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平成29年・2017|問17|行政事件訴訟法

許認可の申請拒否処分の取消訴訟に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 申請拒否処分の取消訴訟には、申請された許認可を命ずることを求める義務付け訴訟を併合提起できるが、当該申請拒否処分の取消訴訟のみを単独で提起することも許される。
  2. 申請拒否処分の取消訴訟を提起した者は、終局判決の確定まで、申請された許認可の効果を仮に発生させるため、当該申請拒否処分の効力の停止を申し立てることができる。
  3. 申請拒否処分の取消訴訟については、出訴期間の制限はなく、申請を拒否された者は、申請された許認可がなされない限り、当該申請拒否処分の取消訴訟を提起できる。
  4. 申請拒否処分の取消訴訟の係属中に当該申請拒否処分が職権で取り消され、許認可がなされた場合には、当該取消訴訟は訴えの利益を失い、請求は棄却されることとなる。
  5. 申請拒否処分の取消訴訟において、当該申請拒否処分の取消しの判決が確定した場合には、その判決の理由のいかんにかかわらず、処分庁は、再度、申請拒否処分をすることは許されない。

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【答え】:1

【解説】

1.申請拒否処分の取消訴訟には、申請された許認可を命ずることを求める義務付け訴訟を併合提起できるが、当該申請拒否処分の取消訴訟のみを単独で提起することも許される。
1・・・正しい

●申請型義務付けの訴え → 「取消訴訟」又は「無効等確認の訴え」と併合提起しなければならない

申請型義務付けの訴えを提起するときは、「取消訴訟又は無効等確認の訴え」をその義務付けの訴えに併合して(併せて)提起しなければなりません(行政事件訴訟法37条の3の3項2号)。これは、義務付け訴訟を行う場合、併合提起してください!ということで、申請型義務付け訴訟を単独で提起することはできないことを意味します。
一方、単独で取消訴訟を提起することは可能です(行政事件訴訟法3条2項)。

具体例 Aが甲県の建築主事に対して、建築確認の申請をした。しかし、建築主事は拒否処分をした。

①拒否処分のみ取り消してほしい場合は、取消訴訟を単独で提起すればよいです。

②一方、 建築確認を認めてください!と義務付けまで求める場合は、取消訴訟+申請型義務付け訴訟を提起する必要があります。

2.申請拒否処分の取消訴訟を提起した者は、終局判決の確定まで、申請された許認可の効果を仮に発生させるため、当該申請拒否処分の効力の停止を申し立てることができる。
2・・・誤り

●取消訴訟における執行停止 → 「処分の効力」、「処分の執行又は手続の続行」を「停止」させるもの

取消訴訟が提起された場合、仮の救済手段として、「執行停止の制度」があります。

①処分の取消しの訴え(処分の取消訴訟の提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる②重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより(=原告の申立てが必要)、決定をもって、「処分の効力」、「処分の執行又は手続の続行」の全部又は一部の停止(「執行停止)をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
あくまでも、取消訴訟における執行停止は、「処分の効力」、「処分の執行又は手続の続行」を「停止」させるものです。
「許認可の効果を仮に発生させる」ことはできません。

3.申請拒否処分の取消訴訟については、出訴期間の制限はなく、申請を拒否された者は、申請された許認可がなされない限り、当該申請拒否処分の取消訴訟を提起できる。
3・・・誤り

●取消訴訟の出訴期間 : 「①処分または裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき」または「②処分または裁決の日から1年を経過したとき」

取消訴訟を提起できなくなる(不適法として却下判決が下される)
取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは、原則、提起することができません(行政事件訴訟法14条)。したがって、「出訴期間の制限なく」という記述は誤りです。

4.申請拒否処分の取消訴訟の係属中に当該申請拒否処分が職権で取り消され、許認可がなされた場合には、当該取消訴訟は訴えの利益を失い、請求は棄却されることとなる。
4・・・誤り

●拒否処分の取消訴訟中に、拒否処分自体取り消されて、許認可された → 訴えの利益を失う

「拒否処分の取消訴訟の係属中に当該申請拒否処分が職権で取り消され、許認可がなされた場合」とは、申請をして、始めは拒否されたが、その後、拒否は取り消され、許可された状況です。つまり、申請は認められたので、「拒否処分の取消訴訟」を行う利益がありません。つまり、当該訴訟は訴えの利益を失います。よって、訴訟要件を満たさないため「不適法」となり却下されます。

※ 不適法→却下、 理由がない→棄却

5.申請拒否処分の取消訴訟において、当該申請拒否処分の取消しの判決が確定した場合には、その判決の理由のいかんにかかわらず、処分庁は、再度、申請拒否処分をすることは許されない。
5・・・誤り

●取消判決の効力 → 拘束力 → 「同一事情」の下では「同一理由」に基づく「同一処分」ができなくなる

処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)。
つまり、取消判決があると、行政庁には、その判決の趣旨に従って行動しなければなりません。これは、同一事情の下では同一理由に基づく同一処分をすることができなくなることを指し、の理由によって、同一処分をすることはできます
したがって、本問の場合、「別理由」に基づいて、処分庁は、再度、申請拒否処分をすることは許されるので誤りです。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

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