行政契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。見解が分かれる場合は、最高裁判所の判例による。
- 行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、その権利を制限するものについては、法律の留保の原則に関する侵害留保理論に立った場合、法律の根拠が必要であると解される。
- 地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。
- 地方公共団体がごみ焼却場を建設するために、建設会社と建築請負契約を結んだ場合、ごみ焼却場の操業によって重大な損害が生ずるおそれのある周辺住民は、当該契約の締結行為について、当該地方公共団体を被告として、抗告訴訟としての差止めの訴えを提起することができる。
- 地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させない判断をしたとしても、その判断は、裁量権の逸脱、濫用には当たらず、違法ではない。
- 地方公共団体が、産業廃棄物処理施設を操業する企業との間で、一定の期日をもって当該施設の操業を停止する旨の公害防止協定を結んだものの、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止しない場合において、当該地方公共団体が当該企業を被告として操業差止めを求める訴訟は、法律上の争訟に該当せず、不適法である。
【答え】:2【解説】
行政契約とは、行政主体が、「他の行政主体や私人(国民や法人等)」と対等な立場で締結する契約を言います。
「対等な立場で行う」というのがポイントで、行政行為のように、行政庁が上から公権力を行使するのとは違うということです。
よって、契約により、国民に義務を課したり、その権利を制限するものであっても、法律の根拠は不要です。
したがって、「法律の根拠が必要」は、誤りです。
判例によると、
「普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、
- 地方自治法施行令167条の2第1項の掲げる事由(随意契約ができる場合)のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や
- 契約の相手方において随意契約の方法によることが許されないことを知り又は知り得べかりし(知ることができた)場合など
当該契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、
私法上無効となる。」
と判示しています。
つまり、上記、1や2のような特段の事情があれば無効となるが
それ以外は、有効ということです。
本肢の内容は、上記1、2のような特段の事情に該当する旨の記載はないので
原則、有効です。
判例によると、
「本件ごみ焼却場は、東京都Yが先に私人から買収した都所有の土地の上に、私人との間に対等の立場に立って締結した私法上の契約により設置されたものである。
そのため、「行政庁の処分」にあたらないから、抗告訴訟はできない」
としています。よって、本肢の「抗告訴訟としての差止めの訴えを提起することができる。」は誤りです。抗告訴訟(行政訴訟)はできないですが、
民事訴訟は可能です。
判例によると、
「主たる営業所が村内にないなどの事情から形式的に村外業者に当たると判断し,そのことのみを理由として,他の条件いかんにかかわらず,村外業者を指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば,それは,考慮すべき事項を十分考慮することなく,一つの考慮要素にとどまる村外業者であることのみを重視している点において,極めて不合理であり,社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず,そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用があったと判断できる。」
としています。よって、「区域内の業者でない」ことのみを理由に指名入札に参加させないことは、裁量権の逸脱・濫用に当たり違法ということです。よって、本肢は誤りです。
Yは産業廃棄物処理業を営む事業者である。
Yは、福岡県X町において、産業廃棄物の最終処分場の建設・使用していたが、施設を拡張することにより、Xとの間で「公害防止協定」を締結した。
当該協定の中には、使用期限が設定されており、この使用期限を超えて当該最終処分場を利用してはならないとなっていた。
しかし、Yは前記条項を無視して、最終処分場を使用していた。
上記、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止しない場合、地方公共団体Xが当該企業Yを被告として操業差止めを求める訴訟を提起することはできるか?
判例(最判平21.7.10)によると、「処分業者(企業)が、公害防止協定において、地方自治体に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、企業自身の自由な判断で行えることであり(民法における契約自由の原則、私法上の契約)、その結果、知事の許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、契約自体、法律違反ではない。したがって、当該契約には法的拘束力があるから、一定期間を過ぎても、契約に違反して操業を停止しない場合、地方公共団体が当該企業を被告として操業差止めを求める訴訟を提起することは、可能です。よって「法律上の争訟に該当せず、不適法である」は誤りです。
「法律上の争訟に該当し、適法」が正しいです。
■ポイントは「知事」と「町」は別だということです!
分けて考えましょう!
【具体例】
「知事」は、処分業者Yに、令和10年12月末日までを有効期間として、産廃事業の許可を与えました。
そして、「X町」と処分業者Yとの間で、
「施設の使用期限の定め(例えば令和4年12月末日)及びその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない」旨を定めました。
令和10年12月末日までを有効期間としていたけど
それより前に産廃事業・産廃施設が廃止されるとしても、廃棄物処理法の趣旨には反しない。
よって、事業者Yは自ら結んだその協定に従う義務を負う(=令和4年12月末日以降、産廃事業を行ってはいけない・産廃施設を廃止しなければならない)ということです。
平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 内閣 | 問33 | 民法・債権 |
| 問4 | 内閣 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 財政 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 法の下の平等 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 社会権 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・社会 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
