改正民法に対応済
保証に関する1~5の「相談」のうち、民法の規定および判例に照らし、「可能です」と回答しうるものはどれか。
- 私は、AがBとの間に締結した土地の売買契約につき、売主であるAの土地引渡等の債務につき保証人となりましたが、このたびBがAの債務不履行を理由として売買契約を解除しました。Bは、私に対して、Aが受領した代金の返還について保証債務を履行せよと主張しています。私が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。
- 私は、AがBから金銭の貸付を受けるにあたり、Aに頼まれて物上保証人となることにし、Bのために私の所有する不動産に抵当権を設定しました。このたびAの債務の期限が到来しましたが、最近資金繰りに窮しているAには債務を履行する様子がみられず、抵当権が実行されるのはほぼ確実です。私はAに資力があるうちにあらかじめ求償権を行使しておきたいのですが、これは可能でしょうか。
- 私の経営する会社甲は、AがBと新たに取引関係を結ぶにあたり、取引開始時から3ヵ月間の取引に関してAがBに対して負う一切の債務を保証することとし、契約書を作成しましたが、特に極度額を定めていませんでした。このたび、この期間内のA・B間の取引によって、私が想定していた以上の債務をAが負うことになり、Bが甲に対して保証債務の履行を求めてきました。甲が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。
- 私は、AがB所有のアパートを賃借するにあたりAの保証人となりました。このたびA・B間の契約がAの賃料不払いを理由として解除されたところ、Bは、Aの滞納した賃料だけでなく、Aが立ち退くまでの間に生じた損害の賠償についても保証債務の履行をせよと主張しています。私は保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。
- 私は、AがBから400万円の貸付を受けるにあたり、Aから依頼されてCと共に保証人となりましたが、その際、私およびCは、Aの債務の全額について責任を負うものとする特約を結びました。このたび、私はBから保証債務の履行を求められて400万円全額を弁済しましたが、私は、Cに対して200万円の求償を請求することが可能でしょうか。
改正民法に対応済
【答え】:5
【解説】
1・・・「可能です」と回答できない
●保証人は、契約解除に伴う原状回復義務についても保証しなければならない
判例では、「保証人は、債務不履行により売主が買主に対し負担する損害賠償義務についてはもちろん、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても保証の責任がある」としています。
つまり、売主Aが代金受領後、解除によって、代金返還義務が発生した場合、売主Aの保証人(私)も、代金返還義務を負います。
つまり、保証人(私)は、買主Bからの代金返還請求を拒むことはできません。
2・・・「可能です」と回答できない
●物上保証人は事前求償できない
【事前求償とは】 通常、保証人は、債権者に弁済した後に、弁済した額を主たる債務者に求償します。しかし、主たる債務者が破産してしまった場合など、弁済した後に求償をしようとしても、主たる債務者が弁済できないことも考えられます。このような場合に、弁済前に求償できる「事前求償」という制度があります。
【判例】 そして、判例では、「物上保証人は事前求償できない」としています。
【理由】 物上保証人は、債務者ではなく、競売手続きが終わって、はじめて物上保証人が弁済した額が決定します。そのため、競売が終わるまで、求償できる額が分からないから、「物上保証人は事前求償できない」としています。
3・・・「可能です」と回答できない
●個人根保証 → 極度額を定めない場合、無効となる
●法人が根保証人の場合、極度額を定めなくても有効
【根保証とは】 根保証とは、一定の取引関係から生ずる現在および将来の一切の債務を保証することを指します。そして、本問の「会社甲は、AがBと新たに取引関係を結ぶにあたり、取引開始時から3ヵ月間の取引に関してAがBに対して負う一切の債務を保証する」と書いてあるので。会社甲は、根保証人であることが分かります。
そして、「個人」が根保証人となる場合、「極度額」を定めなければ、根保証の効力は生じません(民法465条の2の2項)。
一方、「法人」が根保証人となる場合、「極度額」を定めなくても有効となります。そのため、「会社甲(法人)」は債権者Bに対して保証債務の履行を拒むことはできません。
4・・・「可能です」と回答できない
●保証債務 → 主たる債務だけでなく、利息、違約金、損害賠償債務も負う
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを含みます(民法447条)。
よって、賃料不払いを理由に契約解除となった場合、保証人は、滞納した賃料だけなく、 賃借人Aが立ち退くまでの間に生じた損害の賠償についても保証しなければなりません。よって、保証人(私)は、滞納家賃と損害賠償の請求を拒むことはできません。
5・・・「可能です」と回答できる
●保証人 → 自己の負担部分を超える弁済をすれば、自己の負担部分を超える部分について他の保証人に求償できる
本問では、「私」と「C」が保証人にとなり、それぞれが債務の全額400万円を保証する契約となっています。そして、保証人は、自己の負担部分(200万円)を超える弁済をすれば、自己の負担部分を超える部分について他の保証人に求償できます。つまり、「私」が400万円を弁済したのであれば、「私」は、200万円をCに求償できます。よって、「可能といえます」。
※ もし、「私」が300万円を弁済したのであれば、「私」は、300万円のうち、負担部分200万円を超える部分=100万円をCに求償できます。
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 基本的人権 | 問33 | 民法・債権 |
| 問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:親族 |
| 問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 財政 | 問36 | 会社法 |
| 問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 法改正により削除 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政事件訴訟法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・社会 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・経済 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・情報通信 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
