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平成26年・2014|問33|民法・弁済

改正民法に対応済

取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者に対するものに対する弁済等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはいくつあるか。

ア 他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

イ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行がそのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

ウ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。

エ 債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

オ 債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

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改正民法に対応済

【答え】:5

【解説】

ア 他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

ア・・・妥当

●債権者の代理人と称して債権を行使する者= 「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に該当する

●上記の者に善意無過失で弁済した場合、その弁済は有効となる

受領権者以外の者であって、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有します(民法478条)。

具体例 AがBに時計を売った場合、売主Aは代金を受領できる権利を持つので、売主Aが受領権者です。

そして、A以外のCが、代金の受領証書を持って、買主Bのもとにきて、買主Bが、善意無過失で、Cに代金を支払った場合(弁済した場合)、Bの弁済は有効となります。Cは「代金の受領証書を持ってきている」ので「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」と考えられます。

本問 判例では、『債権者の代理人と称して債権を行使する者についても、民法478条の「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」にあたる』としています。つまり、銀行が、この代理人に善意無過失で払戻しをした場合、この払い戻し(弁済)は有効となります。

イ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行がそのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

イ・・・妥当

●「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に対して、定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しをした → 善意無過失の場合、有効な弁済となる

受領権者以外の者であって、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有します(民法478条)。

前提知識 「定期預金契約」とは、預け入れから一定期間お金を引き出せないことを約束した預金契約(通常、利息は普通預金の利息よりも高く設定されている)です。

そして、「定期預金の期限前払戻特約」とは、上記期限の前でもお金を引き出せる特約(ただし、通常、利息が普通預金の利息になる)を言います。

本問 判例では、「定期預金契約の締結に際し、当該預金の期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約当事者の合意により確定されているときは、右預金の期限前の払戻であっても、民法第478条の適用を受ける」としています。

つまり、「銀行の窓口で本人と称して、他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者」が「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に該当し、銀行がこの者に善意無過失で弁済(払戻し)をした場合、この払戻しは有効となります。

ウ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。

ウ・・・妥当

●銀行Aが、「預金者でない者C」を「預金者B」と誤信して、預金者Bの定期預金を担保として、Cにお金を貸し付けたが、Cからの弁済がないため、当該「貸金債権」と「定期預金債権」を相殺した場合、善意無過失であれば、有効な相殺となる

受領権者以外の者であって、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有します(民法478条)。

具体例 「他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者C」が、銀行Aの窓口で、預金者Bと称して、銀行Aから「Bの定期預金」を担保に融資を受けた。その後、Cからの弁済がなされなかったため、銀行Aが「Aの当該貸金債権」と「Bの定期預金債権」とを相殺した。(銀行は、通帳と届出印を持ってきているので、Bに貸したと思い込んでいる)

【質問内容】 銀行Aが、Cが真の預金者でないことにつき善意・無過失であれば、当該相殺は、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」への弁済の規定(民法478条)の類推適用により有効な相殺となる、〇か×か?

判例 判例では、上記の場合、民法478条の類推適用があるとしています。つまり、銀行が善意無過失で、Cに対して貸し付けをしたのであれば、相殺は有効となります。

エ 債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

エ・・・妥当

●受取証書を偽造して弁済を受けた者= 「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に該当する

●上記の者に善意無過失で弁済した場合、その弁済は有効となる

受領権者以外の者であって、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有します(民法478条)。

判例 判例では、『「偽造された偽物の受取証書を持参する者」は、 民法478条の「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」にあたる』としています。つまり、債務者が、「偽造した受取証書を持参した債権者の被用者」に善意無過失で弁済をした場合、この弁済は有効となります。

オ 債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

オ・・・妥当

●債権の二重譲渡における、対抗要件で劣後する債権の譲受人=特段の事情があれば、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に該当する

●上記の者に善意無過失で弁済した場合、その弁済は有効となる

受領権者以外の者であって、「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有します(民法478条)。

具体例 Aが有する債権(債務者をXとする)を、BとCの二者に譲渡した。そして、Bが第三者に対する対抗要件を備えた場合、Cが「対抗要件で劣後する債権の譲受人」となります。この場合、債務者Xは、対抗要件を備えたBに弁済すべきですが、善意無過失でCに弁済してしまった。

質問内容 上記善意無過失で行ったCへの弁済は、有効か?

判例 判例では、「債権の二重譲渡における、対抗要件で劣後する債権の譲受人Cに対してした弁済についても、対抗要件を備えたBに対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情がある場合、民法478条の規定の適用がある」としているので、債務者Xが善意無過失で行ったCへの弁済は、有効となります。


平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 損失補償 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・社会
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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