改正民法に対応済
自然人A(以下「A」という。)が団体B(以下「B」という。)に所属している場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。
イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。
ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。
エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。
オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。
- ア・ウ
- ア・エ
- イ・ウ
- イ・オ
- エ・オ
【解説】
自然人Aが団体Bに所属している。
ア.Bが法人である場合に、AがBの理事として第三者と法律行為をするときは、Aは、Bの代表としてではなく、Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う。
理事は、一般社団法人を代表します(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律77条)。
つまり、 理事Aは、法人Bの代表として法律行為を行います。「法人Bの構成員全員の代理人として当該法律行為を行う」は誤りです。
自然人Aが団体Bに所属している。
イ.Bが権利能力のない社団である場合には、Bの財産は、Bを構成するAら総社員の総有に属する。
権利能力がなければ当然権利義務の帰属主体にはなれません(法人のように人格を持たない)。どういうことかというと、不動産を購入して登記をしようとしても権利能力がないと、登記ができません。そのため、権利能力なき社団の場合、「代表者の個人名義」や「構成員全員の共有名義」で登記をしたりします。
そして、権利能力なき社団の財産は、実質的には社団を構成する総社員の総有に属するものである」とされています。
※1 「共有」の持分については、持分を自由に処分(譲渡)することができ、目的物の分割請求もできることから「具体的」と記しています。
※2 「合有」の持分については、各人が持分を持つのですが、共有とは異なり、持分を自由に処分(譲渡)することができず、清算前に、目的物の分割請求もできないことから「持分を潜在的には有する」と言います。
自然人Aが団体Bに所属している。
ウ.Bが組合である場合には、Aは、いつでも組合財産についてAの共有持分に応じた分割を請求することができる。
●目的物(財産)の分割請求もできない
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属します(民法668条)。そして、組合における財産の共有は「合有」を意味します。つまり、「狭義の共有」とは異なり、①持分を自由に処分(譲渡)することができません。また、財産の分割請求もできません。
自然人Aが団体Bに所属している。
エ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合は、Aは、組合財産から当然に報酬を得ることができる。
組合の業務を執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することができません(民法671条、648条)。
自然人Aが団体Bに所属している。
オ.Bが組合であり、Aが組合の業務を執行する組合員である場合に、組合契約によりAの業務執行権限を制限しても、組合は、善意無過失の第三者には対抗できない。
組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(民法670条1項) 。
また、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することもできます(2項)。そして、この委任を受けたものを「業務執行者」と言います。本問の「Aが業務執行者」です。そして、組合に業務執行者がいる場合は、業務執行者のみが組合員を代理することができる(670条の2)。
そして、判例では、この業務執行者の代理権限について、制限を加えても、善意無過失の第三者には対抗できないとしています。
【具体例】
例えば、「業務執行者Aは、10万円以上の取引はできない」と組合の規約で定めていたとします。
これが、「組合規約等で内部的に業務執行者の代理権限を制限」している状況です。
そして、第三者は、業務執行者A(組合)と取引した者Bです!
この場合、第三者Bが上記規約について、過失なく知らない場合(善意・無過失)、
第三者Bは、組合に対して対抗できるので、業務執行者A(組合)との取引の有効を主張することができます!
平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 人権 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 内閣 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 財政 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法の概念 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 無効な行政行為 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 執行罰 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・社会 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 一般知識・政治 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・情報通信 |
| 問25 | 行政法の判例 | 問55 | 一般知識・その他 |
| 問26 | 行政不服審査法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:総則 | 問60 | 著作権の関係上省略 |

