取締役の法令違反行為につき、株主が行使しうる権利に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 監査役または監査委員が設置されている株式会社の株主は、取締役の任務懈怠を理由とする責任追及を行うために、当該会社に対して、営業時間内であれば、いつでも取締役会議事録の閲覧および謄写を請求することができる。
- 監査役または監査委員が設置されている株式会社の株主であって一定の数の株式保有する株主は、当該会社の業務の執行に関し、法令に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときには、当該会社の業務および財産の状況を調査させるために、検査役の選任を監査役または監査委員に請求することができる。
- 監査役および監査委員が設置されていない株式会社の株主は、取締役の法令違反行為によって、当該会社に著しい損害が生じるおそれがあるときには、当該取締役に対して当該行為をやめることを請求することができる。
- 監査役および監査委員が設置されていない株式会社の株主は、取締役の行為に法令に違反する重大な事実があるときには、当該会社を代表して、直ちに責任追及の訴えを提起することができる。
- 監査役および監査委員が設置されていない株式会社の株主であって一定の数の株式を保有する株主は、取締役が法令違反行為を継続して行っているときには、直ちに当該取締役を解任する訴えを提起することができる。
【答え】:3
【解説】
- 取締役会議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
- 取締役会議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
【理由】
株主総会議事録については、基本的に誰でも見れる情報です。一方、取締役議事録については、会社内の機密情報が含まれます(例えば、M&Aの情報等)。
そして、「監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会設置会社」については、監査機関があるので、それなりの規模の会社と言えます。そのため、会社の機密情報を外部に出る場合、損害も大きくなります。そのため裁判所の許可を必要としている。
株式会社の業務の執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、次に掲げる株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができます(会社法358条1項)。
- 総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主
- 発行済株式(自己株式を除く。)の100分の3以上の数の株式を有する株主
本肢は「監査役または監査委員」が誤りで、正しくは「裁判所」です。
■監査役および監査委員が設置されていない株式会社の株主はは、取締役が「①株式会社の目的の範囲外の行為」その他
「②法令若しくは定款に違反する行為」をし、又は「これらの行為をするおそれがある」場合において、当該行為によって当該
株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(360条1項、2項)。よって、本問は正しいです。
■一方、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、「回復することができない損害」が生じる恐れがある場合に、差止め請求ができます。
この差止請求は、裁判外でも行えるが、株主は、取締役・執行役を被告として差止めの訴えを提起することもできます。
取締役が任務懈怠責任等を負う場合、株主は、株式会社に対し、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等若しくは清算人の責任追及等の訴えの提起を請求することができます(公開会社の場合、6ヶ月前から引き続き株式を保有している株主に限る)(会社法847条1項2項)。
これは、あくまでも会社に対して「会社が、取締役を相手に、訴訟を起こしてください!」と請求するだけです。
もし、この請求(提訴請求)の日から60日以内に会社が責任追及等の訴えを提起しない場合、提訴請
求をした株主は、会社のために責任追及等の訴えを提起することができます(847条3項:株主代表訴訟)。
本問は「当該会社を代表して、直ちに責任追及の訴えを提起することができる」が誤りで、正しくは「株式会社に対して、責任追及の訴えの提起を請求することができる」です。
つまり、株主が、いきなり訴えを提起できるのではなく、まず、会社に対して、訴えるように請求する、ということです。
役員の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき等は、一定の株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができます(会社法854条1項2項)。本肢は「直ちに」が誤りで、「当該株主総会の日から30日以内」が正しいです。
平成22年度(2010年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 基本的人権 | 問33 | 民法・債権 |
| 問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:親族 |
| 問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 財政 | 問36 | 会社法 |
| 問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 法改正により削除 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政事件訴訟法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 一般知識・社会 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 一般知識・経済 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・社会 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・情報通信 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |

