強迫とは?
「強迫」とは、相手に何らかの害を加えると告知することによって、相手の自由な意思決定を妨げる行為を言います。
民法では「強迫」という漢字を使い、刑法では「脅迫」という漢字を使います。
刑法の「脅迫」は、生命・財産などに害を加えると相手に告知することを意味しますが、行政書士では、こちらは覚えなくてもよいです。
強迫の効果
強迫による意思表示は、あとで取り消すことができます(民法96条1項)。
例えば、AがBに強迫されて、A所有の土地をBに売却してしまった場合、Aはあとで、強迫を理由にAB間の売買契約を取り消すことができます。
第三者から強迫を受けた場合
第三者から強迫を受けた場合、相手方が善意無過失であろうが関係なく、強迫を受けた者はあとで取り消しができます。
例えば、Aが第三者Cに強迫されて、A所有の土地をBに売却してしまった場合、第三者Cが強迫について善意無過失であっても、Aはあとで、強迫を理由にAB間の売買契約を取り消すことができます。(もちろん、第三者Cが悪意でも有過失でも取消しできます)
強迫取消し前の第三者との関係
第三者から強迫を受けた場合と同じく、強迫取消し前の第三者が善意無過失であろうと関係なく、強迫を受けた者はあとで取り消しができます。
例えば、AがBに強迫されて、A所有の土地をBに売却してしまった。その後、Bが第三者Cにこの土地に売却した。
この場合、第三者Cが強迫について善意無過失であっても、Aは強迫取消しを第三者Cに対抗できます。つまり、Aは土地をCから取り戻すことができます。(もちろん、第三者Cが悪意でも有過失でも取消しできます)
「詐欺取消し前の第三者」と「強迫取消し前の第三者」の違い
Aが誰かから詐欺を受けて、Bに甲土地を売却しました。「Aが詐欺を理由に取消す前」に、Bは第三者Cに売却しました(Cは取消し前の第三者)。その後、Aは詐欺を理由にBに取消しの意思表示をしました。
この場合、AとCのどちらを保護するだろうか?(どちらが勝つか?)
詐欺取消前の第三者については、第三者が善意無過失かそれ以外かで保護すべき人を決めます。
第三者Cが、詐欺について善意無過失であればCが保護され、Cがそれ以外(悪意or有過失)であればAが保護されます。
「Aが詐欺を受けていたことを知らない第三者C」と「騙されたA」とを比較すれば、何も知らないCの方を保護すべきだというという理由から善意の第三者を保護しています。詐欺を受けていたことを知っていたのであれば保護する必要はないので、その場合は詐欺を受けたAを保護します。
注)第三者Cは善意無過失でありさえすれば、たとえ登記がなくても、保護される!
一方、強迫による取消し前の第三者では、強迫を受けたAが保護されます。つまり、第三者が善意無過失であっても、悪意や有過失であっても、第三者は保護されません。これは、騙された人と異なり、強迫を受けた者に落ち度はないから、より手厚く保護しているのです。
参考条文
(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(取消権の期間の制限)
第126条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
