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平成29年・2017|問30|民法・時効

改正民法に対応済
Aは、甲不動産をその占有者Bから購入し引渡しを受けていたが、実は甲不動産はC所有の不動産であった。BおよびAの占有の態様および期間に関する次の場合のうち、民法の規定および判例に照らし、Aが、自己の占有、または自己の占有にBの占有を併せた占有を主張しても甲不動産を時効取得できないものはどれか。

  1. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
  2. Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
  3. Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
  4. Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
  5. Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

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改正民法に対応済
【答え】:3

【解説】

 

1.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で10年間
1・・・時効取得できる
●時効取得できる
●善意無過失で10年間占有 → 時効取得できる

【前提知識】

取得時効とは、他人の物(例:土地)であるにも関わらず、その物を自分の物と信じて、一定期間使用していると、本当に自分の物になってしまう制度のことです。そして、取得時効を主張するには(他の物を自分の物にするには)3つの要件を満たす必要があります(左表参照)。そして、③の「一定期間」とは、右表の内容です。ポイントは占有開始の時点で、善意無過失なのか、そうでないのかによって、必要な期間が変わるということです。善意無過失で占有を始めた者が、後になって、悪意に変わっても(つまり、他人の物だと気づいても)、あくまでも、占有開始の時点で判断するため、10年で取得時効が完成します。本問の解説 

問題文では、「占有者Bは悪意で5年間占有」し、「購入者Aは善意無過失で10年間占有」しています。

Aを基準に考えると、占有開始時に「善意無過失」であり、10年間占有しているため③の要件を満たしています。

また、①②の要件は問題文の内容から要件を満たします。

よって、Aは時効取得できます。

2.Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
2・・・時効取得できる
●「占有開始時の状態(善意・悪意)」と「占有期間」は引き継ぐことができる
問題文では「Bが悪意で18年間占有」し、その後「Aが善意無過失で2年間占有」
しています。そして、「占有開始の状態」と「占有期間」は、承継することができます。
※ 占有開始時の状態とは、
「占有している物が他人物であることを知っているかどうか?(善意 or 悪意)、また、知らない場合、過失があるかどうか(有過失 or 無過失)」を指します。
つまり、Aは、Bの悪意で18年間占有したことを引き継ぐことができます。これを引き継ぐと、Aは悪意で占有を開始し、18年+2年=20年間占有を継続したことになります。よって、Aは善意無過失でなく(悪意で)20年間占有し続けたことになるので、時効取得できます。
3.Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
3・・・時効取得できない
 ●「占有開始時の状態(善意・悪意)」と「占有期間」は引き継ぐことができる
問題文では「Bが悪意で5年間占有」し、その後「Aが善意無過失で5年間占有」しています。そして、「占有開始の状態」と「占有期間」は、承継することができます。選択肢2と考え方は同じです。①Aを基準に考えると(占有開始の時期をAと考えると)、善意無過失なので、10年間の占有が必要ですが、5年しか占有していないので、取得時効の要件を満たしていません。②次に、Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、占有の状態を承継するので「悪意」、占有期間を承継するので、5+5=10年しか占有していません。よって、①でも②でも取得時効の要件を満たさないので、Aは時効取得できません。
4.Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間

4・・・時効取得できる

●善意無過失で10年間占有 → 時効取得できる

選択肢3と同じように考えます。

①Aを基準に考えると、悪意で3年間しか占有していないので、時効取得の要件を満たさないですが、②Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、Bの占有の状態を承継するので「善意無過失」、占有期間を承継するので、7+3=10年占有していることになります。善意無過失で10年間占有を継続しているので、Aは時効取得できます。

5.Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間

5・・・時効取得できる

●占有開始時の状態で判断する

問題文の状況としては、図の通りです。ポイントは占有開始の時点で、善意無過失なのか、そうでないのかによって、必要な期間が変わるということです。①Aを基準に考えると(占有開始の時期をAと考えると)、
善意無過失なので、10年間の占有が必要ですが、3+3=6年しか占有していないので、取得時効の要件を満たしていません。②次に、Bを基準に考えると(占有開始の時期をBと考えると)、占有の状態を承継するので「善意無過失」、占有期間を承継するので、3+2+3+3=11年間占有しています。よって、②の場合に、取得時効の要件を満たるので、Aは時効取得できます。


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 一般知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

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