https://jukosya.gyosyo.info/?p=3379

平成23年・2011|問28|民法・時効

民法改正に伴い、選択肢3と4が使えなくなりましたので、その解説は省略します。

時効等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. A所有の甲土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合、取得時効の成立を否定するためには、Aの側において、他主占有事情の立証では足りず、Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証しなければならない。
  2. A所有の乙土地につき、Bが5年間占有した後にCがこれを相続して、さらに10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても時効取得は認められない。
  3. 民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、省略
  4. 民法改正に伴い、問題が使えなくなりましたので、省略
  5. 乙建物について先順位抵当権者Aの被担保債権につき消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により後順位抵当権者Bは順位上昇の利益を享受することができるため、Bもその時効を援用することができる。

>解答と解説はこちら

改正民法に対応済
【答え】:改正民法による妥当な選択肢なし

【解説】

1.A所有の甲土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合、取得時効の成立を否定するためには、Aの側において、他主占有事情の立証では足りず、Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証しなければならない。

1・・・妥当ではない

●「①他主占有権限に基づいて開始された旨」または「②他主占有事情の立証」(どちらか一方)を立証すれば、取得時効の成立を否定できる
●立証責任は「取得時効を否定する側」にある

20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得します(民法162条)。つまり、時効取得するためには「①所有の意思を持って」占有することが要件です。

【自主占有と他主占有】

「自主占有」の場合、所有の意思をもって占有しているので、上記①の要件を満たします。一方、「他主占有」の場合、上記①の要件を満たさないので、時効が成立しないことになります。

つまり、「他主占有」の事実が証明されれば、

取得時効の成立が否定されます。

【判例】

「①占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明される」か、又は「②占有者が占有中、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されるとき」は、「所有の意思」が否定され、取得時効の成立が否定されるとしています。

そして、上記立証責任は「取得時効を否定する側」つまり、本問のA側です。

【判例理解】

①または②のどちらか一方が証明されれば、 「所有の意思」が否定され、取得時効の成立が否定されます。

①「他主占有権原に基づいて開始された旨の立証」については、
「他主占有」により占有を取得した事実が証明された場合です。

例えば、賃貸借契約に基づいて占有を取得したことを証明した場合です。

②「他主占有事情の立証」については、
占有者が、占有中に客観的にみて、「真の所有者であれば通常はとらない態度を示したり」または「所有者であれば当然とるべき行動をとらなかった」事情が証明された場合(「他主占有事情」という)です。

例えば、占有者が、賃貸借契約をしていないにも関わらず、所有者に賃料を支払っていた場合です。この場合、占有者は、自主占有しているとはいえず、客観的にみて他主占有しているように見えます。

【本問の質問内容】

取得時効の成立を否定するためには、 Aが、「②他主占有事情の立証」+「①Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証」をしなければならない。 〇か×かです。

1.取得時効の成立を否定するために、①と②の両方をAが立証する必要がある場合は〇

2.取得時効の成立を否定するために、 ①と②のどちらか一方だけ、Aが立証すればよい場合は×です。

本問は2の方にあたるので、×です。

2.A所有の乙土地につき、Bが5年間占有した後にCがこれを相続して、さらに10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても時効取得は認められない。

2・・・妥当ではない

●占有を承継するか否かは、現在の占有者が選択することができる

●占有を承継する場合、前占有者の善意・悪意、過失の有無も承継する(もちろん占有期間も承継する)

【問題文の状況】 「前占有者Bは5年間占有(占有開始時にBは善意無過失)」し、その後、Bが死亡し、Cが相続したことにより、Cが占有を開始する(占有開始時にCは悪意)。そして「現占有者Cが10年間占有」した状況です。

前占有者B:善意無過失で5年間占有

現占有者C:悪意で10年間占有

【質問内容】 Cが、「Bの占有と併合(承継)」して取得時効を援用した場合、Bの時効取得は認められない。〇か×か。

【考え方】 占有者の承継人Cは、その選択に従い、「①自己Cの占有のみを主張」することもできるし、又は「②自己占有前の占有者Bの占有を併せて主張」することができます(民法187条1項)。そして、②の場合、前占有者Cの善意・悪意、過失の有無も承継します(2項、判例)。そのため、②で考えた場合、占有開始時の状態は「善意無過失」、占有期間は5年+10年=15年です。つまり、善意無過失で15年(10年以上)占有しているので、Cの取得時効は認められます。

5.乙建物について先順位抵当権者Aの被担保債権につき消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により後順位抵当権者Bは順位上昇の利益を享受することができるため、Bもその時効を援用することができる。

5・・・妥当ではない

●後順位抵当権者は、先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用できない

【具体例】 Aが債務者Xに対して1000万円を貸し、乙建物に1番抵当権者をAとして抵当権を設定してもらった。

その後、Bが債務者Xに対して、500万円を貸し、乙建物に2番抵当権者をBとして抵当権を設定してもらった。

その後、Aの1000万円の貸金債権(被担保債権)について消滅時効が完成した。

この場合、2番抵当権者B(後順位抵当権者)は時効を援用できるか?

【判例】 判例では、「後順位抵当権者Bは、先順位抵当権Aの被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するものではないため、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない」としています。つまり、Bは時効を援用することができないので誤りです。

【理由】 被担保債権の消滅により消滅時効を援用できるのは、直接利益を受ける者に限られます。そして、先順位抵当権者Aの1000万円の貸金債権(被担保債権)が時効によって消滅し、その結果として、後順位抵当権者Bの順位が上がり(Bが2番抵当権者から1番抵当権者に上がり)、配当額が増加するという利益はあるが、この利益は、直接的な利益ではなく、抵当権の順位上昇によってもたらされる反射的(間接的)な利益にすぎないから、後順位抵当権者は消滅時効を援用できないとしています。


平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 新しい人権 問33 民法・債権
問4 参政権 問34 民法:債権
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 法改正により削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。