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平成29年・2017|問29|民法・物権

改正民法に対応済
物権の成立に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:2

【解説】

ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
ア・・・妥当ではない

●地下又は空間を目的とする地上権も設定できる

地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます。この場合、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができます(民法269条の2)。

具体例 地下鉄やモノレールを作る際に、地下や空間を目的とする地上権を設定できる

イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
イ・・・妥当
●判例によれば、一筆の土地の一部であっても時効取得できる

【判例】 判例では、一筆の土地の一部であっても取得時効の対象となるとしています。

【具体例】

上図のように、B所有の土地の一部(左端部分)をAが占有を継続することにより、Aは左端部分のみ時効取得できます。この場合、その部分のみ分筆(ぶんぴつ)して登記します。

※ 土地を数える場合、「筆:ふで」という単位で数えます。そして1つの土地を分けることを「分筆」と言います。

ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
ウ・・・妥当ではない
●構成部分の変動する集合動産 → 一括して譲渡担保の目的とすることができる

判例では「構成部分の変動する集合動産であっても、その種類・所在場所及び量の範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」としています。

具体例 例えば、ビール販売店Aが、Bからお金を借りて、倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本について譲渡担保を設定した場合、構成部分の変動する集合動産とは、「倉庫内にあるアサヒの瓶ビール100本」であり、種類・所在場所及び量の範囲が指定されているので、この100本のビールが一つの集合物です。

エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
エ・・・妥当

●土地に生育する樹木 → 明認方法を施した上で、土地とに売却できる

判例によると、土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められます。そして、「明認方法」とは、立木の所有者が誰なのかを公示する制度です。

明認方法の具体例 「立木の木の皮を削って所有者の名前を書く」「立札を立てておく」等の方法によって公示します。

※ 土地とともに立木を譲り受けた場合、対抗要件として、「明認方法」は不要で、「土地の登記」があれば足ります。

オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
5・・・妥当

●地役権の時効取得の要件 → ①継続的に行使 + ②外形上認識することができる

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(民法283条)。よって、正しいです。
【簡単にいうと】 周りから見て、地役権を行使し続けている場合に限って、地役権を時効取得できるということです。

関連ポイント 通行地役権の時効取得に必要な「継続」の要件について、判例では、「要役地所有者が」、他人地(承役地)の上に通路の開設する必要があるとしています。つまり、土地を使いたい側(要役地所有者)が、開設することが要件です。 「承役地」とは「使用される側の土地」です。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

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