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平成22年・2010|問27|民法・制限行為能力者

改正民法に対応済

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。
  2. Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。
  3. この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。
  4. Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。
  5. Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。

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改正民法に対応済【答え】:4【解説】

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

1.Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。

1・・・誤り

●成年被後見人 → 後見開始の審判を受けた者

成年被後見人は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」で、家庭裁判所が、「後見開始の審判」をした者をいいます(民法7条)。

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるからといって、当然に成年被後見人とはならないので、妥当ではありません。

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

2.Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。

2・・・誤り

●被保佐人 → 原則:単独で法律行為を行える

●例外:重要な財産上の行為については、保佐人の同意が必要 → 同意がなければ取消しできる

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」である者で、家庭裁判所が保佐開始の審判をしたものです(民法11条)。そして、被保佐人は、原則、単独有効に契約することができます。ただし、「一定の重要な財産上の行為」については、保佐人の同意を得なければ行うことができません(13条)。(下表参照)

本問 「動産を譲渡する行為」といっても、下記例外に該当しない場合もあります。例えば、友人に「テーブル」を売却したとしても、それは重要な財産上の行為に該当しないので、保佐人の同意なく、売却できます。この場合、制限行為能力者を理由にあとで取り消すことはできないので、誤りです。

被保佐人の法律行為

 

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

3.この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。

3・・・誤り

●第三者詐欺 → 相手方が「善意無過失」の場合、相手方が保護される=相手方が善意無過失の場合、詐欺を受けた本人は取消しできない

問題文の状況は図の通りです。

①第三者(鑑定人)がAをだまして、

②AがBに安い価格で骨董品を売却した。

質問内容

Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、

Aは当該意思表示を取り消すことができない。〇か×か。

解説 

第三者から詐欺を受けて売却した場合、詐欺の事実を相手方Bが過失なく知らなかった時(相手方が善意無過失の場合)、相手方Bを保護し、Aは、AB間の契約を取消すことができません(民法96条2項)。

一方、相手方Bが、詐欺の事実を知っていたり(悪意)、知らなくても過失がある場合(有過失)、詐欺を受けたAを保護し、Aは、AB間の契約を取消すことができます。よって、Bが詐欺の事実を知っている場合、Aは意思表示を取り消すことができるので、本問は誤りです。

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

4.Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。

4・・・正しい

●心裡留保(冗談)について相手方が「善意無過失」の場合、契約は有効となる(原則)

●心裡留保(冗談)について相手方が「悪意」もしくは「過失があれば契約は無効となる

「本問」は、『贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した』となっているので、この贈与は「真意ではない」ことが分かります。「真意ではない」とは「心裡留保(冗談)」ということです。

心裡留保の場合、原則、契約は有効となります。例外として、相手方Bが「悪意」もしくは「過失があれば」、契約は無効となります。よって、本問は、原則有効なので、正しいです。

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした。

5.Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。

5・・・誤り

●「虚偽表示による第三者」は、善意であれば保護される(所有権を主張できる)

まず、問題文の「Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡した」というのは、仮装譲渡をしたということなので、虚偽表示の問題と判断できます。そして、第三者Cは善意(仮装譲渡であることを知らず)・有過失の状況です。

【質問内容】  Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。〇か×か。

【解説】 虚偽表示では、本人Aは、善意第三者Cに対抗できません(不動産を返せ!と言えない)(民法94条2項)。

つまり、本人Aは「善意のC」に無効主張できません。よって、本問は、誤りです。

ちなみに、無効主張できないということは、Aは、Cに対して、所有者であることを主張できません(=AはCから不動産を取り戻せない)ということです。


平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基本的人権 問33 民法・債権
問4 法の下の平等 問34 民法:親族
問5 精神的自由 問35 民法:親族
問6 財政 問36 会社法
問7 国会 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 法改正により削除
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟法
問13 行政手続法 問43 行政事件訴訟法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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