株式会社の種類株式に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする。
- 株式会社が2以上の種類の株式を発行する場合には、各々の種類の株式について発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
- 公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができる。
- 株式会社は、株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とすることを内容とする種類株式を発行することができる。
- 公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任することを内容とする種類株式を発行することができる。
- 株式会社は、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないことを内容とする種類株式を発行することができる。
1・・・正しい
株式会社は、内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合には、一定事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければなりません(会社法108条2項)。よって、正しいです。
【具体例】「剰余金配当に関する種類株式」の場合、当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容、発行可能種類株式総数を定款で定めます。
2・・・誤り
非公開会社については、「定款の定め」により、1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容とする種類株式を発行することができます。
ただし、本問は問題文に「なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする」という制限があるので、上記種類株式を発行することができません。よって誤りです。
【詳細解説】
まず、大前提ですが、
非公開会社(公開会社でない会社)は、
→ 「1株につき2個以上の議決権」を与える種類株式を、定款で定めれば発行できます。
つまり、通常は「定款で定めさえすればOK」なんです。
では、本問特有の話。
問題文にはこうあります。
「なお、定款において、単元株式数の定めはなく、また、株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはないものとする」
このうち特に重要なのは
「株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはない」という部分です。
これは何を意味しているか?
議決権の個数に「株主ごとで差をつける」ことはできない
(=全株主について一律のルールしか使えない)
という縛りを意味しています。
ここで注意してほしいのは、
本来、「1株2個の議決権をもつ種類株式」を発行しようとすると、
普通株式と「種類株式」とで、議決権の数に差ができてしまう、ということ。
例えば、
普通株式 ⇒ 議決権数:1個
特別な種類株式 ⇒ 議決権数:2個
こんな感じです。
普通株式の株主と、種類株式の株主で議決権の個数に差がつくわけですよね。
でも、問題文では
「株主ごとに異なる取扱いをしてはいけない」と指定されています。
つまり、
種類株式を発行して、株主によって議決権数が違う
→ NG(できない)
だから、
この問題文の条件下では、1株2議決権の種類株式は発行できない。
→ よって「誤り」ということになります。
【関連ポイント】
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければなりません(会社法109条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(非公開会社)は、「剰余金の配当を受ける権利」「残余財産の分配を受ける権利」「株主総会における議決権(本肢の「1つの株式につき2個以上の議決権を有することを内容」)」について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます(会社法109条2項)。
3・・・正しい
株式会社は、「株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする」旨の種類株式を発行することができます(会社法108条1項8号)。この種類株式を「拒否権付種類株式」と呼ばれます。
【具体例】 例えば、取締役の選任について、「当会社の取締役の選任については、株主総会の決議のほか、A種類株式を有する株主の種類株主総会の決議を要する。」という規定があった場合、 株主総会によって取締役としてXを選任する決議が成立したときも、拒否権付種類株主総会で当該議案が否決されたときは、Xは取締役となることができません。
4・・・正しい
公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社は、「当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること」を内容とする種類株式を発行することができます(会社法108条1項9号)。この種類の株式を「役員選任権付種類株式」といいます。役員を選任する権利を持つ株式です。通常、役員は株主総会で選任するのですが、この種類株式が発行されている場合、この種類株式を持つ株主で役員を決めます。
【具体例】 ベンチャーキャピタル(投資会社)が、ベンチャー企業に出資をして、役員を投資会社が決める場合に利用します。投資会社は、経営のプロたちを用意できます。そのため、ベンチャー企業にお金を出す代わりに、役員を選任する権利を投資会社に与える場合、「役員選任権付種類株式」を利用します。
5・・・正しい
株式会社は、「株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないこと」を内容とする種類株式を発行することができます(会社法108条1項3号)。この株式を持つ人は議決権を行使できません。しかし、一方で、配当や残余財産の配当が多くもらえたりする場合があります。
令和5年(2023年)過去問
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
| 問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
| 問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
| 問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法・多肢選択 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法・多肢選択 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法・多肢選択 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
| 問25 | 行政事件訴訟法 | 問55 | 基礎知識 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識 |
| 問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
| 問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
