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平成24年・2012|問32|無償契約

改正民法に対応済

無償契約に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。すべて選べ。

  1. 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって、その効カを失う。
  2. 贈与契約においては対価性を維持する必要がないため、特別の定めがなければ、目的物に瑕疵があったとしても、贈与者は、目的物が特定した時の状態で引き渡し、又は移転すれば足りる。 (改)
  3. 使用貸借においては、借用物の通常の必要費については借主の負担となるのに対し、有益費については貸主の負担となり、その償還の時期は使用貸借の終了時であり、貸主の請求により裁判所は相当の期限を許与することはできない。
  4. 委任が無償で行われた場合、受任者は委任事務を処理するにあたり、自己の事務に対するのと同一の注意をもってこれを処理すればよい。
  5. 寄託が無償で行われた場合、受寄者は他人の物を管理するにあたり、善良なる管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない。

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改正民法に対応済

【答え】:1と2

【解説】

1.定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって、その効カを失う。

1・・・妥当

●定期贈与 → 贈与者または受贈者の死亡により終了

定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失います(民法552条)。

具体例 定期贈与とは、一定期間において一定額の給付を目的とする贈与です。例えば、「年に一回100万円を贈与し、20年かけて2000万円をあげます」というような贈与契約で、贈与者または受贈者のどちらかが死亡した場合、効力を失い、その契約の効力は相続人には及びません。(=定期贈与契約は相続されない)

理由 定期贈与は、贈与者が「受贈者がこの人だから」一定期間、一定額を贈与しようと思って贈与している場合がほとんどです。つまり、この人(受贈者)だからこそ、定期贈与しているのであって、その相続人に贈与してあげようとは思っていません。 逆に、贈与者が死亡した場合、贈与者は好意で定期贈与していたわけで、一定期間という長い期間贈与しなければならない義務を相続人にまで押し付けるのは妥当ではないので、贈与者死亡によっても定期贈与は終了します。

2・・・妥当

●贈与者の引渡義務 → 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転をすればよい

贈与者の引渡義務 → 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転をすればよい

贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定します(民法551条)。つまり、贈与する物を特定した時に既に瑕疵があったとしても、原則、その瑕疵について責任は負わず、その物を受贈者に引渡せばよいです。

ただし、「瑕疵がないものを引渡す」などの特約があった場合は、契約不適合責任を追及される余地はあります。

3.使用貸借においては、借用物の通常の必要費については借主の負担となるのに対し、有益費については貸主の負担となり、その償還の時期は使用貸借の終了時であり、貸主の請求により裁判所は相当の期限を許与することはできない。

3・・・妥当でない

●使用貸借における必要費 → 借主負担

●使用貸借における有益費 → 貸主負担 → 貸主は償還期限を延ばすよう裁判所に請求できる

使用貸借の場合、「借用物の通常の必要費」は借主が負担します(595条1項)。

「通常の必要費」とは、現状維持のために必要な修繕費等です。

「通常の必要費」以外の費用(例えば有益費)については、貸主が負担するため、借主が支出した場合、貸主に償還請求することができます。そして、有益費については、裁判所は、貸主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができます(2項) 。つまり、貸主が、すぐに有益費を支払えない場合、裁判所に償還期限を少し待ってもらうよう請求することができます。

4.委任が無償で行われた場合、受任者は委任事務を処理するにあたり、自己の事務に対するのと同一の注意をもってこれを処理すればよい。

4・・・妥当ではない

委任契約 → 有償・無償関係なく、受任者は善管注意義務を負う

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。有償・無償は関係ありません。つまり、無償で委任事務を任されたとしても、委任事務を任された人は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理しなければなりません。

善管注意義務 / 自己のためにするのと同一の注意義務 / 自己の財産におけると同一の注意をなす義務

「善管注意義務」は、 「取引上、一般的・客観的に要求される程度の注意義務」を言い、イメージとしては、他人の物事と考えて、それなりの注意をしなさいということです。

一方、自己のためにすると同一の注意をなす義務 「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」は、自分の物事と考えて、相当の注意をしなさいということで、善管注意義務よりも軽い注意義務です。

5.寄託が無償で行われた場合、受寄者は他人の物を管理するにあたり、善良なる管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない。

5・・・妥当でない

●寄託 → 有償 : 預かる側(受寄者)は、「善管注意義務」を負う

●寄託 → 無償 : 受寄者は、「自己の財産におけると同一の注意」を負う

寄託とは 物を預かって、保管してもらうこと(契約)を言います。例えば、「銀行にお金を預けること」「友人に荷物を預けること」です。「預ける側を、寄託者(きたくしゃ)」、「預かる側を、受寄者(じゅきしゃ)」と言います。 

受寄者の義務 お金を払って預かってもらう場合(有償)、預かる側(受寄者)は、「善管注意義務」を負います(民法400条)。 無報酬の場合、受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負います(659条)。本問は無償(無報酬)なので、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管しなければなりません。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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