取締役会設置会社であり、種類株式発行会社でない株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)が行う株式の併合・分割等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、定款に別段の定めはないものとする。
- 株式を併合するには、その都度、併合の割合および株式の併合がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
- 株式を分割するには、その都度、株式の分割により増加する株式の総数の分割前の発行済株式の総数に対する割合および当該株式の分割に係る基準日ならびに株式の分割がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
- 株式の無償割当てをするには、その都度、割り当てる株式の数およびその効力の生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
- 株式の分割によって定款所定の発行可能株式総数を超過することになる場合は、あらかじめ株主総会の決議により発行可能株式総数を変更するのでなければ、このような株式の分割をすることはできない。
- 株券発行会社が株式の併合または分割をしようとするときは、いずれの場合であっても、併合または分割の効力が生ずる日までに、当該会社に対し当該株式に係る株券を提出しなければならない旨の公告を行い、併合または分割した株式に係る株券を新たに発行しなければならない。
【解説】
●株式併合 → 特別決議株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の特別決議によって、下記事項を定めなければなりません(180条2項)。
【具体例】 10株を1株にしたり、2株を1株にすることが株式併合です。なぜ、特別決議が必要かというと、もし、10株を1株にした場合、9株保有している株主は株主としての地位を失ってしまい、9株をお金に変えるしかなくなります。つまり、既存株主にとって不利益が生じるからです。
株式分割 → 株主総会の普通決議 or 取締役会決議株式会社は、株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、下記事項を定めなければなりません(183条2項)。
本問は取締役会設置会社なので取締役会の決議で定めることができます。したがって、誤りです。
【理由】 株式分割の場合、株主としての地位を失うこともなく、また、議決権の割合も変化しません。つまり、既存株主は不利益を受けません。そのため、特別決議までは不要です。
■株式分割の際に定める内容(覚えなくてもよい)
- 株式の分割により増加する株式の総数の株式の分割前の発行済株式の総数に対する割合及び当該株式の分割に係る基準日
- 株式の分割がその効力を生ずる日
- 株式会社が種類株式発行会社である場合には、分割する株式の種類
「株式の分割により増加する株式の総数」の「株式の分割前の発行済株式の総数」に対する割合とは?(参考程度)
下記内容は覚えなくても大丈夫です!参考程度です!
例えば、100株を発行している会社が、1株を100株に分割する場合、株式分割後の発行済み株式総数は10,000株になります。
増加する株式数は9,900株ですので、「株式の分割により増加する株式の総数」は9,900です。
「株式の分割前の発行済株式の総数」は100株なので、100です。
よって、割合は9,900/100の99になります。
●株式無償割当て → 株主総会の普通決議 or 取締役会決議「株式無償割当て」とは、既存株主に対して、保有株式数に応じて、無償で新株の割当をすることを言います(185条)。例えば、1株あたり、0.5株を無償で交付するといった場合です。この場合、既存の株式1株を1.5株にする株式分割と実質的に同じです(違いは下表参照)。
株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、下記事項を定めなければなりません(186条1項)。
そして、下記事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければなりません(無償割当については、既存株主に不利益は生じないので、特別決議は不要です)。ただし、定款に別段の定めがある場合は、定款に従います(同条3項)。
本問は取締役会設置会社なので取締役会の決議で定めることができます。したがって、誤りです。
株式無償割当のポイント
- 異なる種類株式の割当もOK
- 自己株式には割当できない=自己株式は増えない
- 割り当てる株式は自己株式でもOK=自己株式を他の者に割り当てる
●株式分割による発行済株式総数増加の定款変更 → 例外的に、取締役会決議・取締役の決定で行える(株主総会決議は不要)
発行済株式総数は、発行可能株式総数を超えることはできません。そして、発行済株式総数を変更する場合、定款変更が必要なので、原則、株主総会の特別決議が必要です。しかし、株式分割の場合は、例外的に、「株主総会の決議による発行可能株式総数の変更」をしなくても、取締役会決議(非取締役会設置会社は、取締役の決定)で行えます。
そのため、本問の「株主総会の決議により発行可能株式総数を変更するのでなければ」という記述が誤りです。
【理由】 例えば、当初の発行可能株式総数300株で、発行済株式総数が50株だったとします。
そして、発行済株式について、1株を10株に株式分割をするとなると、発行済株式総数は500株に増えます。
しかし、この場合、取締役会決議・取締役の決定で当初の発行可能株式総数300株を10倍にすることは許されます。
これは、既存株主の株式の保有割合は、変わらないため、既存株主に不利益が生じないからです。
5.株券発行会社が株式の併合または分割をしようとするときは、いずれの場合であっても、併合または分割の効力が生ずる日までに、当該会社に対し当該株式に係る株券を提出しなければならない旨の公告を行い、併合または分割した株式に係る株券を新たに発行しなければならない。
●株式併合 → 株券発行会社の場合、株券発行は義務
株券発行会社が「株式の併合」をする場合には、当該行為の効力が生ずる日までに当該株券発行会社に対し株券を提出しなければならない旨を当該日の1か月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければなりません(219条1項2号)。
そして、株式の併合をしたときは、株券発行会社は、併合した株式に係る株券を発行しなければなりません(215条)
これは株式併合のルールであり、株式分割については、公告・通知のルールはありません。
よって、本肢は「株式分割」の部分が誤りです。
なぜ、株式分割と株式併合で、株券の提出のルールが異なるのか?
例えば10株券を持っていた場合、2株→1株への株式併合が行われると、現在持っている株券は5株券になるので、「実際の株数」と「株券に記載されている株数」が異なるので、困ります。
なので、一度提出してもらって、新しく株券を発行します。
例えば10株券を持っていた場合、1株→2株への株式分割が行われても、現在持っている株券は10株券なので、新たに10株を無償で発行すればよいです。会社が、追加で株主に株式を郵送すればよいので、株主に提出してもらう必要はないです。
平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 幸福追求権など | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 投票価値の平等 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 内閣 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政調査 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・社会 |
| 問20 | 損失補償 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・経済 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 一般知識・社会 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


