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平成30年・2018|問33|民法:不法行為

改正民法に対応済
Aに雇われているBの運転する車が、Aの事業の執行中に、Cの車と衝突して歩行者Dを負傷させた場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。なお、Aには使用者責任、BおよびCには共同不法行為責任が成立するものとする。

  1. AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、Bに故意または重大な過失があったときに限ってBに対して求償することができる。
  2. AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってCに対して求償することができる。
  3. CがDに対して損害を全額賠償した場合、Cは、Bに対してはB・C間の過失の割合によるBの負担部分について求償することができるが、共同不法行為者でないAに対しては求償することができない。
  4. Cにも使用者Eがおり、その事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、AとEがそれぞれ指揮監督するBとCの過失の割合によるCの負担部分についてEに対して求償することができる。
  5. BがAのほかFの指揮監督にも服しており、BがAとFの事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってFに対して求償することができる。

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改正民法に対応済
【答え】:4

【解説】

1.AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、Bに故意または重大な過失があったときに限ってBに対して求償することができる。

1・・・妥当でない

●使用者が賠償した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上「相当と認められる限度」で従業員に求償できる

上図では、質問内容に関係のないCは省略しています。そして、使用者Aが被害者Dに損害賠償金を支払った場合(=Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合)、使用者Aは被用者B(加害者)に対して求償することができますが、使用者が被用者に無制限に求償することはできず、判例では、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、使用者Aは被用者Bに対して求償することができるとしています。

被用者Bに故意または重大な過失があったときに限らず、賠償した使用者Aは、Bに求償できます。

※ 「相当と認められる限度」のイメージとしては、使用者Aの管理がしっかりしていないことで不法行為(例えば、過失による事故)が生じた場合は、従業員Bに対して求償できる金額は小さくなり、逆に従業員個人Bの責任が大きい場合は、従業員Bに対して求償できる額は大きくなるといった感じです。

【関連ポイント】
もし、被用者Bが賠償した場合、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」、被用者Bは、使用者Aに対して求償することができる(賠償した者が使用者Aであっても被用者Bであっても、考え方は同じということ)

2.AがDに対して損害を全額賠償した場合、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってCに対して求償することができる。

2・・・妥当でない

●使用者Aが「自己の負担部分を超えて」賠償した場合、その超える部分に対し、他の使用者Cに対し求償することができる

判例によると、「共同不法行為者たる被用者B及び使用者A、そして他の共同不法行為者Cは、被害者Dに対して、各自、被害者Dが蒙った全損害を賠賞する義務を負うものというべきであり、また、当該債務の弁済をした使用者Aは、他の共同不法行為者Cに対し、他の共同不法行為者Cと被用者Bとの過失の割合にしたがって定められるべき他の共同不法行為者Cの負担部分について求償権を行使することができるものと解する」としています(最判昭41.11.18)。

具体例

被害額100万円、BとCの過失割合が3:7だったとします。この場合、Bの負担部分は30万円、Cの負担部分は70万円です。ここで、使用者Aが100万円を弁済した場合、AはCに対して70万円を求償できます。

3.CがDに対して損害を全額賠償した場合、Cは、Bに対してはB・C間の過失の割合によるBの負担部分について求償することができるが、共同不法行為者でないAに対しては求償することができない。

3・・・妥当でない

●共同不法行為を行った者が、過失割合で決められた自分の負担部分を超えて賠償したときは、他の共同不法行為者Bの負担部分(Cの負担部分を超えた部分)について、使用者に対して求償できる

本問では、加害者Cが全額賠償(負担部分を超えて賠償)しています。この場合、Cは、被用者Bに対しては、過失割合に応じて求償でき、使用者Aに対しては、自己の負担部分を超えた部分について求償できます。よって「共同不法行為者でないAに対しては求償することができない」は誤りです。

4.Cにも使用者Eがおり、その事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、AとEがそれぞれ指揮監督するBとCの過失の割合によるCの負担部分についてEに対して求償することができる。

4・・・妥当

●使用者Aが「自己の負担部分を超えて」賠償した場合、その超える部分に対し、他の使用者Eに対し求償することができる

状況は上図の通りです。例えば、BとCの加害割合を6:4として10万円の損害賠償債務を負ったとすると、B及び使用者Aの負担部分が6万円、C及び使用者Eの負担部分が4万円となります。もちろん被害者DはAにもBにも、また、CにもEにも10万円を請求できます。ここで、Aが10万円を被害者Dに賠償した場合、4万円(A・Bの負担部分6万円を超える部分)までEに対して求償することができます。

5.BがAのほかFの指揮監督にも服しており、BがAとFの事業の執行中に起きた衝突事故であった場合に、AがDに対して損害を全額賠償したときは、Aは、損害の公平な分担という見地から均等の割合に限ってFに対して求償することができる。

5・・・妥当でない

●使用者が複数いる場合 → 加害者の過失割合に従って定められる負担部分のうち、使用者の責任の割合に応じて債務を負担し、自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対し、求償することができる。

具体例 BC間の過失割合が6:4でBが悪いとします。そして、AとFについて1:2の割合で責任がある(Fの方が責任が重い)とします。ここで、10万円の損害賠償債務を負ったとして、Aが10万円を賠償した場合、「加害者Bの過失割合にしたがって定められる負担部分」は6万円です。そして、AとFの責任の割合は1:2なので、この6万円のうち、Aの負担部分は2万円です。

そのため、2万円を超える部分=4万円をAはFに求償できます。

本問は「損害の公平な分担という見地から均等の割合に限って」が誤りです。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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