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平成28年・2016|問30|民法・不動産先取特権

改正民法に対応済

不動産先取特権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 不動産の保存の先取特権は、保存行為を完了後、直ちに登記をしたときはその効力が保存され、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先する。
  2. 不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
  3. 不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に、不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記したときでも、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先しない。
  4. 債権者が不動産先取特権の登記をした後、債務者がその不動産を第三者に売却した場合、不動産先取特権者は、当該第三取得者に対して先取特権を行使することができる。
  5. 同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。

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改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

1.不動産の保存の先取特権は、保存行為を完了後、直ちに登記をしたときはその効力が保存され、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先する。

1・・・正しい

●不動産保存の先取特権 → 保存行為が完了した後直ちに登記をすることで対抗力を持つ
●「不動産保存の先取特権」は登記することで先順位の抵当権にも優先する

不動産の保存の先取特権の効力を保存(対抗)するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければなりません(民法337条)。つまり、保存行為完了後、直ちに不動産保存の先取特権を登記することで、対抗要件を備えます。

そして、「不動産保存の先取特権」については、 「抵当権」が先に登記されていても、後に登記した「不動産保存の先取特権」が勝ちますよって、本肢は正しいです。

【関連ポイント】 不動産工事の先取特権も同様、 「抵当権」が先に登記されていても、後に登記した「不動産工事先取特権」が勝ちます

2.不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。

2・・・正しい

●不動産工事の先取特権 → 工事によって生じた現存する増価額分についてのみ存在する

不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在します(民法327条1項)。

そして、不動産工事の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在します(2項)。よって、本肢は正しいです。

【具体例】 価格が1000万円の山林があり、造成工事を行うことにより、価格が1800万円となった場合、増価額は800万円となります。

【関連ポイント】 不動産工事の先取特権の効力を保存(対抗)するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければなりません。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しません(338条)。つまり、登記をした予算額が先取特権の上限となり、また、327条2項から工事によって増価額も上限となります。
言い換えると、 「予算額」と「増加額分」の小さい方が、先取特権の範囲となります
例えば、上記具体例において、予算額を700万円で登記をしていたら、700万円までが先取特権の範囲となり、予算額を900万円と登記していれば、800万円が先取特権の範囲となります。

3.不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に、不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記したときでも、同一不動産上に登記された既存の抵当権に優先しない。

3・・・正しい

●不動産売買の先取特権 → 売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記することで対抗力を持つ
●「不動産売買の先取特権」と「抵当権」の優劣 → 登記の先後によって決まる

不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければなりません(民法340条)。

また、「不動産売買の先取特権」と「抵当権」の優劣は、登記の先後によって決まるので、先に登記をした方が勝ちます。

よって、「不動産売買の先取特権は、既存の抵当権に優先しない」という記述は正しいです。

4.債権者が不動産先取特権の登記をした後、債務者がその不動産を第三者に売却した場合、不動産先取特権者は、当該第三取得者に対して先取特権を行使することができる。
4・・・正しい
●「不動産先取特権者」と「第三取得者」の優劣 → 登記の先後によって決まる「不動産先取特権者」と「第三取得者」の優劣については、民法に特別な規定はありません。よって、不動産に関する物権の得喪及び変更は先に登記した方が対抗力を持つというルールに従います(民法177条)。
5.同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。

5・・・誤り

●「不動産保存の先取特権」「不動産工事の先取特権」「不動産売買の先取特権」の優劣
●→  ①不動産保存 ②不動産工事 ③不動産売買となる(不動産保存が一番強い)

同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、①不動産保存→②不動産工事→③不動産売買の順序に従います(民法331条)。よって、本肢は誤りです。「不動産保存の先取特権」が優先します。


平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法改正により削除
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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