改正民法に対応済
利益相反行為に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。
イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。
ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。
エ 親権者が、自ら債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。
オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。
- ア・イ
- ア・エ
- イ・ウ
- ウ・エ
- エ・オ
【解説】
ア・・・妥当ではない
●共同相続人である数人の子の代理人として親権者が、遺産分割協議をすることは、利益相反に当たる
【具体例】 右図のように、Aが死亡し、BEFの三者が相続人であった。(Cが死亡し、EFが代襲相続する)EFは未成年者であり、EFの母Dが、EFの代わりに遺産分割協議に参加してBとDで遺産分割協議を行った。
【判例】 上記の場合、Dの行為は利益相反に当たるとしています。
【理由】 EとFとの間を考えると、利害の対立が生ずるおそれがあるから。Eの相続財産が増えれば、Fの相続財産が減り、逆もあり得ます。そのため、利益相反に当たるとしています。
【関連ポイント】
親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(民法826条2項)。
【具体例】 夫が亡くなり相続人が、妻と未成年の子が2人の場合、子にはそれぞれ特別代理人を選任する必要があります。
よって、本肢は妥当ではありません。
イ・・・妥当ではない
●親権者である母が、その子の継父である父の債務を担保するため、子の不動産に抵当権を設定する行為 → 利益相反に当たらない
【具体例】 右図のように、Dが継父Aにお金を貸し、「Cの親権者(母)B」が、継父Aの債務を担保するためCの土地に抵当権が設定した。
【質問内容】 上記抵当権設定行為は利益相反行為にあたるか?
【判例】 上記の場合、利益相反行為に当たらない
【理由】 お金を借りたのはAであり、また、抵当権設定行為もAのためです。つまり、利益を受けているのはAであり、母Bは抵当権設定を行うことで、B自身何の利益も得ていません。つまり、母Bと子Cとの間には利益相反は発生していないから、利益相反には当たりません。
ウ・・・妥当ではない
●利益相反行為 → 無権代理として扱う
代理人と本人との利益が相反する行為については、無権代理行為とみなします。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、本人に効果が帰属します(代理行為は有効となる)(108条2項)。
本問をみると、「親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為」となっています。親が自己所有の財産を、子に売却するということは、親はお金を得て、子はお金を支払うという風に利益相反が発生します。高い物でも安い物でも関係ありません。よって、「当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたる」点は正しいです。
そして、利益相反行為は無権代理として扱います。無権代理とは、直ちに無効となるわけではなく、有効でも無効でもない不安定な状態です。子が成年に達した後に追認すれば、有効になりますし、追認拒絶をすれば無効となります。よって「その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である」というのは誤りです。
エ・・・妥当
●親が養育費のためにお金を借り、その担保として、「子が所有する不動産」に抵当権を設定する行為は、利益相反にあたる
判例では、養育費にあてる意図であったとしても、親権者自身が金員を借受け、その債務につき「子の所有不動産」に抵当権を設定することは、利益相反行為にあたるとしています。
オ・・・妥当
●第三者の債務について、親が連帯保証人となり、また、親が子を代理して、子も連帯保証人とし、さらに親と子が共有する不動産に抵当権を設定する行為 → 利益相反行為にあたる
【具体例】 第三者Cには債務があった。この債務について、Aが連帯保証人となった。また、親権者Aが、Bの代理人として、連帯保証契約を締結した。さらに、親権者Aが、Bの代理人となって、AB共有の不動産に債権者のために抵当権を設定した。
【質問内容】 上記、Bに代理して行ったAの連帯保証契約や抵当権設定行為が
利益相反にあたるか?
【判例】 上記行為は利益相反に当たるとしています。
【理由】 連帯保証人が増えることにより、負担部分を超える部分を求償できるようになります。結果として、親権者Aの責任が軽減され、逆に子Bの責任が増えます。そのため、利益相反に当たります。
利益相反行為は、無権代理として扱うので、Bに対して効果は帰属しません。つまり、Bが追認拒絶をすれば、連帯保証人から外れます。
平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 幸福追求権など | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 投票価値の平等 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 内閣 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政調査 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・社会 |
| 問20 | 損失補償 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・経済 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 一般知識・社会 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |



