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消滅時効

消滅時効とは?

消滅時効とは、一定期間、権利を行使しないと、その権利が消滅してしまう制度です。

例えば、あなたが友人Aに、100万円を貸して、返済期限から10年間一度も請求をせずに放っておくと、あなたのAに対して有する「100万円の貸金債権」は時効により消滅してしまい、以後、あなたはAに対して100万円の返済を請求できなくなってしまいます。

消滅時効期間と起算点の原則

一般的な債権の消滅時効

下記2つのいずれかに該当すると、債権は時効によって消滅します(民法166条1項)。つまり、消滅時効の起算点は2つあります。

  1. 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  2. 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

1は、「債権者が知ることができた時」という債権者の主観的な時が起算点なので、主観的起算点と言います。

2は、「権利行使することができる時」となっており、債権者が知ったかどうかは関係なく、客観的な時が起算点なので、客観的起算点と言います。

所有権の消滅時効

所有権に消滅時効はありません。つまり、所有権を行使していない(ずっと使用していない)からといって、それが理由で、所有権が消滅することはありません。

【具体例】 東京在住の人が、沖縄県に土地を所有していて、ずっと放っておいても、それが理由で土地の所有権がなくなる(消滅する)わけではありません。消滅したら、その土地の所有権はどうなるの?ってなりますよね。
もちろん、他人に占有されていて、時効取得によって、所有権が取られてしまうことがあります。

債権又は所有権以外の財産権

「債権又は所有権以外の財産権」とは、例えば、用益物権である「地上権、永小作権、地役権」や「抵当権」です。

債権又は所有権以外の財産権」は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法166条2項)。

抵当権」の場合、上記の通り、時効期間は20年ですが、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しません(民法396条)。

【理解】 抵当権と被担保債権はセットです。例えば、債権者が1000万円を貸して、その担保として土地に抵当権を設定してもらった場合、都度、債務者から「債務の承認」をしてもらっていたのも関わらず、抵当権を実行せずに20年間経過したから、抵当権が時効消滅するというのは困ります。そのため、抵当権設定者(債務者)に対しては、1000万円の被担保債権が時効消滅することで、初めて抵当権が消滅することになっています。

一方、債務者や抵当権者以外の「抵当不動産の第三取得者」は被担保債権が時効完成していなくても、被担保債権の弁済期が到来したときから20年経過することで、抵当権の消滅時効を援用(主張)することができます。

例外的な消滅時効期間と起算点

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、下記2つのいずれかに該当すると、債権は時効によって消滅します(民法167条1項)。

  1. 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  2. 権利を行使することができる時から20年間行使しないとき

人の生命や身体は、大切なものだから、2について「原則の10年」から「20年」に延長しています。

【具体例】 

建築会社Aの従業員Bが建築現場で作業中、頭上から木材が落ちてきて負傷したとします。この負傷について建築会社Aの安全配慮が欠ける(債務不履行の)場合、BはAに対して損害賠償請求ができ、消滅時効は上記の通りです。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

不法行為による損害賠償の請求権は、下記2つのいずれかに該当すると、時効によって消滅する(民法724条)。

  1. 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
  2. 不法行為の時から20年間行使しないとき。

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、上記1の「3年間」とあるのは、「5年間」と延長になります(民法724条の2)。これも、人の生命や身体は大切なものだから延長しています。

上記(不法行為)と、「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(債務不履行)」とは、不法行為と債務不履行の違いがあります。

定期金債権の消滅時効

「定期金債権」とは、年金債権のように、一定額を一定期間請求できる権利を言います。

定期金の債権は、下記2つのいずれかに該当すると、時効によって消滅します(民法168条)。

  1. 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
  2. 前号に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。

【具体例】

例えば、A:地主、B:借主として、毎月の地代は前月の末日に払う約束をした。そして、5月分の地代をBが滞納した(4月末までに支払わなかった)場合、(1)5月分の地代の請求ができることを知ったときから10年間、もしくは(2)5月1日(=権利行使できるとき)から20年間行使しないとき(1,2のいずれか早い方)、Aの地代の請求権は時効消滅します。

▼なぜ、2倍に引き延ばされるか?

実際、地代の滞納については、いつの地代の滞納かが分からない場合が多いです。一度だけ滞納して、その後ずっと支払われていたら、地主も気づかない場合もあります。そのため、地代(定期金)のように長期間にわたる債権については、時効期間を延ばした方が適切ということで2倍に延長されているとイメージすると分かりやすいでしょう。

判決で確定した権利の消滅時効

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利」については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年となります(民法169条1項)。

ただし、確定の時に弁済期の到来していない債権については、10年とはならず、その債権の時効期間が適用されます(民法169条2項)。

民法テキストの目次

作成中・・・

参考条文

(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。

(定期金債権の消滅時効)
第168条 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
二 前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。
2 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

(判決で確定した権利の消滅時効)
第169条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

(抵当権の消滅時効)
第396条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

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