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平成26年・2014|問32|民法・債務引受

改正民法に対応済

債務引受および契約上の地位の譲渡(契約譲渡)に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 免責的債務引受は、債権者と引受人のみの契約でなすことはできず、債務者(原債務者)を含む三者間の契約でしなければならない。

イ 併存的(重畳的)債務引受は、債務者(原債務者)の意思に反しても、債権者と引受人のみの契約でなすことができる。

ウ 併存的(重畳的)債務引受があった場合、別段の意思表示がないときは、債務者(原債務者)と引受人は、債権者に対し、それぞれ等しい割合で分割債務を負う。

エ 売主の地位や買主の地位の譲渡は、当該売買契約の相手方の承諾がないときは、その相手方に対して効力を生じない。

オ 賃貸借の目的となっている不動産の所有者がその所有権とともに賃貸人の地位を他に譲渡することは、賃貸人の義務の移転を伴うから、賃借人の承諾を必要とし、新旧所有者間の契約ですることはできない。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

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改正民法に対応済

【答え】:4

>>債務引受の解説はこちら

【解説】

ア 免責的債務引受は、債権者と引受人のみの契約でなすことはできず、債務者(原債務者)を含む三者間の契約でしなければならない。

ア・・・妥当ではない

●免責的債務引受の契約の仕方 : (1)債権者Aと引受人Cとの契約 or (2)債務者Bと引受人Cとの契約+債権者Aが「引受人Cとなる者に対して承諾

「免責的債務引受」は、(1)債権者Aと引受人となる者Cとの契約によってすることができます(民法472条2項)。また、免責的債務引受は、(2)債務者Bと引受人となる者Cが契約をし、債権者Aが引受人Cとなる者に対して承諾をすることによってもすることができます(3項)。よって、「債権者と引受人のみの契約でなすことはできず」は誤りです。(1)のとおりできます。

■「免責的債務引受」は、「債務者がBからCに交替する」、「債務の譲渡」「債務が移転する」というイメージです。例えば、債権者Aが債務者Bに100万円を貸したとします。その後、債務者Bが負う「100万円を支払う債務」を、引受人Cがそのまま引き継ぎ、債務者Bが債務を免れるのが「免責的債務引受」です。

 

イ 併存的(重畳的)債務引受は、債務者(原債務者)の意思に反しても、債権者と引受人のみの契約でなすことができる。

イ・・・妥当

●併存的債務引受の契約の仕方 : (1)債権者Aと引受人Cとの契約 or (2)債務者Bと引受人Cとの契約+債権者Aが「引受人Cとなる者に対して承諾

「併存的債務引受」は、(1)債権者Aと引受人となる者Cとの契約によってすることができます(民法470条2項)。また、併存的債務引受は、(2)債務者Bと引受人となる者Cとの契約によってもすることができます(3項)。この場合において、併存的債務引受は、債権者Aが引受人となる者Cに対して承諾をした時に、その効力を生ずる。

(3項)。(1)の通り、債務者Bの意思に関係なく、債権者と引受人のみの契約でなすことができる」は正しいです。

■「併存的債務引受」とは、例えば、債権者Aが債務者Bに100万円を貸したとします。その後、引受人C(第三者)が、債務者Bが負う「100万円を支払う債務」をBと一緒に責任を負う(連帯債務となる)ことを言います。結果として、債権者A、連帯債務者B、連帯債務者Cという状況になり、債務者Bと引受人Cの連帯債務となります。
「併存的債務引受」はどのように契約すればよいかを解説します。下記2パターンあります。

ウ 併存的(重畳的)債務引受があった場合、別段の意思表示がないときは、債務者(原債務者)と引受人は、債権者に対し、それぞれ等しい割合で分割債務を負う。

ウ・・・妥当ではない

●併存的債務引受 → 連帯債務となる(分割債務ではない)

併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担します(民法470条)。つまり、引受人と債務者は連帯債務を負います。よって、分割債務ではありません。

分割債務とは、例えば、100万円の債務を、50万円ずつ負担するといった内容です。

エ 売主の地位や買主の地位の譲渡は、当該売買契約の相手方の承諾がないときは、その相手方に対して効力を生じない。

エ・・・妥当

●買主の地位を譲渡する場合、売主の承諾が必要
●売主の地位を譲渡する場合、買主の承諾が必要

前提知識 「契約の当事者の一方」が「第三者」との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転します(539条の2)。これを「契約上の地位の移転」と言います。

具体例① AB間の売買契約で、売主Aが第三者Cに「売主の地位」を譲渡した場合、買主Bが承諾すると、売主Aの地位が第三者Cに移るので、BC間の売買契約(売主C・買主B)となります。

具体例② AB間の売買契約で、買主Bが第三者Cに「買主の地位」を譲渡した場合、売主Aが承諾すると、買主Bの地位が第三者Cに移るので、AC間の売買契約(売主A・買主C)となります。

契約の相手方の承諾が必要な理由 たくさんの者に、地位を移転した場合、誰が契約の当事者になるのかが分からなくなるため、契約相手の承諾を必要としています。

オ 賃貸借の目的となっている不動産の所有者がその所有権とともに賃貸人の地位を他に譲渡することは、賃貸人の義務の移転を伴うから、賃借人の承諾を必要とし、新旧所有者間の契約ですることはできない。

オ・・・妥当ではない

●賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡(=賃貸人の変更) → 賃借人に承諾は不要

●賃借人の地位の譲渡(=賃借人の変更) → 賃貸人承諾は必要

選択肢エの通り、「契約上の地位の移転」には、原則、契約の相手方の承諾が必要です。しかし、不動産の譲渡人が賃貸人であるとき(賃貸人の変更:オーナーチェンジ)は、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができます(民法605条の3)。つまり、賃貸不動産をオーナー(所有者・賃貸人)が売却して、オーナーが変わる場合、賃借人の承諾は不要です。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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