https://jukosya.gyosyo.info/?p=2180

平成30年・2018|問35|民法:後見

改正民法に対応済
後見に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。
  2. 未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。
  3. 成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。
  4. 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。
  5. 後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

>解答と解説はこちら


改正民法に対応済
【答え】:5

【解説】

1.未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。

1・・・妥当でない

●未成年後見:①未成年者に対して親権を行う者がないとき、又親権を行う者が管理権を有しないときに開始す

未成年後見人とは、未成年者について親権者がないとき等、この未成年者の監護養育や財産の保護を行うものを言います。そして、未成年後見は、①未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は②親権を行う者が管理権を有しないときに開始します(民法838条)。

よって「未成年後見は、①未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する」というのは誤りです。

②親権を行う者が管理権を有しないときも未成年後見は開始します。

「親権」とは、未成年者の子どもを監護・養育し、その財産を管理し、その子どもの代理人として法律行為をする権利や義務のことをいいます。

「親権を行う者がないとき」とは、①親権者が亡くなったとき、②親権者が失踪宣告を受けたとき、

「親権を行う者が管理権を有しないとき」とは、「親権喪失の審判を受けたとき」などです。
例えば、親権者が、子の財産を使い込んでいる場合や親権者が制限行為能力者の場合に、管理権を喪失します。

2.未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。

2・・・妥当でない

●未成年後見人 → 法人もなることができる

後見人には本人の親族や弁護士、司法書士などのイチ個人がなることが多いのですが、福祉協議会・福祉公社や司法書士法人・弁護士法人などの法人も後見人になることが可能です(民法840条3項)。

法人が成年後見人になることのメリットは、①個人ではなく、組織として動くことができるので、効率よく後見人の仕事を進めていくことが可能です。また、②個人の場合だと、その個人の健康上の理由などで責任を果たせなくなると職務が滞ってしまい、後見を受けている人(被後見人)の生活に支障が出ることもあります。法人が未成年後見人であれば、それを防ぐことが可能です。

3.成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。

3・・・妥当でない

●事理を弁識する能力を欠く常況にある → 後見開始

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができます(民法7条)。「事理を弁識する能力を欠く常況にある」とは、常に、物事の判断ができない状況にあるということです。

4.成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。

4・・・妥当でない

●法定監督義務者は、原則、責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う
●成年後見人であるというだけでは、法定監督義務者には当たらない

■ 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法858条)。つまり、成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務があるので、前半部分は正しいです。

■ 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について、当該未成年者は賠償責任を負いません(712条)。そして、当該未成年者が責任を負わない場合、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(法定監督義務者)は、原則、その責任無能力者(未成年者)が第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(714条)。そして、判例では、成年後見人であるというだけでは、法定監督義務者には当たらないとしています。つまり、「当然に法定の監督義務者として責任を負う」という記述は誤りです

5.後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

5・・・妥当

●後見監督人 → 後見人の配偶者」、「直系血族」及び「兄弟姉妹」は、後見監督人となることができない

後見監督人の仕事は、「後見人の事務を監督すること」、「後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること」、「急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること」、「後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること」です(民法851条)。
後見人に近しい者が後見監督人であると、公平に後見人を監督できないかのうせいがあるので、後見監督人になることはできないことになっています。
したがって、妥当である。


平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・その他
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 行政法の判例 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。