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平成29年・2017|問16|行政不服審査法

行政不服審査法の定める執行停止に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てによりまたは職権で、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止その他の措置をとることができる。
  2. 審査庁は、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査請求人の申立てがなくとも、職権で執行停止をしなければならない。
  3. 審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができ、意見書の提出があった場合、審査庁は、速やかに執行停止をしなければならない。
  4. 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときには、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。
  5. 処分庁の上級行政庁または処分庁が審査庁である場合には、処分の執行の停止によって目的を達することができる場合であっても、処分の効力の停止をすることができる。

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【答え】:4

【解説】

1.処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てによりまたは職権で、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止その他の措置をとることができる。
1・・・誤り
処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができます。
ただし、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止以外の措置をとることはできません(行政不服審査法25条3項)。
分かりやすくいうと
処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁は、処分庁を指揮監督する権限はないので、「職権」で「執行停止」や「その他の措置」を行うことはできません
あくまでも、「申立てがあった場合」に限って、「執行停止」や「手続きの続行停止」などができるだけです。※「処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない審査庁」とは、例えば、開発審査会で、第三者機関といったイメージです。
2.審査庁は、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査請求人の申立てがなくとも、職権で執行停止をしなければならない。
2・・・誤り
審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければなりません(行政不服審査法25条4項)。
「処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要がある」場合でも、審査庁は申立てがなければ執行停止はできません。
審査請求人からの申立てがあった場合に限って、執行停止をしなければなりません
3.審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができ、意見書の提出があった場合、審査庁は、速やかに執行停止をしなければならない。
3・・・誤り
執行停止の申立てがあったとき、又は、審理員から執行停止をすべき旨の意見書の提出を受けたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければなりません(行政不服審査法25条7項)。
執行停止をするかどうかを決めるのは、審査庁で、必ずしも執行停止をしなければならない、わけではありません。
よって、誤りです。
4.執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときには、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。
4・・・正しい
執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができます行政不服審査法26条)。

5.処分庁の上級行政庁または処分庁が審査庁である場合には、処分の執行の停止によって目的を達することができる場合であっても、処分の効力の停止をすることができる。
5・・・誤り
処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができません(行政不服審査法25条6項)。
言い換えると、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、その措置を行いなさい!ということです。上記を理解するための具体例A所有の建物が違法建築物を建築し、B市長が、建物の除去命令をした場合、処分の効力・処分の執行・手続きの続行とは下記内容です。1、2、3の順に手続きが踏まれます。1.処分の効力=除去命令自体
↓2.処分の執行=代執行により建物を強制的に除去する工事に着手すること
↓3.手続きの続行=上記代執行の手続きのこと2や3は、「1の処分の効力」があることを前提に行います。そのため、「1の処分の効力」を停止させると、自動的に2、3も停止します。一方、「2の処分の執行」を停止させる場合、2のみを停止させて、「1の処分の効力」は停止しません。

そのため、「2の処分の執行」の停止で目的達成ができる場合は、あえて、「1の処分の効力」を停止させる必要はないので、そのような場合は、「1の処分の効力」の停止はできない、「2の処分の執行」の停止を行いなさい!ということです。

2と3はセットで考えた方が分かりやすいかもしれません。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

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