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最判昭49.2.5:「使用許可の取消し」と「損失補償」

論点

  1. 地方公共団体の財産である土地の使用許可の取消しによって生じた損失は、損失補償の対象になるのか?

事案

株式会社Xは、東京都Yの所有する本件土地をYから使用期限の定めなく、建物を建築し、所有することを目的として借り受けた。

その後、Yが本件土地を卸売市場用地として使用するため、Yは使用許可の取消しを行った。

これにより、Xは、建物の撤去費用などの損害を被ったとして、Yに対して損失補償の請求をした。

判決

地方公共団体の財産である土地の使用許可の取消しによって生じた損失は、損失補償の対象になるのか?

特別の事情がないかぎり、損失補償の対象とはならない

国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の損失補償の規定は、都有行政財産の使用許可の場合にも類推適用すべきである。

そうだとしても、使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は国有財産のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきである。

したがって、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約は内在しているものである。

したがって、原則として、損失補償を請求することはできない

例外として、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、②使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限って、損失補償を請求できる。

例外的に損失補償ができる場合

① 使用許可に対して対価を支払っているが、その価値を十分に回収できていない場合

<具体例>

使用権者が行政財産を使用するために対価(使用料や賃料)を支払い、その対価を回収するためには一定期間の使用収益が必要だったとします。

しかし、その使用期間の途中で行政財産が公共目的で必要とされ、使用できなくなった場合、その支払った対価を使用収益によって十分回収できていないと認められる場合には補償が考慮されることがあります。

(例)

公園内に臨時のカフェ営業の許可を受け、3年間の契約で高額の使用料を支払ったが、2年目で公園の改修工事が始まり営業を続けられなくなった場合。

② 使用許可の際に「特別な取り決め」があった場合

<具体例>

使用許可を受ける際に、「たとえ行政財産が公共の必要で利用される場合でも、一定期間は使用を保障する」といった特別な取り決めが契約や許可条件に含まれている場合があります。

このような場合には、使用権者がその条件を信頼して使用を続ける権利を保有しているとみなされ、補償が認められる可能性があります。

(例)

行政機関が「公共目的で必要となる場合でも、5年間は使用を継続できる」と保証している特約付きで土地の使用許可を与えたにもかかわらず、3年目で使用中止を命じた場合。

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