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令和6年・2024|問38|会社法

監査等委員会設置会社の取締役の報酬等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 取締役の報酬等に関する事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
  2. 監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
  3. 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
  4. 監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、株主総会で決議された取締役の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の多数決によって定める。
  5. 監査等委員である取締役を除く取締役の個人別の報酬等の内容が定款または株主総会の決議により定められている場合を除き、当該取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を取締役会で決定しなければならない。

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【答え】:4
【解説】

1.取締役の報酬等に関する事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。

1・・・正しい

監査等委員会設置会社においては、取締役の報酬等(報酬、賞与、退職慰労金など)を決定する場合、
以下のように 取締役を2つの区分に分けて定める必要があります。

  1. 監査等委員である取締役(監査等委員会のメンバー)
  2. それ以外の取締役(業務執行を行う取締役など)

これは、監査等委員である取締役が、会社の監督機能を担う立場にあるため、
報酬の内容や決定方法についても、明確に分けることが求められるためです。

具体的には、会社法361条2項において、

監査等委員である取締役と、それ以外の取締役の報酬等の決定は区別して定めなければならない

と規定されています。

2.監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。

2・・・正しい

監査等委員である取締役は、自身の報酬等(報酬・賞与・退職慰労金など)について、株主総会で意見を述べることができます

これは、会社法361条5項に明記されています。

この制度は、監査等委員が会社の業務執行を監督する立場にあることを踏まえ、その独立性と中立性を確保するために設けられています。

周辺知識

このような意見陳述制度は、報酬等だけでなく、以下の場面にも及びます。

監査等委員でない取締役の選任・解任・辞任に関しても、
監査等委員会が選定した監査等委員が、株主総会で監査等委員会の意見を述べることができる(会社法342条の2第4項)

このように、経営監視機関としての監査等委員会の機能を強化する仕組みが、制度的に整備されています。

3.監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。

3・・・正しい

会社法361条6項により、監査等委員会があらかじめ選定した監査等委員は、
株主総会において、監査等委員でない取締役(=業務執行を行う取締役など)の報酬等に関する議案に対し、
監査等委員会としての意見を述べることができます

これは、監査等委員会設置会社において、取締役の報酬等に対しても監督機能を発揮できるようにするための制度です。

4.監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、株主総会で決議された取締役の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の多数決によって定める。

4・・・誤り

本肢は、「監査等委員である取締役の多数決によって定める」という部分が誤りです。

実際には、会社法361条3項により、
監査等委員である各取締役の報酬等について、定款や株主総会の決議で個別に定めがない場合は、監査等委員間の「協議」により決定するとされています。

なぜ「協議」なのか?

監査等委員は会社の監督機能を担っており、経営から独立した立場にあります。
そのため、一般の取締役のような多数決による決定ではなく、
話し合い(協議)による合意形成が求められています。

この仕組みによって、監査等委員としての独立性・中立性が確保されるのです。

5.監査等委員である取締役を除く取締役の個人別の報酬等の内容が定款または株主総会の決議により定められている場合を除き、当該取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を取締役会で決定しなければならない。

5・・・正しい

会社法361条7項により、監査等委員でない取締役の個人別の報酬等の内容については、以下のように定められています。

定款または株主総会の決議により個別に定められていない場合  → その報酬等をどう決めるかという「決定方針」を、取締役会で定めなければならないとされています。

この方針の策定は、取締役の報酬が「お手盛り」にならないようにし、ガバナンス(企業統治)を強化する目的で導入されています。

関連ポイント

監査等委員である取締役は、この取締役会に出席することができます(会社法399条の2第2項)。そのため、監査等委員が、報酬決定のプロセスを監視する役割も担うことになります。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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