき、その根拠となった事実がないとしてこれを取り消す裁決を受けた処分庁は、事実を再調査した上で、同一の事実を根拠として同一の不利益処分を再び行うことができる。
- 事実上の行為についての審査請求に理由がある場合には、処分庁である審査庁は、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を裁決で宣言し、当該事実上の行為を撤廃又は変更する。
- 審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも、審査請求に対する認容裁決によって処分を変更することができるが、審査請求人の不利益に処分を変更することは許されない。
- 審査庁が処分庁である場合、許認可の申請に対する拒否処分を取り消す裁決は、当該申請に対する許認可処分とみなされる。
1・・・妥当でない
処分(事実上の行為を除く。)についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します(行政不服審査法46条1項前段)。そして、取消裁決をした場合、この裁決により処分は初めから効力はなかったことになります。これを「形成力」と言います。そのため、処分庁が改めて取り消す必要はありません。
2・・・妥当でない
裁決は、関係行政庁を拘束します(行政不服審査法52条1項)。これを「拘束力」と言います。そのため、取消しの裁決を受けた処分庁は、同一の事実関係の下、同一の理由では同一の処分を反復することができません。よって、本肢は「同一の事実を根拠として同一の不利益処分を再び行うことができる」が妥当ではありません。
3・・・妥当である
事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、処分庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更します(行政不服審査法47条2号)。よって、本肢は妥当です。
■事実行為(例えば、人の収容等)に関する審査請求を認容する場合
=審査請求人が正しいことを言っている
=行政庁Aが行った事実行為が不当または違法ということ
この場合、
処分庁(行政庁A)は、自ら事実行為をやめることは(撤廃することは)できます。
■一方で、
処分庁(行政庁A)以外の審査庁(例えば、上級行政庁B)の場合
自ら事実行為を行っていないので
行政庁Aに対して「事実行為をやめなさい!」と命令することができます。
この命令を受けた行政庁Aは、事実行為をやめなければなりません。
4・・・妥当でない
処分についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできません(行政不服審査法46条1項ただし書き)。本肢は「審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも・・・変更することができる」となっているので妥当ではありません。不利益にならない処分の変更もできません。審査庁が「処分庁の上級行政庁」か「処分庁自身」の場合、不利益にならない処分の変更ができます。
5・・・妥当でない
審査庁が処分庁である場合、許認可の申請に対する拒否処分を取り消す裁決は、拒否処分が取り消されただけであって、処分をしていない状態に戻るだけです。つまり、許認可処分とみなされません。
【理解と流れ】
- 許認可の申請をする
- 処分庁が拒否処分を下す
- 申請者が審査請求をする
- 審査庁が2の拒否処分を取消判決をする
- 2が取り消されたので、1に戻る(=申請した状態に戻る)
その後再度、処分を下すのですが、その際に、異なる理由で「拒否処分」される可能性はあります。必ずしも許認可処分を受けられるわけではありません。
令和5年(2023年)過去問
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
| 問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
| 問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
| 問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法・多肢選択 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法・多肢選択 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法・多肢選択 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
| 問25 | 行政事件訴訟法 | 問55 | 基礎知識 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識 |
| 問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
| 問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
