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平成29年・2017|問27|民法・社団や組合

改正民法に対応済
自然人A(以下「A」という。)が団体B(以下「B」という。)に所属している場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。
イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。
ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。
エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。
オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済
【答え】:4

【解説】

自然人Aが団体Bに所属している。

ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。

ア・・・妥当ではない

●理事 → 社団法人の代表

理事は、一般社団法人を代表します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律77条)。

つまり、 理事Aは、法人Bの代表として法律行為を行います。「法人Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う」は誤りです。

自然人Aが団体Bに所属している。

イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。

イ・・・妥当

●権利能力なき社団 → 財産は「総有」

権利能力がなければ当然権利義務の帰属主体にはなれません(法人のように人格を持たない)。どういうことかというと、不動産を購入して登記をしようとしても権利能力がないと、登記ができません。そのため、権利能力なき社団の場合、「代表者の個人名義」や「構成員全員の共有名義」で登記をしたりします。

そして、権利能力なき社団の財産は実質的には社団を構成する総社員の総有に属するものである」とされています。

※1 「共有」の持分については、持分を自由に処分(譲渡)することができ、目的物の分割請求もできることから「具体的」と記しています。

※2 「合有」の持分については、各人が持分を持つのですが、共有とは異なり、持分を自由に処分(譲渡)することができず、清算前に、目的物の分割請求もできないことから「持分を潜在的には有する」と言います。

自然人Aが団体Bに所属している。

ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。

ウ・・・妥当ではない

●組合の財産=共有(厳密には合有) → 持分を自由に処分(譲渡)することができない

●目的物(財産)の分割請求もできない

各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属します(民法668条)。そして、組合における財産の共有は「合有」を意味します。つまり、「狭義の共有」とは異なり、①持分を自由に処分(譲渡)することができません。また、財産の分割請求もできません。

自然人Aが団体Bに所属している。

エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。

エ・・・妥当ではない

●組合の業務を執行する組合員 → 特約がある場合に報酬を請求できる

組合の業務を執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することができません(民法671条、648条)。

自然人Aが団体Bに所属している。

オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。

オ・・・妥当

●組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は善意・無過失の第三には対抗できない

組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(民法670条1項) 。

また、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することもできます(2項)。そして、この委任を受けたものを「業務執行者」と言います。本問の「Aが業務執行者」です。そして、組合に業務執行者がいる場合は、業務執行者のみが組合員を代理することができる(670条の2)。

そして、判例では、この業務執行者の代理権限について、制限を加えても、善意無過失の第三者には対抗できないとしています。

【具体例】 

例えば、「業務執行者Aは、10万円以上の取引はできない」と組合の規約で定めていたとします。
これが、「組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限」している状況です。

そして、第三者は、業務執行者A(組合)と取引した者Bです!

この場合、第三者Bが上記規約について、過失なく知らない場合(善意・無過失)、
第三者Bは、組合に対して対抗できるので、業務執行者A(組合)との取引の有効を主張することができます!


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

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