https://jukosya.gyosyo.info/?p=3230

平成24年・2012|問28|代理・使者

改正民法に対応済

代理人と使者の違いに関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 代理人は本人のために法律行為を行う者であるから、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によらなければならないが、使者は本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。
  2. 代理人は、本人のために法律行為を行う者であるから、代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要であるのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、その選任のときに意思能力および行為能力を有することは必要ではない。
  3. 代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。
  4. 代理人は、与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるから、権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はないのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するのであるから、本人の真意と異なる意思を伝達した場合であってもその意思表示が無効となる余地はない。
  5. 代理人は、法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められないのに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済

【答え】:3

【解説】

1.代理人は本人のために法律行為を行う者であるから、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によらなければならないが、使者は本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。

1・・・妥当ではない

●代理人としての地位 → 「法律に基づく場合」「契約に基づく場合」がある

●使者としての地位 → 「契約に基づく場合」しかない

結論からいうと、「代理人は、必ず委任契約によらなければならない」が誤りです。雇用契約や請負契約等でも、仕事を任された者は、代理人として仕事をします。

■法律に基づく代理

【具体例】 成年後見人は、成年被後見人から代理権を授与されなくても、法律に基づいて代理権が与えられています。

■契約に基づく代理

【具体例】 委任契約、雇用契約、請負契約などを締結することで、代理権が与えられます。雇用契約をすれば、従業員は会社の仕事を会社の代理人として行い、請負契約をすれば、請負人は、注文者の代理人として仕事を行います。
また、建物建築の場合、使者として、建築確認の申請を行ったりします。

■代理と使者の違い

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、代理と使者の2つがあります。

どちらも、仕事を行った法的責任は本人Aがとります(効果は本人Aに帰属する)。

違いは、意思決定をする人です。

  • 「代理」の場合、代理人Bがどのように仕事をするかの意思決定をして、仕事を行います。
  • 「使者」の場合、使者Bは、仕事の進め方について意思決定をしません。意思決定は本人Aが行い、使者は、それに従って動くだけです。上記建築確認の具体例でいうと、建築確認申請書の作成者は本人Aで、それを、請負人B(使者)が役所に提出しにいくだけといったイメージです。
2.代理人は、本人のために法律行為を行う者であるから、代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要であるのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、その選任のときに意思能力および行為能力を有することは必要ではない。

2・・・妥当ではない

●代理人 → 行為能力は不要=制限行為能力者でも代理人になれる / 意思能力は必要

●使者 →  行為能力も意思能力も不要

本問は「代理人は、行為能力を有することが必要」となっているので誤りです。代理人は行為能力がなくてもなれます(民法102条)。

具体例 本人Aが、制限行為能力者B(行為能力が制限されている者)に、A所有の土地を売却する旨の代理権を与えた。この場合、Bは、買主Cと売買契約を締結することが可能です。そして、この契約は、Bが制限行為能力者であることを理由に取消しすることができません。

制限行為能力者を理由に取消しできない理由 本人Aが、あえて制限行為能力者であるBを選んで代理権を与えたのだから、その責任は本人Aが取るべきだからです。

■行為能力について

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、代理と使者の2つがあります。どちらも、仕事を行った法的責任は本人Aがとります(効果は本人Aに帰属する)。何か仕事でミスがあっても、法的責任は本人Aがとるので、代理人も使者も

行為能力は不要としています。

■意思能力について

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、

  • 「代理」の場合、代理人Bがどのように仕事をするかの意思決定をして、仕事を行います。つまり、代理人は意思能力が必要です。
  • 「使者」の場合、使者Bは、仕事の進め方について意思決定をしません。意思決定は本人Aが行い、使者は、それに従って動くだけです。つまり、「使者」は意思決定をしないため、意思能力は不要です。

3.代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。

3・・・妥当

●「代理」の場合、意思決定は「代理人」が行う → 意思表示の瑕疵は、「代理人」について決する

●「使者」の場合、意思決定は「本人」が行う → 意思表示の瑕疵は「本人」について決する

本人AがBに代わりにしてもらうように仕事を頼むという場合、代理と使者の2つがあります。

どちらも、仕事を行った法的責任は本人Aがとります(効果は本人Aに帰属する)。

違いは、意思決定をする人です。

代理人の場合

代理人Bがどのように仕事をするかの意思決定をして、仕事を行います。つまり、意思決定をして、その後、意思表示をして契約をするのですが、意思表示に瑕疵(間違い・欠陥)があった場合、その意思決定をした「代理人」を基準に瑕疵があったかどうかを判断します。

