Aは、海外からコーヒー豆を輸入して国内の卸売業者に販売する事業を営んでいる。Aは、卸売業者Bにコーヒー豆1トン(以下「甲」という)を販売し、甲は、B所有の倉庫内に第三者に転売されることなくそのまま保管されている。Aは、Bに対し、甲の売買代金について、その支払期限経過後、支払って欲しい旨を伝えたが、Bは、経営不振を理由に、いまだAに支払っていない。BにはA以外にも一般債権者がいる。この場合に、Aは、甲についていかなる権利に基づき、どのような形で売買代金を確保することができるか。民法の規定に照らし、40字程度で記述しなさい。
<問題の要点>
- Aは売主、Bは買主で、コーヒー豆(甲)はすでに引き渡され、Bの倉庫内に保管中。
- 売買代金の支払期限は過ぎており、Bは未払い。
- 他にも一般債権者が存在する。
- このような状況で、Aが売買代金を優先的に確保できる法的手段を問う問題。
<1. Aの権利の根拠:動産売買の先取特権>
民法311条5号は、売買により発生した債権について、売主が目的物に先取特権を有することを規定しています。
これを「動産売買の先取特権」といいます。
要件:
- 売買の目的物(今回はコーヒー豆)が、買主のもとで第三者に転売されずに現存していること(民法333条)。
- 所有権の留保がなくてもOK(無条件で発生)。
- 先取特権は法定担保物権であり、他の一般債権者に優先して弁済を受けることができる。
<2. 行使の方法:競売申立て>
動産売買先取特権に基づいて、Aは甲を差し押さえて競売に付し、その売却代金から優先的に弁済を受けることができる(物上代位、民法304条)。
つまり、動産を返してもらうのではなく、換価(お金に替える)することで代金を確保。
まとめると、
- Aが有するのは動産売買の先取特権(民法311条5号)。
- Aはこの権利に基づき、甲を競売にかけることで、他の債権者に優先して売買代金を確保することができる。
よって、上記をまとめると、
Aは、動産売買の先取特権に基づき、甲を競売し、一般債権者に先立って、売買代金を確保できる。(45字)
令和6年(2024年)過去問
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
| 問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
| 問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
| 問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
| 問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
| 問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
| 問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
