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平成28年・2016|問38|会社法・種類株式

会社法上の公開会社(指名委員会等設置会社を除く。)が発行する株式に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

イ 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限がある旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

ウ 会社は、譲渡による当該種類の株式の取得について、会社の承認を要する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

エ 会社は、株主が当該会社に対して当該株主の有する種類株式を取得することを請求することができる旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

オ 会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、取締役または監査役を選任する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:4

【解説】

ア 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

ア・・・誤り

株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨 → 全部取得条項付株式 → 種類株式に限り定めることができる

本肢は「株主総会の決議によってその全部を会社が取得する旨」の定めがある株式なので「全部取得条項付株式」です。よって、発行株式の全部を「全部取得条項付株式」にすることはできません。あくまでも種類株式としてしか発行できません。

似たようなもので「取得条項付株式」があり、これは、発行株式の全部についてすることができます。

違いは、「取得できる要件」です。下記の通り「一定事由の発生で取得→取得条項付」「株主総会決議で取得→全部取得条項付株式」です。

取得条項付株式と全部取得条項付株式の違い

取得条項付株式」とは、株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができる株式です。 そして、これは、株式の全部を「取得条項付株式」にすることは可能です。また、種類株式として、定めることもできます(取得条項付種類株式)(会社法107条1項3号、2項3号)。

全部取得条項付株式」とは、株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる株式です。 そして、これは、種類株式として発行することができ、「取得条項付株式」のように株式の全部として発行することはできません(会社法108条1項7号)。なので、「全部取得条項付株式」は「全部取得条項付 種類 株式」と「種類」と入れて覚えるのもよいでしょう!

全部の株式について発行できるもの

全部の株式について発行できるものは下記3つです。

  1. 譲渡制限株式
    非公開会社のみ全部の株式で発行できる
    公開会社は、全部の株式で発行することはできず、一部の株式のみ、譲渡制限株式として発行できる
  2. 取得請求権付株式
  3. 取得条項付株式

取得条項付株式とは、一定事由が生じると、会社が株主に対して、取得条項付株式(種類株式)を売ってください!と強制的に買い取ることができます。そして、取得条項付株式(種類株式)は、会社が自己株式を消却するために用いられる制度です。自己株式を消却(株式を消滅させる)することにより、市場に出回っている株式数を減らしたり、株式配当を減らしたりできます。

「一定事由」とは、例えば、会社が債務超過になった場合です。事業再建のために、株式の全部を取得して、経営を再出発させる手段としても用いられたりもします。

イ 会社は、その発行する全部の株式の内容として、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限がある旨の定款の定めがある株式を発行することができる。

イ・・・誤り

●議決権制限株式  → すべての株式会社で全部の株式の内容として発行できない(種類株式として発行は可能)

本肢の「議決権を行使することができる事項について制限がある旨の定款の定めがある株式」とは、「議決権の制限に関する株式」です。問46の表の3つに含まれないので、すべての株式について、上記株式にすることはできません。よって、本肢は「その発行する全部の株式の内容として」というのが誤りです。

2つ以上の種類の株式の1つとして「議決権の制限に関する種類株式」とすることは可能です(会社法108条3号:種類株式)。

例えば、ある株式は議決権が付いている株式(普通の株式)で、もう一つの種類の株式として「議決権制限付株式」にすることは可能です。一般的には、経営に関心がない投資家に対して発行し、その代わりに配当や残余財産の分配が優先されたりする場合が多いです。ただし、会社法上、必ずしもこのような優先は不要で、単に議決権を制限するだけの株式の発行も可能です。

■公開会社における議決権制限株式

公開会社の場合、「議決権制限株式の数」が「発行済み株式総数」の2分の1を超えたときは、ただちに、「議決権制限株式の数」を「発行済み株式総数」の2分の1以下にするための必要な措置を講じなければなりません(115条)。

ウ 会社は、譲渡による当該種類の株式の取得について、会社の承認を要する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

ウ・・・正しい

●公開会社 → 譲渡制限付き種類株式を発行することはできる

本肢の「譲渡による当該種類の株式の取得について、会社の承認を要する旨の定款の定めがある種類株式」とは、「譲渡制限付の種類株式」です。

「譲渡制限付き株式」については、「すべての株式」としても「種類株式」としても発行できます

ただし、公開会社については、「すべての株式を譲渡制限付き株式」にすることはできません。

【理由】 公開会社は、上場会社をイメージしていただくとわかりやすいですが、株式の売買は、一般に行われています。
ここから考えて、「すべての株式が譲渡制限付き株式」になると、公開会社ではなくなってしまいます。
(株式の売買の際に、都度、会社の承認が必要となるのはおかしい)

よって、公開会社については、「すべての株式を譲渡制限付き株式」にすることはできません。

公開会社については、一部の株式のみ「譲渡制限付きの種類株式」にすることは可能です。

よって、正しいです。

【具体例】 公開会社が「普通株式:1000万株、譲渡制限付き種類株式:1万株」とするのは可能です。

エ 会社は、株主が当該会社に対して当該株主の有する種類株式を取得することを請求することができる旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

エ・・・正しい

●公開会社 → 取得請求権付の種類株式を発行できる

本問の「株主が当該会社に対して当該株主の有する種類株式を取得することを請求することができる旨の定款の定めがある種類株式」とは、「取得請求権付の種類株式」です。

公開会社は「取得請求権付種類株式」を発行することはできるので、正しいです。

■取得請求権付とは?

これは、株主からの請求に基づいて、会社が自己株式を取得する制度です。

つまり、株主が会社に対して「持っている取得請求権付株式を買い取れ!」と請求できるわけです。

そして、取得請求権付株式は、発行する株式の一部の株式についてのみ、取得請求権を付けることも可能です。これを、取得請求権付種類株式と言います。

取得請求権付株式・取得請求権付種類株式を発行するには、定款で、株式1株を取得するのと引き換えに株主に何を与えるのか社債・新株予約権・新株予約権付社債・金銭等)を定める必要があります。

オ 会社は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、取締役または監査役を選任する旨の定款の定めがある種類株式を発行することができる。

オ・・・誤り

●取締役・監査役の選解任権付種類株式 →  「指名委員会等設置会社でない非公開会社」のみ発行できる

=「指名委員会等設置会社」及び「公開会社」では発行することはできない

本肢の「種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において、取締役または監査役を選任する旨の定款の定めがある種類株式」とは、「取締役・監査役の選解任権付種類株式」です。そして、「取締役・監査役の選解任権付種類株式」は、指名委員会等設置会社及び公開会社」では発行することはできません(会社法108条1項ただし書き)
よって、本肢は「公開会社」に関する問題なので、誤りです。

取締役・監査役の選解任権付種類株式とは、簡単に言えば、この株式を持つ株主総会(種類株主総会)で、取締役または監査役を選任することができる株式です。

例えば、A種株式とB種株式の2種類の株式を発行し、それぞれの種類株主総会で、取締役を各2名ずつ選任するといった場合です。これは、起業家がベンチャー企業を設立し、投資会社からお金の出資を受ける場合、起業家がA種株式を、投資会社がB種株式を取得し、投資会社にも経営権の一部を与える場合に使います。このようにベンチャー企業のために作られた株式なので、「指名委員会等設置会社でない非公開会社」のみ発行できるとしています。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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