令和2年・2020|問19|行政事件訴訟法

行政事件訴訟法が定める義務付け訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 申請拒否処分がなされた場合における申請型義務付け訴訟は、拒否処分の取消訴訟と併合提起しなければならないが、その無効確認訴訟と併合提起することはできない。
  2. 行政庁が義務付け判決に従った処分をしない場合には、裁判所は、行政庁に代わって当該処分を行うことができる。
  3. 義務付け判決には、取消判決の拘束力の規定は準用されているが、第三者効の規定は準用されていない。
  4. 処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある場合には、当該処分につき義務付け訴訟を提起しなくとも、仮の義務付けのみを単独で申し立てることができる。
  5. 義務付け訴訟は、行政庁の判断を待たず裁判所が一定の処分を義務付けるものであるから、申請型、非申請型のいずれの訴訟も、「重大な損害を生じるおそれ」がある場合のみ提起できる。

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【答え】:3

【解説】

1.申請拒否処分がなされた場合における申請型義務付け訴訟は、拒否処分の取消訴訟と併合提起しなければならないが、その無効確認訴訟と併合提起することはできない。

1・・・誤り

申請拒否処分がなされた場合における申請型義務付け訴訟は、「拒否処分の取消訴訟」や「無効確認訴訟」と併合提起しなければなりません(行政事件訴訟法37条の3第3項2号)。

よって、「無効確認訴訟と併合提起することはできる」ので誤りです。

【申請型義務付訴訟で、取消訴訟や無効確認訴訟を併合提起しなければならない理由】

「裁判所が、義務付けを命ずる判決をする」とは、裁判所から行政へ、一方的に「●●をしなさい!」命令を行っています!

これは権力分立の関係から見るとあまり望ましくありません。

そこで、申請の前提となる処分(不作為も含む)について、「その処分は間違えているから取消しなさい!無効です!」と判断を下したあとに、「●●をしなさい!」命令をすることで、裁判所の上記義務付けの行為に正当性を持たせています。

そのため、申請型義務付訴訟については、で、取消訴訟や無効確認訴訟の併合提起を必要としています。

2.行政庁が義務付け判決に従った処分をしない場合には、裁判所は、行政庁に代わって当該処分を行うことができる。

2・・・誤り

本肢のような規定はありません。よって、裁判所は、行政庁の代わりに処分を行うことはできないので、誤りです。

3.義務付け判決には、取消判決の拘束力の規定は準用されているが、第三者効の規定は準用されていない。

3・・・正しい

義務付け判決については、拘束力の規定(33条)は準用されますが、第三者効の規定(32条)は準用されていません。

よって、正しいです。

【形成力と第三者効の具体例】

A建設会社がマンション建設のために、甲県の建築主事から建築確認を受け、その後、近隣住民が当該建築確認処分は違法だとして、甲県に対して処分の取り消しの訴えを提起した。

審理の結果、建築確認が違法として取消判決を受けた場合、初めから建築確認はなかったことになります(建築確認は初めから無効)。

そして、この形成力には第三者にも及びます。上記取消訴訟については、原告が近隣住民、被告が甲県ですが、第三者であるA建設会社にも取消判決の効力が及ぶため、A建設会社はマンション建設ができなくなります。これを「第三者効」と言います。

【義務付け訴訟に第三者効が準用されない理由】

非申請型の義務付け訴訟の場合、義務付けをする相手方のみに「~をしなさい!」という効力が生じれば、目的を達成できます。

また、申請型義務付け訴訟の場合(拒否処分を受けた場合)、取消訴訟等と併せて義務付け訴訟を提起します。この場合、取消訴訟で第三者効があるため、義務付け訴訟で第三者効を準用する意味がないです。

そのため、義務付け訴訟に第三者効が準用されません。

4.処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある場合には、当該処分につき義務付け訴訟を提起しなくとも、仮の義務付けのみを単独で申し立てることができる。

4・・・誤り

仮の義務付けのみを単独で申立てることはできないです。よって、誤りです。

仮の義務付けを申し立てるためには、事前に「義務付け訴訟」の提起が必要です(行政事件訴訟法37条の5第1項)。

5.義務付け訴訟は、行政庁の判断を待たず裁判所が一定の処分を義務付けるものであるから、申請型、非申請型のいずれの訴訟も、「重大な損害を生じるおそれ」がある場合のみ提起できる。

5・・・誤り

義務付け訴訟は、申請型、非申請型の2つがあり、申請型の義務付け訴訟については「重大な損害を生じるおそれ」については要件ではありません。

非申請型の場合のみ「重大な損害を生じるおそれ」が要件となっています。

よって、誤りです。

【非申請型義務付訴訟についてのみ「重大な損害を生じるおそれがある場合」の要件がついている理由】

この非申請型については、申請権がない者でも行えるため、どんな場合も義務付け訴訟ができるとなると行政の事務が多くなり困ります。

そのため、要件を厳しくするために「重大な損害を生じるおそれがある場合」に限りできるようにしています。


問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 基礎法学 問33 民法:債権
問4 憲法 問34 民法:債権
問5 憲法 問35 民法:親族
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・経済
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・経済
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・社会
問25 情報公開法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政法 問56 一般知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:物権 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略