民法改正に伴い、選択肢ウは使えなくなりましたので、解説は省略します。
無効または取消しに関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはいくつあるか。
ア.BがAに騙されてAから金銭を借り入れ、CがBの保証人となった場合、CはAの詐欺を理由としてAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができる。
イ.BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、当該絵画を第三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り消すことはできない。
ウ.民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、省略。
エ.BがAに強迫されて絵画を購入した場合、Bが追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、追認があったものと推定される。
オ.未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、後に当該金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した金銭につき現存利益のみを返還すれば足りる。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
- 五つ
改正民法に対応済
【答え】:4
【解説】
ア・・・妥当ではない
●錯誤取消し → 勘違いをして意思表示をした者・その代理人が主張できる
●詐欺取消し → 詐欺を受けて意思表示した者・その代理人が主張できる
●強迫取消し → 強迫を受けて意思表示した者・その代理人が主張できる
錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、「①瑕疵ある意思表示をした者」又は「②その代理人若しくは承継人」に限り、取り消すことができます(民法120条)。つまり、本問の場合、 「瑕疵ある意思表示をした者」とは、「だまされて金銭を借り入れたB」を指すので、「B又はBの代理人等」は詐欺を理由にAB間の契約を取消すことができます。一方、保証人Cは上記①②に該当しないので、詐欺を理由にAB間の金銭消費貸借契約の取消しはできません。
イ・・・妥当ではない
●取消権者が、取消しができなくなる理由は、「①追認した場合」と「②法定追認の場合」
取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後から追認することができる
→ 取消権を有することを知る前の追認は、追認の効力は生じない
取消権者が、取消しができなくなる理由は、「①追認した場合」と「②法定追認の場合」の2つがあります。
【②法定追認とは】 法律で定める事由に該当した場合に、自動的に追認したものとみなされることを言います。
そして、追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について下記一定の事実があったときは、原則、追認をしたものとみなされます(民法125条本文)。
【②法定追認となる場合の一例】
1.全部又は一部の履行
2.履行の請求
3.担保の供与
4.取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 → 本問の「BがCに転売した事実」
【追認することができる時とは?】 取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後から追認することができます(124条1項)。
「取消しの原因となっていた状況が消滅し」とは、「詐欺行為が終わった後」を指し、
「取消権を有することを知った後」とは、詐欺があったことを知った後を指します。
つまり、詐欺にあっていることを知り、詐欺行為が終わった後から追認することができます。
■本問をみると「BはAの詐欺に気づく前に転売(法定追認)している」ため、「取消権を有することを知る前」です。そのため、追認の効果は生じません。よって、BはAとの売買契約を取り消すことができます。
エ・・・妥当ではない
●①「追認をすることができる時から5年間」行使しないとき、または② 「行為の時から20年を経過」したとき
→ 取消権は消滅する
取消権は、「追認をすることができる時から5年間」行使しないときは、時効によって消滅し、また「行為の時から20年を経過」したときも、同様に消滅します。つまり、強迫により取消しについて、追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、Bの取消権は消滅してしまいます。「追認があったものと推定される」わけではありません。
オ・・・妥当
●制限行為能力の行為 : 取消しされると初めから無効となる → 現存利益のみ返還すればよい
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなします(民法121条)。そして、その行為の時に「意思無能力者」や「制限行為能力者」であった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負います(121条の2の3項)。
【本問】 「未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れた」行為は取消しできる行為です。
そして、取消しをした場合、上記行為は未成年者(制限行為能力者)が行った行為なので、受領した金銭につき現存利益のみを返還すればよいです。
【関連ポイント】 「制限行為能力者や意思無能力者以外の者」が行った契約について、契約が取消しされ、契約が無効となった場合、原則、契約当事者は原状回復義務を負います。
※ 「制限行為能力者や意思無能力者」の場合は、本問のように現存利益だけ返還すればよいという風に一定の保護をしています。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 新しい人権 | 問33 | 民法・債権 |
| 問4 | 参政権 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 法改正により削除 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・経済 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・情報通信 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


