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詐害行為取消権(詐害行為取消請求)

詐害行為取消権(詐害行為取消請求)とは?

①AはBに100万円を貸した(Aは貸金債権を有している)。その後、弁済期が到来したにも関わらず、BはAに100万円を弁済しなかった。Bは唯一の財産である2000万円の甲地を有していたが、そのまま所有し続けると、Aに差し押さえられてしまうので、②Bは甲地をCに売却した。

この状況で、Aを債権者、Bを債務者、Cを受益者と呼びます。

※受益者は、「その行為によって利益を受けた者」という言い方もします。

 

 

ここで、AがBに100万円を貸したのは、Bが甲地を所有しており、万一返せなくても、この土地を差し押さえて、返してもらおうと期待できたからでしょう。

それにも関わらず、Bが甲地を売却してしまったら、Aは甲地を差し押さえて、100万円を回収するという事ができなくなってしまいます。それではAの利益を害するし、またBは明らかにAを害するためにこのような行為をしているわけなので、Bを保護する必要性は低いです。

※Aは貸金債権を保全したい:回収できるようにしたい→貸金債権を「被保全債権」と呼ぶ

そこで、民法では、債務者BがAを害することを知ってした行為(Cへの売却)について、債権者Aは、取り消すことができるとしています。これが「詐害行為取消権」です。具体的には、③債権者Aが裁判所に、詐害行為取消請求の訴えをし、④訴えが認められれば、取消判決となり、BC間の売買契約は取り消されます。

この「債務者BがAを害することを知ってした行為」を「詐害行為」と言います。

ただし、例外として、詐害行為について受益者Cが知らなかった場合(善意)、債権者Aは詐害行為取消権を行使できません。

そして、詐害行為(BC間の売買契約)が取消された場合、受益者Cは、反対給付(Bに支払った代金)の返還を請求することができます。

詐害行為取消請求ができる要件

詐害行為取消権を行使するためには、下記要件を全て満たす必要があります。

詐害行為取消請求の方法

詐害行為取消請求は、必ず裁判によって行使しなければなりません(民法424条1項本文)。

裁判外で詐害行為取消請求はできません。

詐害行為取消請求の相手方(訴訟の被告)

原告は、債権者Aですが、被告は、受益者Cまたは転得者です(民法424条の7第1項)。

出訴期間

詐害行為取消請求に係る訴えは、①債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年を経過したとき、または②行為の時から10年を経過すると、訴えを提起することができなくなります(民法426条)。

詐害行為取消請求の範囲

債権者の詐害行為取消請求ができる範囲は、債務者がした行為(詐害行為)の目的が可分であるときは、債権者Aの有する被保全債権の額が限度です。

上記事例の通り、売却については可分ではないので、すべてを取消すことができます。

債権者への支払請求・引渡請求

債権者は、詐害行為取消請求によって受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合、

その返還請求が「金銭の支払又は動産の引渡し」を求めるものであるときは、

受益者に対しては「その支払又は引渡し」を求めることができ、
転得者に対しては「その引渡し」を、自己に対してすることを求めることができます(民法424条の9)。

そして、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをしなくてもよいです。

民法テキストの目次

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参考条文

(詐害行為取消請求)
第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

(詐害行為の取消しの範囲)
第424条の8 債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

(債権者への支払又は引渡し)
第424条の9 債権者は、第四百二十四条の六第一項前段又は第二項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

第426条 詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。行為の時から十年を経過したときも、同様とする。

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