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平成27年・2015|問28|民法・意思表示

改正民法に対応済

心裡留保および虚偽表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。
  2. 財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。
  3. 土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。
  4. 仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
  5. 金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済【答え】:5

【解説】

1.養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。

1・・・妥当ではない

●当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合 → 養子縁組は無効

養子縁組が無効となるのは、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき、②当事者が縁組の届出をしないときです(民法802条)。そして、判例では、真に養親子関係の設定を欲する効果意思がない場合(つまり、養親子関係を設定する気持ちがない場合)には、①に該当するとして、無効であるとしています。

よって、「相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたとき」も、その養子縁組は無効です。

2.財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。
2・・・妥当ではない

●虚偽表示 → 当事者間では無効
●出捐の意思がないにも関わらず、出捐を仮装して財団法人を設立 → 虚偽表示のルールが適用され、設立の意思表示は無効

出捐者(しゅつえんしゃ)とは、金銭や品物を寄付する者です。そして、財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員が通謀して(グルになって)、出捐者が出捐(寄付)の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐(寄付)を仮装して虚偽の意思表示を行った場合、(通謀)虚偽表示のルールが適用されます。

よって、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であっても虚偽表示にあたり、財団法人の設立の意思表示は無効です。

3.土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。

3・・・妥当ではない

●「土地」の仮装譲渡について、「建物」の賃借人は、法律上の利害関係人ではないので、「第三者」には当たらない
●虚偽表示の第三者に当たらない → 虚偽表示は無効

問題文の状況は上図の通りです。分かりやすいように
「土地の仮装譲渡人A」「土地の仮装譲受人をB(建物賃貸人)」「建物賃借人をC」としています。

ここで、建物賃借人CがAB間の仮装譲渡における第三者に当たるのかを考えます。

もし、第三者に当たれば、Cが仮装譲渡について善意のとき、Cは保護され、土地の仮装譲渡人Aは、Cに対して、建物からの退去および土地の明渡しを求めることができないです。

【判例と理由】 判例では、「第三者」とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいうとしています。ここで、「表示の目的」とは「土地」を指しています。今回建物賃借人Cはあくまでも「建物」を借りているだけにすぎず、「土地」は借りていません。よって、「表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者」とは言えないので、土地の仮装譲渡の第三者には当たらないとしています。

したがって、虚偽表示は当事者間では無効なので、Aは、AB間の①仮装譲渡の無効を主張し、Cに対して、建物からの退去および土地の明渡しを求めることができます。

また、判決の理由についても解説します!

4.仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
4・・・妥当ではない

●虚偽表示おける 「第三者」とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう
●仮装債権の譲受人=第三者にあたる
●虚偽表示 : 善意の第三者は保護される

判例では、仮装譲渡されたことが原因で発生した「売買代金債権(仮装債権)」の譲受人(上図のC)は、①仮装譲渡の第三者に当たるとしているので、Cが善意であれば、Cは保護されCは、「代金債権の債務者B」に対して、代金の支払いを求めることができます。

5.金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

5・・・妥当

●仮装債権の譲受人=第三者にあたる
●虚偽表示 : 善意の第三者は保護される

考え方は選択肢4と同じです。

①金銭消費貸借契約が仮装され、Aは「ウソの貸金債権(仮装債権)」を有します。それを、Cに債権譲渡した場合、Cは①の虚偽表示の第三者に当たります。

よって、Cは善意であれば保護され、Cは借主Bに対して貸金の返済を請求できます。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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