次の記述のうち、全ての株式会社に共通する内容として、会社法の規定に照らし、誤っているものの組合せはどれか。
ア.株主の責任の上限は、その有する株式の引受価額である。
イ.株主は、その有する株式を譲渡することができる。
ウ.募集株式の発行に係る募集事項は、株主総会の決議により決定する。
エ.株主総会は、その決議によって取締役を1人以上選任する。
オ.株式会社の最低資本金は、300万円である。
- ア・イ
- イ・ウ
- ウ・エ
- ウ・オ
- エ・オ
【解説】
●株主の責任 → 株式の引受価額が限度(出資した分を限度に責任を負う)株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とします(104条)。つまり、株主(会社の出資者)は、株主となる際に、会社に対して「出資する義務」を負うだけで、会社が会社債権者に対して負っている債務について、株主は弁済する義務を負いません。これを「有限責任」と言います。株式会社はすべての株主が有限責任です。よって、本問は正しいです。
■持分会社については、無限責任の者(社員)もいます。無限責任社員は、会社債権者に対して債務の全額を負います。
●株式 → 譲渡自由の原則株主は、その有する株式を譲渡することができます(会社法127条)。株の売買をしている人をイメージしたら、答えを導けると思います。また、投下資本(出資したお金)の回収は、株式の譲渡(売却)により行えます。
※ 譲渡制限がついている場合は、譲渡の際に会社の承認が必要となる
●募集株式の発行に係る募集事項の決定 → 株主総会の特別決議(公開会社は取締役会決議)募集株式の発行(株主割当or第三者割当)にかかる募集事項の決定は、株主総会の決議(特別決議)によらなければなりません(会社法199条2項)。ただし、公開会社においては、上記決定を「取締役会の決議」で行います(201条1項)。つまり、
募集株式の発行にかかる募集事項の決定は、
- 非公開会社の場合、株主総会の特別決議で行い、
- 公開会社の場合、取締役会の決議で行う
ということです。よって、公開会社の場合(下表の真ん中の行)は、株主総会決議で行わないので誤りです。
- 公開会社における募集株式の募集事項は、株主に対しては通知すること。第三者に対しては公告でよい。
【株主割当とは】 すべての株主にその持株割合に応じて株式を割り当てること
【第三者割当とは】 特定の者(既存株主でもよい)を引受人として募集株式を発行すること
【関連】 新株予約権付き社債の発行について無効を主張する場合、「新株予約権の発行」の無効の訴えをしなければならない。「社債発行」の無効の訴えではない!
●取締役 → 株主総会決議で決める
株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければなりません(326条1項)
そして「役員(取締役、会計参与及び監査役)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任します(329条1項)
したがって、「株主総会は、株主総会の決議によって取締役を1人以上選任する」は正しいです。
株式会社では「所有」と「経営」は分離されており、会社の「所有者」である「株主(株主総会)」が、経営者(取締役)を選ぶ形になっています。
株式会社の最低資本金が300万円であるという条文はありません。
2006年5月に新会社法が施行されて、最低資本金制度はなくなりました。
そのため現在では、株式会社の資本金は、0円でも法律上は可能です。
したがって本肢は誤り。
平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 人権 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 内閣 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 財政 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法の概念 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 無効な行政行為 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 執行罰 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・社会 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 一般知識・政治 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・情報通信 |
| 問25 | 行政法の判例 | 問55 | 一般知識・その他 |
| 問26 | 行政不服審査法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:総則 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


