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平成30年・2018|問17|行政事件訴訟法・判決の効力

許認可等の申請に対する処分について、それに対する取消訴訟の判決の効力に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 申請を認める処分を取り消す判決は、原告および被告以外の第三者に対しても効力を有する。
  2. 申請を認める処分についての取消請求を棄却する判決は、処分をした行政庁その他の関係行政庁への拘束力を有さない。
  3. 申請を拒否する処分が判決により取り消された場合、その処分をした行政庁は、当然に申請を認める処分をしなければならない。
  4. 申請を認める処分が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない。
  5. 申請を拒否する処分に対する審査請求の棄却裁決を取り消す判決は、裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

1.申請を認める処分を取り消す判決は、原告および被告以外の第三者に対しても効力を有する。

1・・・正しい

●取消判決の効力 → 第三者に対しても効力が生じる(第三者効)

処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有します(行政事件訴訟法32条1項)。
したがって、本問は正しいです。第三者に対しても効力を有することを「第三者効」と言います。

2.申請を認める処分についての取消請求を棄却する判決は、処分をした行政庁その他の関係行政庁への拘束力を有さない。

2・・・ 正しい

●取消判決(認容判決)の効力 → 処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する(拘束力)

●棄却判決(=処分を取り消しない判決) → 拘束力はない → 処分は有効のまま:本肢

処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)。
一方、棄却判決は、拘束力を有しないので、本肢は正しいです。
このように、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する効力を「拘束力」と言います。

【具体例】

例えば、マンション建設のための建築確認を求める申請をして、確認処分をした=申請を認める処分をした

周辺住民が、マンション建設によって、日当たりが悪くなる!だから確認処分を取消してください!
と取消請求をする。

しかし、裁判所は、建築確認に違法性はないとして、請求棄却。

この場合、処分は取り消されずにそのまま有効なので、
(処分の変更も不要なので)
関係行政庁を拘束する必要性はありません。

よって、
関係行政庁への拘束力を有しません。

3.申請を拒否する処分が判決により取り消された場合、その処分をした行政庁は、当然に申請を認める処分をしなければならない。

3・・・誤り

●「申請に対する拒否処分」について取消判決 → 行政庁は、改めて申請に対して処分する義務を負う(拘束力)

「申請に対する拒否処分」が判決により取り消された場合、改めて、申請に対する処分等を行う必要があります(行政事件訴訟法33条2項)。

本問のように、当然に「申請を認める処分(=許可)」をしなければならないわけではありません。申請の内容によっては別の理由で、拒否処分(不許可)もあり得ます。

4.申請を認める処分が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない。

4・・・正しい

●「申請に対する処分」「審査請求に対する裁決」について取消判決 → 行政庁は、改めて申請に対して処分・裁決する義務を負う(拘束力)

「申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決」が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければなりません(行政事件訴訟法33条2項3項)。したがって、本問は正しいです。

ちなみに、「申請に対する処分」とは、拒否処分(却下・棄却)を想定しております。申請が拒否されたから取消訴訟を提起するイメージです。

5.申請を拒否する処分に対する審査請求の棄却裁決を取り消す判決は、裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

5・・・正しい

●取消判決の効力 → 関係行政庁を拘束する(拘束力)

処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)(選択肢1参照)。したがって、本問は正しいです。本問の状況は下図の通りで、裁決について取消し判決があったということです。結果として、行政庁は再度裁決をしなければなりません(=拘束力)。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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