行政事件訴訟法が定める執行停止に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 執行停止の決定は、裁判所が疎明に基づいて行うが、口頭弁論を経て行わなければならない。
- 執行停止の決定は、取消訴訟の提起があった場合においては、裁判所が職権で行うことができる。
- 執行停止の決定は、償うことができない損害を避けるための緊急の必要がある場合でなければ、することができない。
- 執行停止の決定は、本案について理由があるとみえる場合でなければ、することができない。
- 執行停止による処分の効力の停止は、処分の執行または手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
【答え】:5
【解説】
2・・・誤り
処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
つまり、執行停止の決定は、裁判所が職権で行うことはできず、「申立て」が必要です。
よって、本肢は誤りです!
処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができます。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができません(行政事件訴訟法25条2項)。つまり、執行停止の決定ができないのは、「償うことができない損害を避けるための緊急の必要があるとき」ではなく、「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」です。
4・・・誤り
①公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は②本案について理由がないとみえるときは、執行停止はできません(行政事件訴訟法25条4項)。
②の「理由がないとみえるときは、執行停止できない」と「理由があるときに執行停止できる」は同じではありません。
「理由がないとみえるときは、執行停止できない」とは、「理由がある場合に執行停止できる」+「理由があるかどうか判断がつかない場合にも、執行停止はできる」となります。
したがって、本肢は誤りとなります。
【具体例】
Aが課税処分された場合において、それはおかしいと思って、処分の取消しの訴えを提起した。ここで、「執行」とは、例えば、Aの財産を差し押さえたりすることです。この「Aの財産の差押えをしない決定」が「執行停止の決定」です。
そして、「執行すること(Aの財産を差し押さえること)で①公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき(これはほどんど考えられない)」、又は「②本案について理由がないとみえるとき(Aの処分取消しの訴えが認めれないとき=Aの敗訴のとき)」は、執行停止はできず、Aの財産は差し押さえられる、ということです。
処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができます。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができません(行政事件訴訟法25条2項)。よって、本肢は正しいです。
Aが違法建築物を建築し、B市長が、建物の除去命令をした場合、「処分の効力」「処分の執行」「手続きの続行」
とは下記内容です。
1. 処分の効力=除去命令自体
2. 処分の執行=代執行により建物を強制的に除去すること
3. 手続きの続行=上記代執行の手続きのこと
2や3は、「1の処分の効力」があることを前提に行います。
そのため、「1の処分の効力」を停止させると、自動的に2、3も停止します。
一方、「2の処分の執行」を停止させる場合、2のみを停止させて、「1の処分の効力」は停止しません。
そのため、「2の処分の執行」の停止で目的達成ができる場合は、あえて、「1の処分の効力」を停止させる必要はないので、そのような場合は、「1の処分の効力」の停止はできないということです。
| 問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:物権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 憲法・議員 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 法の下の平等 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 選挙権・選挙制度 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 教科書検定制度 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法・その他 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 一般知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 一般知識・政治 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 一般知識・政治 |
| 問20 | 問題非掲載のため省略 | 問50 | 一般知識・経済 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 一般知識・経済 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 一般知識・政治 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 一般知識・経済 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 一般知識・情報通信 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 一般知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 一般知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 一般知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
