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平成27年・2015|問27|民法・制限行為能力者

改正民法に対応済

制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:4

【解説】

ア 家庭裁判所が後見開始の審判をするときには、成年被後見人に成年後見人を付するとともに、成年後見人の事務を監督する成年後見監督人を選任しなければならない。

ア・・・誤り

●後見監督人 → 家庭裁判所は必要があると認めるときに選任できる
●必ずしも後見監督人が選任されるわけではない

「後見監督人」とは、①後見人の事務を監督したり、②後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求したり、③急迫の事情がある場合に、必要な処分をしたり、④後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表したりする者です(民法851条)。簡単に言えば、後見人を監督する者です。つまり、被後見人を後見人が保護者として見守り、後見人を後見監督人が監督するということです。

そして、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、「被後見人、その親族若しくは後見人の請求」により又は「職権」で、後見監督人を選任することができます(民法849条)。つまり、必ず後見監督人が必要というわけではありません。必要に応じて家庭裁判所が「請求」または「職権」で選任します。

【具体例】 通常、弁護士などが後見人の場合は、後見監督人までは不要ですが、専門家ではない方が後見人の場合は、後見監督人を選任したりします。

イ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定められている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があったときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。

イ・・・誤り

●被保佐人が「一定の重要な財産上の行為」を行う場合、保佐人の同意が必要

●「一定の重要な財産上の行為」以外でも、家庭裁判所は、請求により、保佐人の同意を得なければならない旨の審判ができる

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」である者で、家庭裁判所が保佐開始の審判をしたものです(民法11条)。そして、被保佐人は、原則、単独有効に契約することができます。ただし、「一定の重要な財産上の行為」については、保佐人の同意を得なければ行うことができません(13条)。(下表参照)

また、 「一定の重要な財産上の行為」以外でも家庭裁判所は、本人、配偶者、後見人等の請求により、保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、被保佐人よりも症状の重い成年被後見人でも単独で行える行為なので、同意権付与の審判はできません(13条2項) 。

よって、「被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合にその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない」=「同意の必要な範囲を増やすことができない」というのは誤りです。

ウ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がなければならない。

ウ・・・正しい

●本人以外の者の請求によって代理権付与の審判をするには、本人の同意必要

被保佐人は、軽い認知症の方のイメージで、「一定の重要な財産上の行為」以外の多くの行為を単独で行うことができます。そのため、保佐人に代理権まで与える必要はありません。ただし、場合によっては保佐人に代理権を与える必要があるので、その場合、家庭裁判所は、保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(民法876条の4第1項)。そして、本人以外の者の請求によって上記代理権付与の審判をするには、本人の同意がなければなりません(民法876条の4第2項)。これは本人の意思を尊重するためです。

エ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をすることができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

エ・・・正しい

●被補助人 → 事理弁識能力が不十分な者 かつ 補助開始の審判を受けた者
●「本人以外の者からの請求」により補助開始の審判をする場合、本人の同意が必要

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「不十分である者」で、家庭裁判所が、「本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官」の請求により、補助開始の審判をした者です(民法15条)。イメージとしては、保佐人よりも認知症の症状が軽い方です。そして、「本人以外の者の請求」により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければなりません(2項)。

【理由】 被補助人になりえる方は、ある程度自分自身で物事の判断ができるので、本人の意思を尊重するために、本人の同意が必要としています。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審判を取り消さなければならない。

オ・・・誤り

●別の審判を行う場合、前の審判の取消しが必要

被保佐人・被補助人が被後見人となるには、「保佐開始又は補助開始の審判」の取消しが必要で

成年被後見人が被保佐人にとなるには、「後見開始の審判」の取消しが必要です(民法19条)。

【理由】 複数の制度を重複させないためです。もし、重複していたら、成年被後見人なのか、被保佐人なのか、被補助人なのか分からなくなり、法律の適用ができなくなるからです。


平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 外国人の人権 問33 民法:債権
問4 基本的人権 問34 民法:債権
問5 憲法9条 問35 民法:親族
問6 司法の限界 問36 商法
問7 財政 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政立法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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