改正民法に対応済
Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。
ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。
イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。
ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。
エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。
オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
- 五つ
改正民法に対応済
【答え】:2
【解説】
Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。
ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。
ア・・・誤り
●建物賃借人→ 土地の取得時効完成によって、取得時効を援用できない
【問題文の状況】
右図の通り、Aは他人地(甲土地)に乙建物を建築して、建物をCに貸しているので、甲土地の占有者です。
一方、Cは、A所有の乙建物を賃借しています。
【質問内容】
乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。○か×か。
【判例】 判例では、「土地上の建物の賃借人Cは、賃貸人Aによる敷地所有権の取得時効を援用することができない」としています。
【理由】 土地上の建物の賃借人Cは、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから。
Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。
イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。
イ・・正しい
●賃貸借期間中に、その目的物を譲り受けた者 → 登記を備えないと賃貸人の地位の取得を賃借人に対抗できない
【問題文の状況】
右図の通り、Aは乙建物を所有しています。また、Aは乙建物をCに賃貸しています。ここで、Aが乙建物をBに売却した。つまり、乙建物の所有者が、AからBに代わったということです。
【質問内容】
Bは、乙建物についての移転登記をしないときは、
Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。○か×か。
【結論】 Bは登記を備えていないと、Cに対して賃料を請求できない(賃貸人の地位を主張できない)。
賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転します(民法605条の2)。そして、乙建物の賃貸人たる地位を取得するためには、Bが登記を備える必要があります。つまり、Bが登記を備えることで、Cに対して賃料を請求することができます。
Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。
ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。
ウ・・・誤り
●借地上建物の賃借人 → 地代の弁済をするについて正当な利益を有する → 借地権者に無断で地代の弁済(第三者弁済)ができる
【問題文の状況】
右図の通り、AB間で土地の賃貸借契約を締結し、AC間で建物の賃貸借契約を締結しています。
【質問内容】
Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。○か×か。
【結論】 借地上の建物賃借人Cは、借地の地代を、借地人Aに無断で弁済できる。
【理由】 債務の弁済は、第三者もすることができます(民法474条1項)。
そして、「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」は、債務者の意思に反して弁済をすることができません(2項)。本問の借地上建物の賃借人Cは、正当な利益を有する第三者なので、2項には当てはまらず、1項のとおり、地代の債務者Aの意思に反して(無断)で、地代を支払うことができます。
Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。
エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。
エ・・・正しい
●借地上の建物の譲渡(+土地賃借権の譲渡) → 地主の承諾が必要
【問題文の状況】
右図の通り、AはBから甲土地を借りて、その土地上に乙建物を建築した。
【質問内容】
Aが当該建物をCに売却する場合、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについて地主Bの承諾を得る必要がある。○か×か。
【判例】 判例では、「借地上にある建物の売買契約が締結された場合は、特別の事情のない限り、売主Aは、買主Cに対し、その建物の敷地の賃借権をも譲渡したことになるため、その賃借権譲渡につき賃貸人Bの承諾を得る義務を負うことになる」としています。
【理由】 「土地の賃借権」がなければ、「建物」は存在できません。つまり、「借地上の建物」と「土地の賃借権」はセットです。
よって、「借地上の建物」を譲渡するということは、セットとして、「土地の賃借権」も一緒に譲渡することになります。もし、土地の賃借権の譲渡がないとすれば、建物を購入したCは、地主Bからの建物収去請求・土地明渡請求に対抗できません。
そうならないために、土地の賃借権の譲渡について、地主Bの承諾が必要ということです。
Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。
オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。
オ・・・正しい
●土地の賃貸借を「合意解除」 → 地主Bは、借地上建物の賃借人Cに対抗できない
【問題文の状況】
右図の通り、AB間で土地の賃貸借契約を締結し、Aは乙建物を所有しています。また、Aは乙建物をCに賃貸しています。
【質問内容】
A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。
○か×か。
【結論】 土地の賃貸借を「合意解除」した場合、地主Bは、借地上建物の賃借人Cに対抗できない。つまり、地主Bは「借地上建物賃借人」に対して建物の明渡しを求めることはできません。
【理由】 「地主B」と「借地上建物賃借人C」との間には直接に契約上の法律関係がないけれど、 AB間で建物所有を目的として土地の賃貸借契約を締結したということは、土地賃貸人Bは、「土地賃借人Aが、その借地上に建物を建築所有して自らこれに居住することばかりでなく、当該建物を賃貸し、建物賃借人Cに敷地(甲土地)を占有使用させること」も当然に予想できるし、かつ認容しているものとみるべきです。
したがって、建物賃借人Cは、当該建物の使用に必要な範囲において、甲土地の使用收益をなす権利を有します。
そのため、AB間で、土地の賃貸借契約期間の満了前に、勝手に契約解除(合意解除)をしても、建物賃借人Cが有する甲土地を使用する権利は、消滅しません。つまり、AB間の合意解除によって、Bは、Cに対抗できません。
平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 法の下の平等 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法と私法上の行為 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 権力分立 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法・精神的自由 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 法改正のより削除 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・経済 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・社会 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・政治 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・情報通信 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |





