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平成28年・2016|問35|民法・養子

改正民法に対応済

養子に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。
  2. 16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。
  3. C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。
  4. F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。
  5. Ⅰ・J夫婦が、K・L夫婦の子M(16歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。

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改正民法に対応済

【答え】:3

【解説】

1.家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。

1・・・誤り

●「父母が未成年者や成年被後見人」の場合、法定代理人の同意なく認知できる
●成年被後見人が養子縁組 → 成年後見人の同意は不要

認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意は不要です(民法780条)。よって、この点が誤りです。

【具体例】 婚姻関係にないBとの間に、Aが子Cを出産した場合、父Bが未成年者であったとしても、Bの法定代理人の同意なく、Cを認知することができます。

また、成年被後見人が婚姻や養子縁組をするとき、その成年後見人の同意は不要です(738条、799条)。

【関連ポイント】 後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法794条)。

2.16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。

2・・・誤り

●未成年者を養子とするには、原則、「家庭裁判所の許可」が必要

養子縁組は当事者の合意により行えます。そして、未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。ただし、「自己又は配偶者の直系卑属(子や孫)」を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は不要です(民法798条)。

【関連ポイント】 養子となる者が15歳未満の場合、法定代理人が、養子となる者の代わりに養子縁組の承諾をすることができます(代諾養子縁組、797条)。一方。養子となる者が15歳以上の場合には、単独で養子縁組の承諾をすることができます。よって、Bの法定代理人の承諾は不要なので、誤りです。

3.C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。

3・・・正しい

●婚姻している者が養親となる場合、又は、養子になる場合には、原則、自分の配偶者の同意を得る必要がある

配偶者のある者が縁組をするには、原則、その配偶者の同意を得なければなりません(民法796条) 。分かりやすく言えば、婚姻している者が養親となる場合、又は、養子になる場合には、自分の配偶者の同意を得る必要があるということです。

【理由】 配偶者が知らない間に相続関係に影響が出ると配偶者は困るから。

ただし、上記原則には例外があり、「①配偶者とともに縁組をする場合(養親又は養子となる場合)」又は「②配偶者が病気や行方不明等の理由で同意の意思表示ができない場合」は、配偶者の同意は不要です。

【注意】 本問は「Cが、成年者Eを自己のみの養子とするとき」と書いてあるので、①には当たりません。①は、CとDがともに成年者Eを養子とする場合です。

4.F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。

4・・・誤り

●尊属又は年長者を養子とした場合 → 有効だが、裁判所に対して取消しの請求ができる

「尊属(父母や祖父母)」又は「年長者(自分より年齢が上の者)」を養子とすることができません(民法793条)。つまり、「55歳のG」は「58歳のH」を養子にすることはできません。このルールに違反して縁組を行った場合(例えば、年長者を養子とした場合)、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができます(805条)。よって、年長者を養子とする縁組は取消しされるまでは有効です。違反しているから直ちに、無効とはなりません。よって、本問は誤りです。

【関連ポイント】 養子縁組が無効となるのは、①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき、②当事者が縁組の届出をしないときです。

5.Ⅰ・J夫婦が、K・L夫婦の子M(16歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。

5・・・誤り

●特別養子縁組の場合、「養子」と「実の父母」との親族関係は終了
●普通養子縁組の場合、 「養子」と「実の父母」との親族関係は終了しない
●特別養子縁組の要件 : 養子となる者の年齢は「原則、15歳未満」、例外として「15歳に達する前から養親となる者に監護されている場合は18歳未満」

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(809条)。つまり、養子も実子と同じ扱いになります(法定相続分も実子と同じ)。そして、特別養子縁組の場合、「養子」と「実の父母」との親族関係は終了します。一方、普通養子縁組の場合、 「養子」と「実の父母」との親族関係は終了しません

そして、特別養子縁組の場合、養子となる者の年齢は「原則、15歳未満」です。本問を見ると16歳のMを養子にしているので、特別養子縁組はできません。よって、普通養子縁組です。したがって、「養子M」と「実の父母(K・L)」との親族関係は終了しません。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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