https://jukosya.gyosyo.info/?p=2437

平成29年・2017|問38|会社法・株式

発行済株式の総数の増減に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 発行済株式の総数は、会社が反対株主の株式買取請求に応じることにより減少する。
  2. 発行済株式の総数は、会社が自己株式を消却することにより減少する。
  3. 発行済株式の総数は、会社が単元株式数を定款に定めることにより減少する。
  4. 発行済株式の総数は、会社が自己株式を処分することにより増加する。
  5. 発行済株式の総数は、会社が募集新株予約権を発行することにより増加する。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.発行済株式の総数は、会社が反対株主の株式買取請求に応じることにより減少する。
1・・・誤り

●自己株式を取得しても発行済株式総数は変化しない

会社が、反対株主の株式買取請求に応じて自己の株式を取得した場合、会社の自己株式は増えますが、「発行済株式の総数」は変動しません。単に、株主が、反対株主から会社自身に変わるだけです。したがって、本肢は誤りです。

発行済株式総数とは、会社が実際に発行している株式の総数で、会社自身が保有する株式も含みます。例えば、発行済株式の総数が10万株あり、2万株が自己株式(会社が保有する株式)で、その他の株主が8万株を持っていたとします。その他の株主の一部が反対株主として株式買取請求権を行使し、会社が1万株を取得した場合、自己株式が3万株、その他の株主が保有する株式が7万株で、合計すると10万株で発行済株式総数は変わりません。

■「反対株主」とは、「株主総会に先立って反対する旨を通知し、かつ株主総会において反対した株主等」を指します。

この問題文からは具体的にどのような状況かまでは分からないですが

例えば、株式の内容を変更して譲渡制限や全部取得条項に関する定めを設けるために株主総会を開き、
事前に反対する旨の通知をして、実際の株主総会において反対した株主は
その後、議案が可決されてても、その後、会社に対して株式買い取り請求ができます。

2.発行済株式の総数は、会社が自己株式を消却することにより減少する。
2・・・正しい

●自己株式を消却 → 発行済株式総数は減少する

株式会社は、自己株式を消却する(自己株式を消滅させる)ことができます(178条1項)。消却とは、発行していた株式をこの世から消滅させてしまうことを指します。その結果、発行済株式の総数は、消却した分だけ減ります
したがって、本肢は正しいです。

3.発行済株式の総数は、会社が単元株式数を定款に定めることにより減少する。
3・・・誤り

●単元株を採用 → 議決権が減少。発行済株式総数は変化なし

会社が単元株式数を定款に定めても、発行済株式の総数は減少しません単元株式数を定款に定めた場合、議決権数は減少します。

具体例 10万株を発行する会社があったとします。通常(単元株を採用していない場合)、10万個の議決権が存在します。

株主A:2万5,600株と保有していたとします。この場合、株主Aの議決権数は2万5,600個です。ここで、単元株を採用し、1000株をひとまとまりにしたとします。そうすると、1000株に対して1つの議決権を持つことになり、1000株未満の株については議決権がなくなります。つまり、株主Aは、2万5000株について25個の議決権があり、1000株未満の端数600株については、議決権がなくなります。つまり、議決権は減っています。しかし、発行済みの株式自体、消却していないので残っています。よって発行済株式総数は変化しません。ちなみに1000株を1つにまとめても1000株であることに変わりはありません。

4.発行済株式の総数は、会社が自己株式を処分することにより増加する。
4・・・誤り

●自己株式の処分 → 発行済株式総数は変化なし

会社が自己株式を処分しても、発行済株式の総数に変動はありません。処分するとは、「誰かに売る」といったイメージです。
具体例 会社が自己株式をAさんに売ったら、株の名義人(所有者)が「会社からA」に変わるだけです。

5.発行済株式の総数は、会社が募集新株予約権を発行することにより増加する。
5・・・誤り

●新株予約権の発行 → 発行した発行済株式総数は変化なし

新株予約権とは、「株の引換券」といったイメージです。この新株予約権を発行しただけでは、新たに株式が発行されません。したがって、新株予約権を発行しても発行済株式総数は変化しません。もし、会社が新株予約権を行使した人(使った人)に対して、新たに株式を発行して渡したのであれば、発行済株式総数は増加します。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

SNSでもご購読できます。