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平成27年・2015|問17|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の定める執行停止に関する次の記述のうち、妥当な記述はどれか。

  1. 処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。
  2. 処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。
  3. 本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。
  4. 処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
  5. 処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。

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【答え】:5

【解説】

1.処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。
1・・・妥当ではない
●差止め訴訟 → 執行停止は準用されない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、「処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者」は可能です。
一方、差止め訴訟に、執行停止の規定が準用されていません(行政事件訴訟法38条)。

【理由】 差止め訴訟は、まだ処分がされていない状況です。つまり、執行停止するための処分がなされていないので、執行停止の規定する意味がないです。

したがって、「差止訴訟」を提起した者は、処分の執行停止の申立てはできません。

2.処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。
2・・・妥当ではない
●執行停止の申立て → 処分に関する取消訴訟の提起後であればよい / 取消訴訟の提起と同時に執行停止の申立てをする必要はない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、「処分の取消しの訴えの提起」の「後」であれば、執行停止の申立ては行えます
よって、「本案訴訟の提起と同時になさなければならず」が妥当ではありません。

3.本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。
3・・・妥当ではない
執行停止 → 申立てが必要 / 裁判所の職権では行えない

処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、執行停止をするには「申立て」が必要です。
裁判所の職権で、処分の執行停止は行えません

注意点:行政不服審査法では、「審査庁の職権」でも「申立て」でも執行停止ができます

【違いの理由】

これは、三権分立の考えから来ています。

審査庁は、あくまでの行政機関なので、行政機関内での話となります。

一方、裁判所は、司法機関なので、三権分立の観点から
司法機関が行政機関の職務を侵害することはできるだけ避ける考えがあります。

そのため、行政機関の行為を尊重するために、裁判所(司法機関)は
職権では、執行停止できないとしています。

4.処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
4・・・妥当ではない
効力の停止 → 処分の執行」又は「手続の続行の停止」によって目的を達することができる場合には、することができない

「処分の効力の停止」は、処分執行」又は「手続の続行の停止」によって目的を達することができる場合には、することができません(行政事件訴訟法25条2項ただし書)。
一方「処分の執行停止」についてこのような制限はないので、誤りです。

5.処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。
5・・・妥当
●執行停止の決定 → 口頭弁論は不要 / ただし、当事者の意見を聞く必要はある

処分の執行停止の決定は、口頭弁論を経ないですることができます
ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければなりません(行政事件訴訟法25条6項)。よって、本問は妥当です。

「口頭弁論」とは、口頭で意見を聞くということなのですが、一定の手続に従って行ないます。上記「当事者の意見を聞く」というのは、口頭弁論のような細かい手続は必要なく、意見を聞くだけで良いです。つまり、簡易的な方法でよいということです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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