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平成26年・2014|問40|会社法・定款

株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)の次に掲げる事項のうち、会社法の規定に照らし、その事項について定款の定めを必要としないものはどれか。

  1. 公開会社でない株式会社が、剰余金の配当を受ける権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行うこと
  2. 譲渡制限株式を発行する株式会社が、相続その他の一般承継により当該会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該会社に売り渡すことを請求すること
  3. 株券を発行していない株式会社が、その発行する全部の株式につき、株券を新たに発行すること
  4. 取締役の数が6人以上であって、そのうち1人以上が社外取締役である株式会社において、当該会社の代表取締役が当該会社を代表して多額の借財を行う場合に、当該行為についての取締役会の決議については、特別取締役による議決をもって行うこと
  5. 監査役会設置会社の取締役がその職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該取締役の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときに、当該会社の取締役がその決議によって、当該取締役の損害賠償責任額から最低責任限度額を控除した額の限度で当該損害賠償責任を免除すること

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【答え】:4

【解説】

1.公開会社でない株式会社が、剰余金の配当を受ける権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行うこと
1・・・定款の定めが必要
●非公開会社 → 剰余金の配当を受ける権利について株主ごとに異なる取り扱いをする場合 → 定款の定めが必要株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければなりません(109条1項)。
非公開会社は、①剰余金の配当を受ける権利、②残余財産の分配を受ける権利、③株主総会における議決権に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いをする場合、その旨を「定款」で定めることができます(同条2項)。
よって、本肢の事項を定める場合、定款による定めが必要です。

2.譲渡制限株式を発行する株式会社が、相続その他の一般承継により当該会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該会社に売り渡すことを請求すること
2・・・定款の定めが必要
●相続・一般承継より譲渡制限株式を取得した場合、売渡請求できる旨 → 定款の定めが必要株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます(174条)。
よって、本肢の事項を定める場合、定款による定めが必要です。

【理解】 

譲渡制限株式は、「譲渡」をする場合、会社の承認が必要となる株式を言います。
そして、相続や合併により株式を取得した者は、「譲渡」によって、株式を取得しているわけではないので、会社の承認なく、譲渡制限株式を取得します。

そのため、「会社にとって株式を持ってほしくない者」が、株式を持つことになる場合もあります。
そのような場合に備えて、「相続などで譲渡制限株式を取得した場合、会社は、その者に対して、譲渡制限株式の売渡請求ができる」ということを、定款に定めることができます。

こうすることで、「会社にとって株式を持ってほしくない者」が、株式を持った場合、会社は、その者に対して「株式を売ってください!」と請求できることができるようになります!

3.株券を発行していない株式会社が、その発行する全部の株式につき、株券を新たに発行すること
3・・・定款の定めが必要
●定款で定めた場合のみ株券を発行する

株式会社は株券を発行しないことが原則です。そして、株式会社は、定款で定めた場合のみ、株券を発行します(214条)。

よって、本肢の事項を定める場合、定款による定めが必要です。

4.取締役の数が6人以上であって、そのうち1人以上が社外取締役である株式会社において、当該会社の代表取締役が当該会社を代表して多額の借財を行う場合に、当該行為についての取締役会の決議については、特別取締役による議決をもって行うこと
4・・・定款の定めは不要
●指名委員会設置会社以外の取締役設置会社 → 特別取締役による取締役会により「重要な財産の処分及び譲受け」および「多額の借財」を決議できる

取締役会決議は、原則、取締役の過半数の出席とその過半数の議決を要します(369条1項)。しかし、特に迅速な意思決定が必要と考えられる「重要な財産の処分及び譲受け」および「多額の借財」についての決議は、一定の要件を満たしたときは、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役という)だけで行う取締役会で決議することが可能です(373条1項)。この内容については、「定款による定めは不要」で、「取締役会」で決めます。

特別取締役による取締役会決議の要件

【指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができない理由】
指名委員会設置会社については、会社の執行機関として「執行役」が取締役会で選任され、業務執行を決定する権限を、取締役会が大幅に執行役に委任することができます。つまり、この執行役が上記特別取締役と同じ役割を果たします。そのため、指名委員会設置会社では特別取締役による議決の定めをすることができないです。
5.監査役会設置会社の取締役がその職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該取締役の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときに、当該会社の取締役がその決議によって、当該取締役の損害賠償責任額から最低責任限度額を控除した額の限度で当該損害賠償責任を免除すること
5・・・定款の定めが必要
●取締役が2人以上いる監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、任務懈怠責任について、取締役による一部免除が可能 → 定款で定める必要がある また、登記事項でもある

①監査役設置会社(取締役が2人以上ある場合に限る。)、②監査等委員会設置会社又は③指名委員会等設置会社は、「役員等の株式会社に対する損害賠償責任」について、
当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、
責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、「責任の一部免除の規定」により免除することができる額を限度として
取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨定款で定めることができます(426条1項)。
よって、本肢の内容は、定款で定める必要があります。

取締役の任務懈怠責任について、善意かつ無重過失の取締役は、取締役の過半数の同意により、責任を一部免除する決議をすることができるということです。これは、定款に定める必要があります。また、登記事項でもあります。

【登記が必要な理由】 登記をして外部の人も分かるようにしないと、債権者に不測の不利益が生じることがあるから。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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