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平成28年・2016|問28|民法・代理

改正民法に対応済
Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した(以下「本件売買契約」という。)。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aが死亡してBが単独相続した場合、Bは本人の資格に基づいて本件売買契約につき追認を拒絶することができない。
  2. Bが死亡してAの妻DがAと共に共同相続した後、Aも死亡してDが相続するに至った場合、Dは本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はない。
  3. Aが本件売買契約につき追認を拒絶した後に死亡してBが単独相続した場合、Bは本件売買契約の追認を拒絶することができないため、本件売買契約は有効となる。
  4. Bが死亡してAが相続した場合、Aは本人の資格において本件売買契約の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任を免れることはできない。
  5. Aが死亡してBがAの妻Dと共に共同相続した場合、Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、Bの相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。

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改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

1.Aが死亡してBが単独相続した場合、Bは本人の資格に基づいて本件売買契約につき追認を拒絶することができない。

1・・・正しい

●無権代理人が本人を単独相続 → 無権代理人は追認拒絶できない(下表の下段参照)

①無権代理人Bが、本人Aに無断でA所有の甲土地をCに売却します。②その後、本人Aが死亡し、③無権代理人Bが単独相続します。

無権代理人Bが本人Aを単独相続したとき、無権代理人が行った契約は有効となります。自分(無権代理人)でやったことは、自分で責任をとるのが当然です。そのため、「本人Aの権利(追認拒絶権)」を相続したことを理由に追認拒絶することは許されません。よって、本問は正しいです。

したがって、無権代理人Bは、相手方Cと契約したとおり、相手方Cに甲土地を引き渡さなければなりません。引き渡すことができなければ、債務不履行となり、損害賠償責任を負います。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

2.Bが死亡してAの妻DがAと共に共同相続した後、Aも死亡してDが相続するに至った場合、Dは本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はない。

2・・・正しい

●無権代理人が死亡 → 「本人」と「他の相続人」が共同相続 → その後、本人死亡で、「他の相続人」が本人を相続 → 「他の相続人」は追認拒絶できない
状況

①無権代理人Bが、Cに甲土地を売却する(無権代理行為をする)。

②無権代理人Bが死亡し、③本人AとDが共同相続する。

④その後、本人Aが死亡し、⑤Dが相続する。

質問

Dは、本人Aの資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はない。

○か×か?

判例

無権代理人が死亡し、本人とともに相続した者(D)が、その後、本人を相続した場合、当該相続人Dは、本人の有する追認拒絶権を行使する余地はないとしています。

理由

③で、共同相続人Dは無権代理人Bの地位を承継しており、この時点で追認拒絶できないことが確定するため。

これは深く考えず、そのまま覚えてしまった方が良いでしょう。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。
3.Aが本件売買契約につき追認を拒絶した後に死亡してBが単独相続した場合、Bは本件売買契約の追認を拒絶することができないため、本件売買契約は有効となる。

3・・・誤り

①本人が追認拒絶 → ②その後、無権代理人が本人を単独相続 → ①の時点で追認拒絶=契約の効力は及ばないことが確定

本問は、無権代理人Bが無権代理行為(Cへの無断売却)を行い、その後、①本人Aが追認拒絶をしています。

この時点で、無権代理行為の効果は本人Aに及ばないことが確定します。つまり、BC間の契約は有効ではなくなります。

その後、②本人Aが死亡し、無権代理人が本人Aを相続しているので、 上記のとおり、BC間の契約は有効ではありません。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

4.Bが死亡してAが相続した場合、Aは本人の資格において本件売買契約の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任を免れることはできない。

4・・・正しい

●無権代理人が死亡 → 本人が単独相続 → 本人は追認拒絶できるが、無権代理人の責任は承継する

状況

選択肢1とは逆で、無権代理行為が行われた後に、無権代理人Bが死亡し、本人が単独相続した場合です。

質問

本人Aは、無権代理人の責任を免れることはできない。○か×か?

判例

本人の有する追認拒絶権を行使することはできるが、無権代理人の債務も承継するため、無権代理人の責任を免れることはできない=損害賠償債務は負います。

【関連ポイント】

本人は、無権代理人の無権代理行為について追認拒絶しても信義則に反しないため、履行拒絶はできる。

Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した。

5.Aが死亡してBがAの妻Dと共に共同相続した場合、Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、Bの相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。

5・・・正しい

本人が死亡 → 「無権代理人」と「他の相続人」が共同相続 → 共同相続人全員が追認しない限り、無権代理行為は有効とはならない
状況

①無権代理人Bが、Cに甲土地を売却する(無権代理行為をする)。

②本人Aが死亡し、③無権代理人BとDが共同相続する。

質問

Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、
Bの相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。 ○か×か?

判例

「無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属する」としています。分かりやすくいうと、共同相続人のうち一人でも追認しない者がいた場合、追認とはならず、一部だけ有効とはならないということです。追認する場合、全員が追認しなければなりません。そして、無権代理人Bは追認拒絶することは信義則上許されないが、他の共同相続人Dは、本人Aの地位を承継し、追認拒絶することが許されます。
つまり、 Dの追認がなければ本件売買契約は有効とならず、 Bの相続分においても当然に有効となるものではないので正しいです。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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