詐欺とは?
詐欺(さぎ)とは、他人に騙されて意思表示をしてしまった場合を指します。詐欺のことを「欺罔行為(ぎもうこうい)」と言ったりもします。
詐欺の効果
詐欺による意思表示は、取り消すことができます(民法96条1項)。
例えば、AがBに騙されて、A所有の土地をBに売却してしまった場合、Aはあとで、詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができます。
上記取消権は、①追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または、②詐欺による意思表示をした時から20年を経過したとき時効によって消滅します(民法126条)。
第三者から詐欺を受けた場合
第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り(悪意)、又は知ることができた(有過失)ときに限り、詐欺を受けた者は、その意思表示を取り消すことができます(民法96条2項)。
例えば、Aが、第三者Cから詐欺を受け、A所有の土地をBに売却した場合、Bが悪意もしくは有過失の場合、AはBに対して詐欺取消しを主張できます。つまり、AはBから土地を取り戻すことができます。
逆にBが善意無過失であれば、AはBから詐欺を理由に土地を取り戻すことができません。
詐欺取消し前の第三者との関係
例えば、AがBに騙されて、A所有の土地をBに売却してしまった。その後、Aが詐欺取消しをする前に、Bが第三者Cに土地を売却してしまった。この場合、Aは土地を取り戻すことができるか?
第三者Cが、詐欺の事実について善意無過失であれば第三者Cが保護され、悪意または有過失の場合、Cは保護されず、Aは詐欺取消しをCに主張できます。
「詐欺取消し前の第三者」と「強迫取消し前の第三者」の違い
Aが誰かから詐欺を受けて、Bに甲土地を売却しました。「Aが詐欺を理由に取消す前」に、Bは第三者Cに売却しました(Cは取消し前の第三者)。その後、Aは詐欺を理由にBに取消しの意思表示をしました。
この場合、AとCのどちらを保護するだろうか?(どちらが勝つか?)
詐欺取消前の第三者については、第三者が善意無過失かそれ以外かで保護すべき人を決めます。
第三者Cが、詐欺について善意無過失であればCが保護され、Cがそれ以外(悪意or有過失)であればAが保護されます。
「Aが詐欺を受けていたことを知らない第三者C」と「騙されたA」とを比較すれば、何も知らないCの方を保護すべきだというという理由から善意の第三者を保護しています。詐欺を受けていたことを知っていたのであれば保護する必要はないので、その場合は詐欺を受けたAを保護します。
注)第三者Cは善意無過失でありさえすれば、たとえ登記がなくても、保護される!
一方、強迫による取消し前の第三者では、強迫を受けたAが保護されます。つまり、第三者が善意無過失であっても、悪意や有過失であっても、第三者は保護されません。これは、騙された人と異なり、強迫を受けた者に落ち度はないから、より手厚く保護しているのです。
参考条文
(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(取消権の期間の制限)
第126条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
