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平成28年・2016|問17|行政事件訴訟法

行政事件訴訟における法律上の利益に関する次のア~オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

ア 処分の取消訴訟において、原告は、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として処分の取消しを求めることはできず、こうした理由のみを主張する請求は棄却される。

イ 処分の無効確認の訴えは、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分の無効の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる。

ウ 処分の取消訴訟は、処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においても、なお、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者であれば提起することができる。

エ 不作為の違法確認訴訟は、処分について申請をした者以外の者であっても、当該不作為の違法の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれば提起することができる。

オ 民衆訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する訴訟であり、原告は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

ア 処分の取消訴訟において、原告は、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として処分の取消しを求めることはできず、こうした理由のみを主張する請求は棄却される。
ア・・・正しい
取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができず、請求は棄却されます(行政事件訴訟法10条1項)。したがって、本肢は正しいです。

取消訴訟をする人が、処分・裁決を求めるにつき法律上の利益を有する場合、原告適格は有します(行政事件訴訟法9条)。
例えば、定期空港運送事業免許(処分)により、飛行機の離発着により騒音被害を受ける周辺住民は、原告適格を有します。

しかし、処分取消し(免許取消し)を求める理由が、

免許の要件として挙げられていた
①事業計画が輸送の安全を確保するために適切なものであること
②事業の遂行上適切な計画を有するもの
という免許の要件を満たしていないから、「免許(処分)」は違法だ!と
周辺住民は主張しました。

これは
「自己の法律上の利益に関係のない違法」を理由としています(行政事件訴訟法10条)。
よって、門前払いの「却下」ではなく、審理はするけど「理由がダメなので、棄却」となります。

イ 処分の無効確認の訴えは、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分の無効の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる。
イ・・・正しい
無効等確認の訴えは、「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者」で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができます(行政事件訴訟法36条)。
したがって、正しいです。具体例等は下記ページをご覧ください!

ウ 処分の取消訴訟は、処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においても、なお、処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者であれば提起することができる。
ウ・・・正しい
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(取消訴訟)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができます(行政事件訴訟法9条)。
したがって、本肢は正しいです。

9条1項のカッコ書きの具体例

9条1項のカッコ書き 処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む

例えば、弁護士が、6か月間の業務停止上処分を受けたとします。 一方で、弁護士連合会会長選挙規程では3年間、会長に立候補することができないというルールがあります。

この場合、6か月間経過により、業務停止処分の効果がなくなった後であっても 会長に立候補できないため、 これを回復するために、この者は、処分の取消しの訴えを提起できる

ということです。

ただ、この具体例までは覚えなくても大丈夫です!

エ 不作為の違法確認訴訟は、処分について申請をした者以外の者であっても、当該不作為の違法の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれば提起することができる。
エ・・・誤り
不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができます(行政事件訴訟法37条)。
申請者以外の者は、不作為の違法確認訴訟を提起できません。
よって、本肢は誤りです。

オ 民衆訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する訴訟であり、原告は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起することができる。
オ・・・誤り
民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます(行政事件訴訟法5条)。
一方、
機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいいます(行政事件訴訟法6条)。
本肢は、民衆訴訟の内容ではなく、機関訴訟の内容なので誤りです。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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