具体例

本人Aが、Bに、A所有の「甲土地」を売却する旨の代理権を与えた。代理人Bが勘違いをして、「乙土地」を売却してしまった。この場合、原則、代理人Bが錯誤の要件を満たすかどうかを考えて、錯誤取消しができるかどうかを決めます。

使者の場合

使者Bは、仕事の進め方について意思決定をしません。意思決定は本人Aが行い、使者は、それに従って動くだけです。上記建築確認の具体例でいうと、建築確認申請書の作成者は本人Aで、それを、請負人B(使者)が役所に提出しにいくだけといったイメージです。つまり、使者は、「本人Aの意思決定」を、相手方に伝えるだけです。つまり、意思表示に瑕疵は、本人Aを基準にして、瑕疵があったかどうかを考えます。

具体例

本人Aが、A所有の「乙土地」を売却する旨の書面にサインをして、Bが使者として、当該書面を、買主Cに渡した。そして、本人Aは、本当は「甲土地」を売却するつもりだったが、勘違いをして、「乙土地」と記載してしまった書面を交付した。この場合、本人Aが錯誤の要件を満たすかどうかを考えて、錯誤取消しができるかどうかを決めます。

4.代理人は、与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるから、権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はないのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するのであるから、本人の真意と異なる意思を伝達した場合であってもその意思表示が無効となる余地はない。

4・・・妥当ではない

●「代理人」が、権限外の行為を行った → 表見代理がすれば、権限外の代理行為も有効となる

●「使者」が、権限外の行為を行った → 「本人」を基準に「錯誤」が成立すれば、錯誤に基づいて取消しができる

代理人が権限外の行為を行った場合、無権代理として扱います。無権代理行為の効果は、原則、本人には帰属しません。しかし、それでは、相手方が困ります。そのため、表見代理というルールがあります。表見代理が成立すると、たとえ無権代理人の行った行為であったとしても、相手方を保護して、無権代理行為が有効になる(あとで本人は取消しできない)というルールです。

表見代理の1つとして、「権限外の行為の表見代理(民法110条)」があります。「無権代理人が権限外の行為」をし、かつ、相手方が善意無過失の場合、表見代理が成立して、無権代理人の行った行為が、確定的に有効となり、本人はあとで取消しすることができなくなります。よって、前半部分が誤りです。

具体例 本人Aは、代理人Bに、「A所有の甲土地に抵当権を設定する代理権」を与えた。それにもかかわらず、代理人Bは、「甲土地を相手方Cに売り渡す売買契約」をCと締結した。この場合、代理人Bが行った行為は、「権限外の行為」なので、この契約において、Bは無権代理行為を行っています。そして、相手方Cが、権限外の行為について善意無過失であれば、AC間の本件売買契約は有効となります。よって、前半部分は誤りです。

使者について

使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するだけです。そのため、 。もし、使者が「本人の真意と異なる意思を伝達した場合」、本人の基準に、錯誤取消しができるかどうかを判断します。錯誤の要件を満たす場合(錯誤が成立する場合)、錯誤により取消しが可能です。よって、後半部分も誤りです。

5.代理人は、法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められないのに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる。

5・・・妥当ではない

●代理人には、「法定代理人」と「任意代理人」が2つの種類がある法定代理人 → 本人に無断で復代理人を選任できる
任意代理人 → 「本人の許諾があるとき」または「やむを得ない事由があるとき

●使者の場合、復任についての制限はない → 本人に無断で、別の者を使者に選任することができる

結論からいうと、「法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められない」は誤りです。

代理の前提知識

代理人には、「法定代理人」と「任意代理人」が2つの種類があります。

  • 「法定代理人」とは、成年後見人や親権者など、法律で、成年被後見人や未成年者の代理人と決められた者を言います。本人の意思に関係なく、法律で、代理人を決められています。
  • 「任意代理人」とは、本人の意思に基づいて、選任された代理人です。例えば、あなたが、友人を代理人に選任した場合、あなたの意思で、友人を代理人と決めているのであって、法律で、「あなたの代理人は友人」と決められていません。

復代理人 復代理とは、代理人がさらに別の代理人を立てる(選任する)ことをいいます。そして、復代理人を選任しても、代理人がもともと有していた代理権は消滅しません。つまり、代理人も復代理人も代理権を持ちます。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。